番外編③
ギルドに所属している冒険者達にはそれぞれの事情がある。
ある1人の冒険者は男爵家の次男坊で家族からは放置されて生きてきた。
なので早く家から独立する為にギルドに入り冒険者になった。
そんな彼がギルドに行くと見た事がある顔がいた。
(あれって……、アンジェ元公爵令嬢では?)
アンジェの実家である公爵家が取り潰しになった話は聞いている。
しかし、その後王太子の婚約者だったアンジェが忽然と姿を消した。
貴族が平民になって生きていけるかというとプライドとかがあってなかなか難しい。
アンジェの事は令嬢令息の間で色々な噂がされていた。
お金持ちの愛人になったとか、田舎に移住したとか、娼館で働いているとか。
だが、彼が見たのはしっかりと地に足をつけて働いているアンジェの姿だった。
彼が驚いたのはそれだけではなかった。
(アンジェ様ってあんなに可愛かったのか?)
貴族時代のアンジェは勿論美人で有名であり高嶺の花であった。
常にクールで近寄りがたい存在だった。
しかし、ギルドで働いているアンジェは常に笑顔でギルド職員とも分け隔てなく話している。
まぁ、今がアンジェの本当の姿なのだが。
彼は友人達にアンジェの事を話した。
友人達は勿論信じなかったが、試しにギルドに行ってみると確かにアンジェが働いている姿を見て信じるしかなかった。
そして、貴族社会ではアンジェの悪い噂はいつの間にか消えていた。