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臨戦探検部

「探検部!!石!石が飛び出してきたって!」

「腕ですよ!石巨人の腕です!」

「魔法!?魔法なの!?」


 なぜか喜ぶ魔法部。

 楽しむ前に逃げてほしいところ。


「ここから出てこないようだけど…本当にそんな大ごと?」


 扉のあったところから何度か腕が出てくるが、本体が急に飛び出す気配はない。

 思うより慌てなくて、いいようにも感じる。


「こいつがそれほど怖いわけではないんですが…いや、凄い強いし怖い存在なんですけどね」

「私もこいつ好きになれそう~」


 きやすく言ってくれる。


「先輩、タマ込め万全ですよね」

「土嚢とか積めるといいんだけどなあ」

「…何…?」

「はいそこ下がって!!」


 言われて慌てて、まほが内出屋君のほうに駆け足をし始めたタイミングで、即発砲。


「な、なにそれ!?ムカデ…じゃないけど」

「光に反応するセッソクマダラです、だけど夜目が利くので明かり消したら物量でそのままやられます」

「こわ」

「で、こいつ20mくらいのが確認されるくらい規格外にでかくなるので」

「…なんつった今」


 説明の間も、ちょろちょろ出てくるその虫…か、なにかに狙いを定め、探検部二人はそっちから目を全く離さない。

 外部が見るより大ごとな空気を、さすがに感じざるを得ない。


「一応聞きますけど、魔法部は虫よけ持ってたりします?」

「…予測してないのは、準備してないかもなぁ…」


 それはそう。


「とりあえず、魔法部その辺で使ってない調査隊の資材がないか確認だけしてくれません?隙を見て光が入らないように閉じたいので」

「あいよぉ」


 実のところ、内出屋君はそんなものないのはわかってるが、奥のほうに魔法部を引かせておく口実としては悪くない。

 もはや全て諦めて逃げるのも視野に。

 そういうことだ。


「ドアの代わりになるようなでっかいの、そんなのあるのー?全然見つからないよー?」


 ないからね。


「むしろあの中にないの?ちょっと行ってみた…」

「そっちは行かないで!!」


 そういった途端。


「「「うわぁ!!」」」


 全員が悲鳴を上げる、轟音がその広間に鳴った。

 すさまじい音と共に、岩が出たり戻ったりしていた、あの扉の跡地が広がった。

 いや、それどころか、そちら側の壁が一気に崩れ落ち、岩の塊が吹っ飛んでくる。


「無事だったら離れて!できるだけ出口側に!!」


 内出屋くんが叫ぶ。

 土煙で状況確認できないので、とりあえず叫ぶしかできない。

 しかし、これもまた自己満足に他ならない。

 全員見えないはずなのだから、方向などもわかりはしないのだ。

 とにかく走れ。そういう言葉にしか、ならない。

 しかし、言わないとならないことだった。


(…ここはもう二度と使えそうにないな…とにかく高いところを見つけて…、二人があっち側に行かないことだけは確認しないと…)


 内出屋くんが腰のメガネをつけて少しでも周囲を確認しようとしながら考える。

 ちらちら動くものが見えるので、小さいセッソクマダラと言われた生物も飛び出している可能性がある。

 それ以上に、厄介なものも。


「………いや、もう全部終わりかもしんない…」


 ちょっとだけ高い岩を見つけて、もう一度周囲を。

 いくつか動くものも見える。

 下にも上にも。

 そこで見えるもの、それは、大きな石の巨人の巨大な姿。

 そして、数十メートルありそうな、巨大なセッソクマダラが見える。


 複数。


 石巨人自体は人を直接襲わない。

 漫画的な解釈だとゴーレムと呼ばれる分類なのかもしれない。

 生き物よりも命令で動く人形、機械類に近く感じる。

 だが、セッソクマダラは強く光に反応して暴れたり襲ってきたりする。

 どれでも構わずだ。

 なので起こる。

 存在する限りつぶしあうバトルが両者に。

 おそらくセッソクマダラの巣がここなのですべてせん滅は無理。

 石巨人がここにいたのはある意味偶然か不幸な配置だろう…と内出屋くんは思っている。

 なので出来るだけ暗い空間に押し込める機会を待って、光を封じて横に道を作るというのが、過去の調査部隊と探検部のやれる限界だった。

 今日までは。


「…!そっちいかないで!!魔法部!」


 そして下に目をやって、少しだけ見えた人影。

 状況がわかる探検部なら、まさかこの周辺で音に向かっては進まない。

 言いながら走って、可能な限り止めるしか考えはつかなかった。

 立っていた岩の場所に、かろうじて発火灯を置くのだけは、考えてとっさにやった。


「魔法部!今だけ動かないで!」

「後輩くん!見つけたの!?無事!?」


 答える余裕が心にない。

 しかし先輩の位置がおぼろげに確認できたのは僥倖。

 僅かにそこに気分が乗った。


「探検部?いま、これどうなって…」


 せきこんで半分も聞き取れないが、そういった気がする。


「こっち側に走って!光はセッソクマダラを寄せる囮なので、絶対向かっちゃいけないです」

「いやでも………」


 いいかけた宇塚まほだが、言いきれず、思い切り腕をつかまれ放り出される。

 先輩の声がした方向だ。

 これでうまくすれば、捕まえて出口に持って行ってくれるに違いない。

 しかし、魔法部、まほが言いかけたこと。

 あんたも光めっちゃつけてるから、それわからないよ!

 そう、呼び寄せるという、その光源を、内出屋くんがつけたまま動いていた。

 遠ざかりながら魔法部が見たのは、セッソクマダラが内出屋君に飛びつくさま。

 抵抗もしていたようだが、確実に一つ見えたのは、手が上腕ごと切れて吹っ飛ぶさまである。

 言葉が出なかった。

 相手から悲鳴もなかった。

 あからさまな悲鳴で戻ってくることがないように、内出屋くんも限界まで踏ん張った。

 その瞬間、魔法部宇塚まほは、急に別のところから手をつかまれた。

 そして、多数の銃声を聞いた。

 せき込み、視界も悪いまま中、魔法部は、それでも理解が何もできないままだった。

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