義姉?がやって来た!
一人暮らしが始まって1か月が経過した頃、とある公爵家が没落した、と新聞に書かれていた。
その公爵家は長年の不義密通が貴族法に反するという事でお取り潰しが決まり公爵とその後妻は貴族専門の刑務所にて懲役を喰らう事になった。
なんでも娘である公爵令嬢が国に訴えたそうだ。
その公爵令嬢は王太子との婚約が決まっていたそうだけど解消になったそうだ。
「これ……、お母さんの事じゃないよね?」
もしかしたら私にも何らかの罪があるんじゃないか、とドキドキしていた。
そんな事を思いながら過ごしていたある日の事、バイトから帰ってくると私の自宅の前にフードを被った人が立っていた。
服装から見ると女性っぽいし身なりが良い。
「あの、家に何か用ですか?」
声をかけない訳にはいかないのでかけた。
「貴女がユラさんですか?」
「えぇ、そうですけど」
「私、アンジェと申します。 一応貴女の『義姉』になりますが……」
そう言ってフードを脱ぐと金髪長髪のいかにもお嬢様みたいな顔を見せた。
え? この人が私の義姉?
若干混乱はしているが私はアンジェ様を家の中に入れた。
「私の父がご迷惑をかけてすいません」
開口一番、アンジェ様は私に謝ってきた。
「え、いや、私の方こそごめんなさい。 母が家庭をぶち壊す事をしてしまい……」
「いいえ、我が家は既に壊れていたんです。 今回の件は悪しき我が家にトドメになったし私も漸く決心がついたので感謝しています」
アンジェ様のお話によるとアンジェ様の両親は所謂『愛の無い結婚』だったらしく公爵様からも堂々と浮気宣言をされたらしい。
クソだな、公爵。
アンジェ様のお母さんは元々身体が弱かったらしくてアンジェ様を産んでからはほぼベッドでの生活でアンジェ様はお母さんに寄り添って暮らしていたらしい。
その間、公爵は一度も見舞いに来なかったらしい、クソである。
そして、アンジェ様の知らないところで勝手に王太子との婚約が決まりアンジェ様は王妃教育を受ける事になった。
まぁ、厳しかったらしい。
私だったらすぐに音をあげてボイコットするか教師に喧嘩を売るかどっちかだな。
しかも王太子様との関係も良くなかったらしくて、婚約期間は特にコレと言った思い出とか無かったらしい。
誕生日プレゼントとかも無かったそうだ。
多分、他に好きな人がいたか興味が無かったんだろう。
それ、将来の王としてどうなんだ?
そんな日々を過ごして心身共に疲れていた時にお母さんが亡くなった。
その悲しみが癒えない内に公爵は再婚宣言、しかも異母妹付き。
この瞬間、今まで我慢していたアンジェ様の感情が大爆発した。
「もうこの家を潰そう、と決意しましたわ。 未練なんて1つもございませんでしたから」
「デスヨネー」
そりゃもう良い笑顔で言うアンジェ様に私は引きつっていた。
この人、絶対に敵に回しちゃいけない人だ。
そして、メイドや使用人の証言や証拠を集めて貴族院に提出した。
その際、私の事も話題に出たらしいんだけど……。
「ユラはお説教してくれたんですよね? 我が家の諜報員が教えてくれました。 貴女は常識を持ってる方でどちらかと言うと被害者なので貴女には罪は無い、と伝えておきました」
あ、私の事も調査済みだったんだ、そりゃそうだよね。
「それで王太子様との婚約も白紙になったんだ」
「はい、あの方とのこれまでのやりとりも王家に伝えましたからきっと未来は明るくないでしょうね」
うん、やっぱり敵に回してはいけない人だ。