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この美しい世界が終わるまで  作者: 少女計画
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第五話 「金曜日を諦めるまで」 6月30日




「ダメだぁぁぁぁー。


全然、わからん。


もう終わりだぁぁ。


やっぱり今日は土曜日。


昨日は金曜日。


僕の勘違いでしたぁぁぁ」




気合十分に今日が金曜日であることを証明しようとか言ったが、現実はそんなあまくなかった。



どうしたって今日が金曜日であるはずがなく、それよりも今日は土曜日である理由しか出てこなかった。



まず、僕が行ったのは聞き込み調査。



今日は何曜日か。



昨日は何曜日か。



今日が土曜日だと言った場合は昨日と一昨日何をしていたのか。



昨日が金曜日だと言った場合は協力者として仲間に引き込む。



祖父ちゃんに聞いたら……。




「は?


明夜、おまえ、また何か妖怪にでも憑りつかれたんじゃねえのか?


神社と病院どっちがいいかだけは選ばせてやる。


どっち行く?


というか、おめえ、また徹夜しただろ。


クマ、凄いぞ」




と言われ。



祖母ちゃんには……。




「今日は土曜日に決まってるでしょ。


だってもなにも、今日はキャベツと洗剤が安いから。


 あと、今日は土曜プレミ〇ムあるから。


 昨日、何してたか?


昨日は、金曜日だったから、卵買いに行ったねえ。


あとは、金曜〇ードショー見たぐらいかなぁ。


一昨日も?


……一昨日、ごめん。


思い出せないなあ。


もう年だから。


そんなことより、明夜、あんた、昨日ちゃんと寝たの?


クマ、凄いよ」




以上が聞き込み調査の結果だ。



正直、当てにならない結果だ。



そして二人とも。



僕のクマ、そこまで酷いかなぁ。



次に僕が行ったのは、テレビやネットで今日が金曜日である証拠を探すこと。



だが、結果から言えば一向に成果は出なかった。



何度見ても、何度探しても何にも出てこなかった。



昨日僕が見た木曜ドラマは一昨日のことになっていたし。



どこを探してもやはり昨日は金曜日で。



太陽さんがオススメしていた金曜ドラマがしっかりやったみたいなので、後で見逃し配信見ないといけないことはわかったが、それ以外は何にもわからない。



ダメもとでネットに……。



(今日が金曜日だと思う、同士諸君集まれ!)



と呟いたら。



(ハイハイ!


僕もそー思う、今日は金曜日www)



(あなたは何か、宗教的なものに入っていますか?


今すぐにやめるべきだと思います)



(もしかしてあなたは宇宙人に脳をいじられたんじゃないですかね?


一度、我ら、ミステリアス同好会カヌワーンの恍惚に是非ご連絡を)



……。



上部三つでもう、しっかり見るのはやめようと思った。



煽りから真剣に頭痛いやつだと思われたガチの助言、何かUMA的なやつにさらわれたとかの怪しい系など、多くの方に心配と主に馬鹿にされた返事が返ってきた。




「ダメだ。


全然わからん。


やっぱり、今日は土曜日……で、昨日は金曜日……」




今日は土曜日。



昨日は金曜日。



一昨日が木曜日で。



そこで一つはたと気付いた。




「そっか。


今日が土曜日ってことは、僕、太陽さんに嘘ついてないってことだよな。


そうだよ。そうだよ。


嘘ついてない。


昨日のアレは本当だったんだから、じゃあ、もういいじゃないか」




途端になんだか許された気持ちになって、変にテンションが高くなる。



僕は太陽さんに嘘をつかなかった。



間違った認識を、正しいものにしただけ。



それよりも憂鬱と零した太陽さんを幸せにした。



時間を確認すると、そろそろ太陽さんが家に来る二時間前であることに気付き、お茶菓子や飲み物があることを確認しに行く。



どうしてあんな強情に今日が金曜日であることを証明しようとしたんだろう。



(今日は土曜日。金曜日じゃない)



一度諦めてしまえば心は楽だった。



(今日は土曜日。金曜日じゃない)



冷蔵庫には緑茶が大量にあったが、僕の好きなオレンジジュースがなかったので、買いに行くことにする。



(今日は土曜日。今日は土曜日)



祖母ちゃんになにか他に買うものないか尋ねると、キャベツ買ってきてと言われ、お小遣いを貰った。



(今日は土曜日)



家の外、天気も良く晴れ間が続いている。



スッキリした気持ちで、一歩踏みしめたのに……。




「おあ?


ボンどうしたんです?


今日は学校じゃなかったですかい?


不詳この山田ヒロシ、働きもせず、食っては寝ての暮らしですが仮病はよくないと思いますぜ。


なんなら、ご相談、五分で300円ってとこが妥当でしょうか」




なのに。




「……ヒロシ、お前」


「どうしたんです?


ボン?


そんな怖い顔して?」




なのに。




「……お前、今日は何曜日かわかるか?」




「はあ、ボンの意図はこれっぽっちもわかりませんが、あっしの腹時計は正確無比。


精密さだけがウリですからねぇ。


聞かれれば答えます。


今日は、誰が何と言ったって、6月29日の金曜日でさあぁ。


どうです?


合っていますでしょう?」




なのに。




「……お前、いや、ヒロシ。


一つ頼みがある」


「なんでさぁ、ボン?


悪いことなら、あっしもそれなりに経験はありますから。


多少にも過分にも力になれますぞ」


「ちげーよ。


話を聞かせてくれるだけでいい。


その代わりと言っちゃあアレだが、今日の餌は祖母ちゃん手作りの特製ハンバーグを食べさせてやる」




なのに、どうしてこんなに諦められないのだろう。




********





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