ギルド事務員のお仕事
「ユラさん、受付で揉めてるみたいですけど」
「あぁ~、偶にあるんだよ」
アンジェ様がコソコソと指差して話しかけてきたので受付の方を見る。
そこでは冒険者パーティーが何やら受付嬢に文句を言っているみたいだ。
「多分、『報酬が少ない』とかの話でしょ」
「報酬て決まってるんじゃないですか?」
「条件によりけりだね、例えばこの薬草の採集の依頼なんだけど」
私は依頼書の束からを1枚取り出した。
「これはただ『薬草』と書いてあるけど、薬草と言ってもピンからキリがある訳じゃない」
「そうですね、貴重な薬草もありますから」
「その通り、まぁ貴重な薬草だったらまた条件があるんだけど、この場合は薬草だったら何でも良い、て事になってるのよ。 でもね、最低限の条件があるのよ」
「最低限の条件?」
「つまり、状態が良くないとダメ、て事よ。 いくら採取してきても傷とか付いていたりとかしたら減額の対象になっちゃうのよ」
「そうなんですか、でもそこは冒険者の方もわかっているのではないですか?」
私は首を横に振った。
「残念だけどね、理解してる人は少ないよ。 基本冒険者って普通の仕事に就けない人達が就く仕事だから、依頼書を細かい所まで見てない人が多いんだよね」
「なるほど、でもそんな人達の対応していたら受付嬢のストレスが溜まってしまうんじゃないですか?」
「あぁ~、それは大丈夫」
怒鳴っている冒険者に対して笑顔を崩さずに対応する受付嬢。
なんだけど、裏側から見ると細かく足をガタガタと震わせているんだよね。
アレはストレスが溜まっている証拠だ。
漸く冒険者は納得をしてくれたみたいだけど舌打ちをして去っていった。
受付嬢は深呼吸をしながらも席を立った。
あぁ~、あの冒険者終わったね。
「受付嬢て受付だけでなくて別の仕事もあるんだよ」
「別の仕事?」
「問題のある冒険者の炙り出し、ギルド長への報告」
「えっ、そうなると」
「まぁ、いつまでも低ランクのままだろうね、しかもこのギルドを辞めても他のギルドでも情報は共有されているから扱いはそのまま、悪質な冒険者は人知れず処分される、ていう噂もあるよ」
冒険者にも最低限のルールはちゃんとある、ルールを守らないとそれなりの罰が与えられるのは当たり前の話。
因みにさっきの受付嬢、なんでも悪質な冒険者の処分も担当してるとかしないとか……。