第2話「生まれ変わった世界」
もしやり直せるとしたら、あなたは何を変えますか?
これは、“すべてを失った少年”がもう一度人生をやり直し、何かを守ろうとする物語。
第2話では、彼が目を覚ました先の世界と、そこで出会った“本物の愛”を描いています。
けれど、幸せは長くは続きません。
それでも、彼がこの世界で何を選び、どう生きるか。その始まりを、ぜひ見届けてください。
目を覚ますと、天井がやけに遠く見えた。
いや、違う。自分の身体が小さくなっていた。
声も出ず、指も動かせない。けれど脳だけは冴えていた。
(まさか……生まれ変わったのか? いや、違う……これは……)
視界に入った女性の顔。涙を浮かべながらも微笑むその人は、かつての“母”だった。
けれど、あの頃とは違う。
化粧っ気もない素朴な顔。節約を感じさせる服。手には小さな傷がいくつもあった。
横にいた父も同じだった。背広ではなく、作業服。真面目そうな目に、かすかな疲労と優しさが滲んでいた。
「……隼人。無事でよかったな」
「私たちのところに来てくれて、ありがとう」
そう言ってくれた二人は、かつての冷たく誇り高かった“親”とは別人のようだった。
名前も顔も同じ。でも――この世界の二人は、あまりに優しかった。
*
時間が経ち、身体が少しずつ動かせるようになる頃。
俺はようやく理解した。
ここは、現実とよく似ているけど、まったく違う世界。
この世界には転生にありがちな異能もモンスターも存在しない。
けれど、格差はより極端に広がっていた。
親の学歴、出生地、資産、血筋。そういったものが、あからさまに“序列”を決める社会。
俺の家は、最底辺だった。
家は古い団地。壁は薄く、隣の声が聞こえる。冷蔵庫の中身も常にギリギリだった。
けれど、家の中はぬくもりに満ちていた。
父は、どんなに疲れていても必ず「おかえり」と言ってくれた。
母は、どんなにお金がなくても誕生日には手作りのケーキを用意してくれた。
ある夜、母がぽつりと呟いた。
「ごめんね、隼人……何もしてあげられなくて。でも、あなたの笑顔を守るためなら、私は何だってする」
(――この人たちは、本物だ)
過去の人生。裏切り、嘘、建前ばかりだった俺の周囲とは違う。
この家の中にだけ、本物の愛があった。
俺は、だんだんと復讐を忘れかけていた。
“今”の生活が、かけがえのないものに思えていた。
*
だけど――その幸せは、ある日突然、終わった。
7歳の冬のある日。
父が会社の先輩に「儲け話がある」と誘われ、怪しい連帯保証人の契約にサインさせられた。
数日後、借金取りが家に現れ、俺を連れていこうとした。
「やめろッ……! 隼人に手を出すな!!」
父は叫びながら俺を庇い、借金取りが手に持ってた刃を受けた。
母の悲鳴と、父の温かい手の感触と、冷たい血の匂い。
あの光景は、脳裏に焼き付いて離れない。
借金取りはその場から逃げたが、後日捕まり、借金も無効になった。
けれど――父はもう帰ってこなかった。
母は、俺を抱きしめながら呟いた。
「隼人……もう、誰も簡単に信じたらダメ。父さんは優しすぎた。でもあなたには、生きて、強くなってほしい」
俺は、母の震える背中に手を伸ばしながら、心に誓った。
(俺が間違っていた。信じることは美しい。けど、それだけじゃ……守れない)
優しさを守るには、力がいる。知識がいる。戦略がいる。
信じるべき人を見極める眼が必要だ。
過去の俺はそれを持たなかった。
――だから騙され、裏切られ、すべてを失った。
もう二度と、同じ失敗は繰り返さない。
復讐だけが目的じゃない。
この世界で、俺は“守れる人間”になる。
父が最期に見せてくれた背中を、俺は決して忘れない。
読んでくださってありがとうございます。
第2話は、転生した隼人が「優しさに触れる」大切な回でした。
彼がなぜ戦うのか。何を守りたいのか。
その原点がここにあります。
次回以降、彼の生き方が少しずつ形になっていきます。
どんな結末に向かっていくのか、ぜひ楽しみにしていただけたら嬉しいです。
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