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覇道の果てに、王座は泣いた  作者: 望蒼
序章 ──群雲の時代
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第二十三話 共闘の刃、神を斬る

神代院本殿──

その巨大な石造りの門が、激しい震動と共に崩れ落ちた。


「突入! 神託の間を制圧せよ!」


葛城軍の前衛が、霧を割って突進する。

同時に、白嶺軍の陸戦部隊が山側から斜めに食い込むように進撃していた。


「連携、完璧……ね。斎、なかなかやるじゃない」


白嶺(しらね)は戦場の背後に立ち、砲声と剣戟の響きを聞きながらつぶやいた。

その隣で、(かがり)が頷く。


「葛城軍、第三陣が回り込みに成功しました。教主の本殿は目前です」


「それじゃあ、決着を見届けに行くとしましょうか」



一方、神殿内部。

葛城斎は、剣を抜くことなく、ただ一枚の書簡を掲げていた。


「神託も、祈りも、もはやこの戦では剣より軽い。──投降せよ」


対するは、神代院の副司祭。

血の滲む法衣を纏い、震える手で剣を構えていたが、斎の言葉を聞いた瞬間、力なく膝をついた。


「……神は、我らを……見捨てたのか……」


「いや。神が見るならば、“民の血”ではなく、“未来の秩序”を見るだろう」


その言葉に副司祭が涙を流したとき、神代院は、静かに、そして完全に陥落した。



戦のあと。山の風が霧を払い、空には月が浮かぶ。

白嶺は、崩れた石段に腰掛け、葛城斎の姿を見つけた。


「お疲れさま、葛城の殿。見事だったわ」


「……貴女も」


短く返す斎。白嶺はその横顔を眺め、ふっと笑った。


「ねえ、私たち、意外といい戦友になれるんじゃないかしら」


「利があれば、味方に。害があれば、敵に。──それが覇道だ」


「でも、ちょっとだけ期待してた。あなたなら、ただの覇者じゃない気がするのよ」


そう言って白嶺は立ち上がり、背を向ける。

その風に乗って、濡れ羽の髪が舞った。


「また会いましょう、葛城斎。戦場か、あるいは……玉座の前で」


その姿を見送りながら、斎は声も表情もなく、ただその場に立ち尽くしていた。

◆――お読みいただき、ありがとうございます。


登場人物たちの言葉や生き様に、少しでも感じるものがあれば嬉しいです。

ご感想・ご意見など、お気軽にお寄せください。


次回も、どうぞよろしくお願いします。

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