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覇道の果てに、王座は泣いた  作者: 望蒼
序章 ──群雲の時代
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第二十五話 対峙と策謀

──幕舎の奥、わずかに火の灯る空間。


「随分と親密な様子でしたね」


真柴沙耶(ましばさや)が、半ば冗談のような声音で斎を見やる。

だがその目は、冗談だけではない。


斎は、静かに湯を口に運んだ。


「……何を言いたい」


「いえ。ただ“葛城斎(かつらぎいつき)”という男が、意外と人たらしなのかもしれないと思って」


「……違う。私は私の意志で話したまでだ」


斎がそう言うと、幕の外からもう一人が入ってくる。

雲居悠仁である。


「沙耶殿、白嶺殿の件で何か?」


「少し、姉として話をしに行こうかと」


その言葉に、雲居が小さく眉をひそめる。


「……気をつけてください。あの方は、なかなか一筋縄ではいきません」


「そうね。でも、ああいう“魔性の女”って、案外わかりやすいものよ」


沙耶は笑って幕を出ていった。

雲居は苦笑し、斎の方へ視線を移した。


「……何か、あったのですか?」


「いや」


斎は茶を啜っただけだった。


──方そのころ、白嶺の私室。

火鉢に手をかざしながら、白嶺は湯を啜っていた。


「沙耶殿、ですか……。やはり、警戒されているようですね」


篝かがりが溜息交じりに言う。


「当然だろう? あの子からすれば、弟をたぶらかす女に見えただろうさ」


「斎殿は“弟”ではないでしょう」


「うーん……でも、年下で、真面目で、冷たいふりして繊細……可愛いじゃない?」


白嶺の笑みに、篝は頭を抱えた。


「姉上……我が白嶺海国の名誉のため、発言を慎んでください……」


「冗談よ。──でも、私はあの男の“器”が見たい。信じるだけの価値があるかどうか」


その目に宿る光は、戯れではなく、真剣なものだった。

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