表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
覇道の果てに、王座は泣いた  作者: 望蒼
序章 ──群雲の時代
56/66

第五十六話 白嶺と覇王、盟を問う 第一節

──第一節:水を割る影


燕水の渡し──


かつては商人と旅人の行き交う交易の地。

今はその河岸に、静かな緊張が漂っていた。


雲居悠仁は、そよぐ水辺の風に目を細めた。

平穏に見える流れの向こうから、やがて黒い影が迫る。


「……来たな」


遠くの川面に、小さな波紋。


次第に大きな水飛沫となり、それが船団であると誰の目にも明らかになった時、兵たちの間にざわめきが走った。


黒と白を基調にした帆が、風をはらんで音を鳴らす。

それはあたかも、海を切り裂くような鋭さと、美しさと、威圧。


「白嶺の水軍だ……!本当に、河をさかのぼって来やがった」


ひとりの兵が呟く。

その声に混じるのは畏れ、あるいは感嘆か。


「……威圧が目的だな」


雲居は小さく呟いた。

その横で、沙耶が無言のまま頷いている。

やがて先頭の船が桟橋に横付けされた。


静かに、だが堂々と降り立ったのは、白き軍装に身を包んだ一人の女──

日焼けした肌に、風に踊る漆黒の長髪。


背筋を伸ばし、真っ直ぐにこちらへ歩くその姿は、ただの将ではないと誰もが悟った。


「白嶺……」


沙耶が思わず口にする。


視線の先にいるのは、海を統べる女提督──白嶺その人であった。


彼女の後ろに控えるのは、あの弟・篝。

今日の会談の影の仕掛け人とも呼べる存在だ。


斎はすでに、会談の設けられた臨時の天幕へと入っていた。

白嶺も言葉を交わすことなく、視線ひとつで弟に指示を送り、まっすぐ天幕へと足を運ぶ。


「──さあ、始まるぞ」


雲居の呟きに、沙耶はわずかに震える手を握りしめた。

彼女の目は、斎が座す天幕の奥、その深奥を見据えていた。


(斎様……あなたは今、どこまで進もうとしているの……?)

◆――お読みいただき、ありがとうございます。


登場人物たちの言葉や生き様に、少しでも感じるものがあれば嬉しいです。

ご感想・ご意見など、お気軽にお寄せください。


次回も、どうぞよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ