出会い
8月 祖父母と一緒に年に一度は来ていたキャンプ場に今日は祖父と二人だ。
「自分の書いた手紙とはいえ、改めて読み返すと気恥ずかしいものだな」と祖父は呟いた。
「うん、お祖母ちゃんの日記も読んでてそこにいたのは私と同じ16歳の女の子だった、なんか不思議」
「ばぁ~か、儂らだって若い時があったんだ、いきなり爺婆になったわけじゃないわ」
そうなんだ、祖父母だって恋をして行き詰ったり悩んだりして二人で確かめ合って結婚まで辿り着いたんだよね。
「でもびっくりしたのは、お祖母ちゃんからの申し込みとか、普通信じられないよ、入学早々の6月に1年生から3年生になんて」
「そうだろうな、儂もびっくりした覚えがあるよ」
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出会い
生徒会の本部室でガリ切の応援と印刷製本の応援を募集していると張り紙があった。友人の順子とその張り紙を見ていたら声をかけられた。「ガリ切の経験あるの? 印刷とかでも良いから応援してくれないかな。」2年生の女子だった。
字は割と綺麗な方だと自分でも思ってたしガリ版も中学では結構書いていたから受けることにした。2時間づつ3日の約束。
翌日から本部でガリ切、静かな部屋の中に鉄筆の出す音がカリカリと響く。好きだなこの雰囲気、
最終日に『可愛いな』って声が聞こえた、顔を上げると3年生がいた。一気に顔が熱くなってきた恥ずかしい嬉しいびっくり感情がごちゃ混ぜになる。
『あー ごめんごめん声に出ちゃってたか、うん忘れて』
変な人だ、でもそれからが大変だった傍で一緒に作業してた順子に思い切り冷やかされた。
「すごいねぇ流石葉月何もしないで3年を落した」思い切り否定した、もしかしたら横にいた順子の事かも知れないよと言ったら「あの3年葉月の事ずっと見てたもん、それくらいわかるよ、わかりなさいよ」もう何を言っても無駄だと諦めよう。
でも嫌な気分じゃない、嬉しいのかも。
結局応援は2日延長になった、順子がうるさく絡んでくる。
「今日は先輩からなにかあった? 話しかけられた?」
「なにもないよ」
もう生徒会のお手伝いは終わった、顔を見ることも無い。
どこか残念な気持ちになっている。
あの一言がずっと気になる、忘れてと言われたからって忘れられる訳ないじゃない。その続きは無いのだろうか。
もしかしてあの3年生のことが気になる? まさか… 好きになった?
「葉月さぁ、葉月の方から話しかけたらどう」
どうってどういう意味よ、可愛いと言ってくれたのは向こうの方だしなんで私からなのよ。
黙ってたら「葉月さぁ好きになってきたんじゃないの?」と追いかけられた。
「好きとか嫌いとか分からないよ、話したことも無いのに」実際二人で話す機会なんてなかったし、気になる存在なのは確かだけど。
「3年生なんだし一緒にいられる時間って後一年無いんだよ、気になるならさっさと告った方が良くない」
そうなんだよ、残り時間が短いんだ。だから意味が無いじゃないの。
足が震えた声が上ずった何を言ってるのか分からないくらい緊張した
頑張った自分偉い。
結局「可愛いと言ってくれた」これだけでねだったようなものだったな。
最初は渋っていた、泣きそうになった。