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この美しい世界が終わるまで  作者: 少女計画
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第三話 「ねぎまと嘘をついてしまうまで」 6月28日




帰ってくるとちょうどのタイミングで夕飯が出来上がっていた。



机には大量の焼き鳥。



それに白米。



白米大好きサーヴァント、ライサーの称号を持つ僕は焼き鳥には絶対米を食べる。



そんなしょうもないことはさておいて。




「いただきま~……」







「……ああ、美味しかったぁ~」




焼き鳥の感想については、食べる前から決まっていたが最高だった。



太陽さんは僕がネギが嫌いなことを知っていて、ねぎまのネギを代わりに食べてくれた。



だが、正直言うと太陽さんが作ったという付加価値があったら、僕はコンクリでも鉄骨でも喜んで食べる。




「美味しかったね~。


ご馳走様でした」


「いや、太陽さんも作ったんだから、それを言うなら僕の方だよ」




食事を済ませた僕と太陽さんは、談笑しながら太陽さんの家へと向かっていた。



実は僕の家の隣の家は太陽さんの家なんだぜ。



と、誰かに自慢してやりたいが、何分土地が広大なため、正確に言うと僕の家の隣の(畑を挟んで次に見える)家は太陽さんの家というのが正解だ。



徒歩20分で着くあの、遠くにあるあの家だ。



えっ?



見えない?



まあ、僕も心の眼で見ているから実際に目に映っているわけではないが。




「はぁ~明日も学校か~。


ゆーうつだなー」




明日は金曜日で、あることを計画しているから僕としては嬉しいのだけど。



そこでちょっと意地悪してみようと思って僕は悪い笑みを浮かべて話しかける。




「明日、土曜日だよ?」


「……。


えっ!?


明日、土曜日なの!?」




ちょっとからかっただけなのに、かなり嬉しそうに笑い出す。



実は金曜日で~す、と口の中に準備していたのになんだかつらい。




「あ、えーと、実は……きん」


「やったー!


じゃあ、明日は久しぶりにめーや君のお家にお泊りしよっかな~」




振り向いた太陽さんのえへへという顔は、僕の思考回路を至高回路にするには十分だった。




「……うん!


それがいいと思う!


そうしよう!


そうするしかない!」




気付くと太陽さんの家はすぐそばまで迫っていて、頭がポワンポワンしていた僕に、今更否定するような冷静な思考回路なんてなかった。




ただ至高回路の方は有頂天だったので、太陽さんの




「バイバイ、じゃあ、また明日」




という言葉に対して。




「うん、また明日。


最高の土曜日にしよう」




と、自分でも気持ちの悪いことを言ったのだけは覚えていた。



あ。



ヒロシのこと忘れてた。



まあ、いっか。







帰り道、夜風にあたって冷静になった僕はただ一言。




「……やってしまった」




外に吐き出してもそれだけが胸中をぐるぐると渦巻いていた。



太陽さんに冗談とは言え、嘘をついてしまった。



なんですぐに訂正しなかった。



そんな後悔が胸を締め付ける。



太陽さんはあれで結構天然なところがあるから、明日を土曜日だと疑わないだろう。



どこかで気が付く可能性もあるが、それも太陽さんは天然だからという理由で片付いてしまうほどに、彼女の天然ぶりはすごく、そして、明日を土曜日だと絶対に疑わない。



携帯で連絡するか?



(本当にごめん……実は明日は金曜日でしたー!


ドッキリ大成功!!)



とか。



いや、馬鹿か。



これだと太陽さんが傷つくに決まっている。



どうするべきか?



結局、帰りの徒歩20分で僕が導き出した結論は、ありきたりなものだった。



早朝に太陽さんの家の前で土下座しながら謝る。



よし、今日は徹夜だ。




********





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