一応、娘ですから
お母さんが亡くなった。
牢屋で眠る様に死んでいたのを牢番が見つけたらしい。
そして、遺骨を持って私の元に役人がやって来た。
「えーと、1つだけですか?」
「もう一つは罪人墓地に葬られました、彼は身分が剥奪され身内のいない無縁仏として扱われる事になったので」
アンジェ様に後で聞いたら城から連絡はあったけどそれ以上の事は無かったらしい。
庶民となったアンジェ様の事を思っての事だそうだ。
「お父様は小心者ですから、公開処刑になったら泣き喚いて無様な姿をさらけ出す事でしょうね」
そんな事をちょっと切なそうに言った。
そんな訳で私はお母さんの唯一の身元引受人なので遺骨を引き取る事になった。
「とりあえずお母さん、お帰りなさい、て言っていいのかな? ほんの少しだけ貴族の生活が出来て満足だった? でも、結局はお母さんは貴族にはなれなかったね」
私はお母さんの遺骨を前にして言った。
「私は今の生活で満足してたんだよ、だけどお母さんは満足しなかったんだね……、人にはそれなりの度量があるんだよ、結局は庶民は庶民なんだよ」
多分、お母さんはあの世でお婆ちゃん達に怒られてるんだろうなぁ、私お婆ちゃん達に会った事無いけど。
翌日、私は遺骨を持って寺院に向かった。
「では遺骨は納骨させていただきます」
「よろしくお願いします」
書類を書いて神官様に遺骨を預けた。
遺骨はお祓いを受けてお墓に納骨される。
どんなに馬鹿な事をやってもやっぱり私にはただ1人の身内なのでお墓には入れるのが適切だろう。
お祓い後、私はお墓に手を合わせた。
(多分、ならないとは思うけど安らかに眠ってね、お母さん……)