番外編④
冒険者ギルドは王都にあるギルド本部を中心とした国営施設である。
国営と言っても基本的には独立しているので国がうるさく言ってくる事は無い。
なんせ日常の困り事からモンスターの討伐まで冒険者の仕事は幅広い。
さて、ユラとアンジェ達が働いているギルドはランクでいうと真ん中ぐらいである。
そのギルドマスターを務めているアッシュは平冒険者から成り上がった。
本人曰く『運が良かっただけ』と言っているが勿論ちゃんと実力があっての今の立ち位置だ。
さて、そんなアッシュにとって唯一溜息を吐きたくなるような日がある。
それがギルド本部での定例報告会である。
堅苦しい場が苦手なアッシュにとっては早く終わってほしい時間である。
でも、情報は共有しなきゃいけないから一応メモは取っている。
「……で、次の問題だが最近パーティーの追放案件だが」
最近、冒険者パーティーの中で追放する事が多い。
「基本的に我々ギルドの総意としては追放は認めていないし推奨もしていない、所属冒険者にはそこの所を改めて理解してもらいたい」
議長の話はもっともである。
そもそも追放したり解散するにも手続きがある。
(まぁ、うちの冒険者にはそういう愚かな輩はいないからな)
そんな事をアッシュは思っていた。
(でも、まだ勝手に追放したりする奴がいるんだな、俺の現役の時と変わらんな)
アッシュもかつて組んでいたパーティーのリーダーから一方的に追放された事がある。
(あの頃は何故か俺が悪者扱いされて『追放されて当たり前』みたいな風潮があったんだよなぁ……)
それも当時所属していたギルドの中で稼ぎ頭のパーティーに所属していてそのリーダーがやっている事が全て正しい、と思われている時期があった。
それだけ冒険者達の発言権が大きかった時代があった。
しかし色々あってそのパーティーは崩壊しリーダーは命を落とす事になった。
それもアッシュが裏で雑用とか色々やっていたのがアッシュが抜けた事でボロが出るようになったからである。
それがきっかけでギルドが組織化され冒険者達の発言権は抑えられる事になった。
それが良い事か悪い事かはわからないが現在まで大きなトラブルが無いのが結果だ。