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二ー11

リシャールに名前を呼ばれそちらを見る。

顎で扉の方向を示す合図をしたかと思うと、リシャールはのっそりと立ち上がった。


「じゃ、俺たちはちょっと散歩でもしてくるか。」

「え?? 散歩?? こんな夜に? 」

「ちょっとローランの霊が出るか確認しに行こうぜ。」

「は?? ローランのゆう霊!? ちょっと、ペラン!! リシャールがおかしい! 」


冗談かと思っていたが、どうやら目が本気だ。

ダニエルの演奏に陽気に合いの手を入れながらしっかり出来上がっているペランにダメ元で助けを求める。


「あー。ジャン。諦めろ。そいつ、ガキの頃からローランに憧れてるんだ。幽霊でも良いから1戦交えたいってずっと言ってたなぁ。ははは。」


ペランは演奏するダニエルの替わりにタダ酒を飲み、上機嫌に返事をする。


「え? リシャールの憧れの人って、アーサー王じゃないの? 」


持っている剣の名前もエクスカリバーだし、宴等催事の際はアーサー王の名前を出して演説する事のほうが多いのだ。

そのやり取りを扉の近くで聞いていたリシャールは気まずそうな顔をしていた。


「うるせぇな。色々あんだよ。ほら、行くぞ。」


そう言うとリシャールはさっさと外に出ていく。

いくら初夏とはいえ、山岳部の山の夜は冷える。


「待ってよ、リシャール。ダニエルごめん! 後は任せた! 」

「あ! こら、お前ら、酷いぞ! 」


抗議をするダニエルにあやまりながら外套を二人分ひっつかんで出口に駆けていくと、リシャールが開け放ったままのハズの扉にぶつかった。


「?? 」


よく見るとそれは扉ではなく、背の高いクマの様な男が立っていたのだ。


「え? あ、ごめんなさい! 」

「・・・」


謝罪にペコリと会釈を返すと、クマ男はそのままぼんやりと演奏するダニエルを見ている様子だった。


「えっと、あの。 」

「? 」


声をかけると、不思議そうな顔で見おろしてくる。


「そこに立ってると、出れないんだけど。」


そこで初めて自分が扉を塞いでいることに気がついたようで、顔を赤くしながら小さな声で「すまない。」とつぶやきながら場所を開けてくれた。


気持ちは分かるよ。演奏しているときのダニエルは普段以上に見栄えが良く、見とれてしまうのも仕方がないと思う。

・・・演奏してる時だけだけどね。


そう心の中でつぶやきながら、思わずクマの肩をポンと叩き、視線を合わせ頷いた。

クマのように大きいのだが、見た感じ悪そうな人でも無いし、ダニエルになにかするようにも見えなかったので、そのままこの場を任せた、とでも言いたい気持ちで頷いたのだが、それが通じたのか、コクリとうなずき返してくれた。

すっげー良いやつだな。きっと。

そう思いながら、松明を手に持ちぷらぷらと歩いていたリシャールの側に駆け寄る。


「さっむ。ほら、リシャール。外套着ないと風邪引くよ。」


無理やり外套をリシャールの肩にかけると、その外套の中にふわりと体ごと抱き込まれた。


「これで寒くないな。」

「・・・うん、暖かい・・・。」


実は少し甘えたい気分だったのだ。

そして、おそらくリシャールも。

リシャールに蜜月だと言われたあの日からも、ダニエルにからかわれながらで、結局二人になる時間がほとんどなかった。

霊だ何だと言いながら二人っきりになるただの口実だったのだろう。


そう思いながら、腰に手を回すと、腰にはしっかり剣がぶら下がっている。

顔を見上げるといつになく真剣な顔をして石塚の方向に向かっている。


「・・・マジかよ。リシャール・・・本気でローランと1戦交える気なの?」

「1戦は無理でも会えるかもしれないだろ。夜になると石塚に霊が出るという噂を聞いたからな。」

「・・・」


何だよ。二人きりになりたかったんじゃなかったのか。そう思い、ため息をつきながら峠を目指す。


「・・・わぁ。なんか星、近く見えるね。・・・標高が高いからかな。」


ローランの石塚につくと、そこは見える山の尾根から空にミルクをこぼしたように星々が所狭しと光り輝いている。

眺めていると、吸い込まれてしまいそうな気持ちになり、リシャールに服をそっと掴んだ。

隣で同じように空を見上げていたリシャールの顔がゆっくり近づくと、柔らかな唇が触れ合う。

松明の薄明かりに照らされたリシャールが間近で笑う。

時折見せるとびきりかっこいい王子の微笑みだ。


「ローラン出てくる間、暇だからセックスしようぜ。」


そして、その王子の微笑みの顔で、このセリフだ。

ドキドキした気持ちが半減して、ため息が出る。


「・・・やらしいことしてると霊って出てこないらしいよ。」

「な、なんだって! そんなの初耳だぞ! 」

「・・・まぁ、それは都市伝説みたいなもんだけど・・・大体、いつ出てくるかなんてわかんないじゃん。しかも石碑の前で罰当たりだし、そもそも最中に出てきたらどうすんだよ。」

「どうって、お前、こうやってお前を抱えて、こう剣をだな・・・」


そう言うとリシャールはおれの片足を持ち上げ、そのまま体を抱き上げ両足をしっかりと腰に巻き付けるようにすると、剣を引き抜き振り始める。


「ちょ、ちょっと! リシャール! 落ちる おちる! 」

「ああ。大丈夫だ。本番は俺の鋼鉄の杭がお前にぶっ刺さって・・・。」

「バカ!! 」


いくら誰も居ないとはいえ、恥ずかしすぎる。

リシャールの頭に思い切り頭突きをすると、「ぐぉ!!」と叫びながらもゆっくりとおれを地面に降ろし、だっはっはと大笑いをしている。

頭突きのせいで目をつぶっても眼の前を飛ぶ星にクラクラしながらしゃがみ込みこみ、リシャールにつられて、思わず吹き出す。


「あっはっは。何だよそれ。鋼鉄の杭って。無茶苦茶だよ! 絶対ローランの霊なんか出ないだろ。」

「はっはっは。ま、それならしょうがねぇか。ローランとの1戦は諦めて、お前と1戦ヤルか。」

「ヤルのかよ!」

「え。ヤラないの?」

「・・・いや、ヤラないとは・・・言ってない。でも、ここでは嫌だからね。」

「なんでだよ。星も見えて見晴らしも良くて気持ちいいだろ? なんか獣感あるし。」

「・・・だって・・・。」

「なんだ、お前怖いのか。」

「!!!べ、、別に怖くなんか無いし!! ここじゃなくても星見えるじゃん!! 」

「わかった。わかった。よしよし。悪かったなビビらせて。」

「ビビってないし!!」


文句を言っているとリシャールに再び外套に包まれる。

見上げると後ろを振り向いたリシャールが軽く手を上げて何やら挨拶でもしている仕草をしている。


「・・・え、チョッ、と、だ、誰に手振ったの? だ、誰も居なかったよね?! ま、ちょ、まじで? 」

「あっはっは。お前があんまりビビるからよ。ちょっといたずらだ。」

「はぁぁ? おれ、全然ビビってないし!! なんだよ。ここでヤッてやろうじゃねぇか。おれは平気だぞ。見てろよ! 」

「あっはっは。わかったって言ってんだろ。ほら、行くぞ。俺の鋼鉄ぶち込んでやっからさぁ。」

「うわ。サイテー。この人サイテーですよ。ローランさ・・・あ!! こら、触んなっ・・・ん・ぁ・・。」


イチャイチャしながら峠を後にしながらも、何だかため息の様な空耳がした気がしたが、リシャールに責め立てられそれどころではなくなってしまったので、おれは、そのため息はそのまま気が付かないことにしたのだった。










リシャールの憧れの人は、アーサー王であり、ローランでもあります。

アーサー王は言わずと知れたブリトン人の英雄。

ローランはシャルルマーニュの家臣と10話のあとがきにも書きましたが、

シャルル・マーニュ=カール大帝=カロリング朝。

カロリング朝の流れを組むカペー家の旧王ルイとブリトンの流れを組むリシャールの父は不仲なので、リシャールはローランに憧れがある事を公にできません。

色々あるんです。


因みにアーサー王の聖剣はエクスカリバーで、ローランの聖剣はデュランダルです。

(因みに私の憧れの聖剣は東博(略)収蔵の童子切安綱。持ち主は源頼光で、あとがき2度めの登場 坂田金時(幼名金太郎)の主君です。)

人物増えたのでまた相関図作らないといけません。がんばります。


二幕はイチャイチャの続きのR18の0.5の予定は無いです。

理由は、書くの向いてないかなっと思ってますから。(ここに載せられないし。)

ご要望がアレばもしかしたら奮起して書くかもしれないけど、無理かもしれないです。(ストック切れ故)


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