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第五幕 「『動画部』に入りませんか?」

一話短め、間隔広めの読みやすさ重視の作品になっておりますので、苦手な方はブラバ推奨です。

二回目の中学三年。

なんとか保健室登校は出来るようになり、一年遅れての卒業。


演劇部の顧問とは妙に仲良くなっていた。

あいつ等は俺の為とか言って、全国大会で優勝していたそうだ。

あえてヤツらを避けて一年を家で過ごしたことで天才達への嫉妬も弱まった気がしていた。


そして、もう一度やり直そうという気持ちを生まれ、天才達に敵わなくてもいいから、楽しく演劇をやろう、その為に演劇部に入ろうと、演劇の名門ではなく、家から一番近い公立の、地区大会敗退の演劇部に入部しようとしていた。


なのに、アイツがいたのだ。

そして、俺は演劇部を追放された。



俺は、よっぽど演劇の神様に嫌われているらしい。


顔は平凡。

父親はクソ底辺役者。

小学校では、自分の下手さを両親に教えられ、

中学校では、才能のなさを天才達に見せつけられた。

高校では、演技をする場さえも与えられない。


空を見上げ、笑う。


「あの……」


振り返ると、ぼんやりした子が、いや、ぼんやりしているのは俺の目だ。

袖でこすって、はっきりとした視界で声の主を見る。


明るい色の髪をサイドポニーでまとめた快活そうな美少女が立っている。

二物も三物も持つ美男美女の天才達を見てきた俺だが、奴らにも負けないくらいの整った顔立ちだ。

なんだ、俺には美男美女を惹きつける才能はあるのか。

どう転んでもフツメン、結ばれる可能性ゼロパーの俺からすれば、ただのちょうめいわくなんですけど。


「えと……俺?」


「は、はい! あの! 私! 今、演劇部にもいたんですけど、」


「ああ……なに? 励ましてくれるの? ありがとう。でも、いいよ。大丈夫だから。慣れてるんだこういうの」


サイドポニーの美少女は、理解できなかったのか少し眉間にしわを寄せるが、すぐに真剣な表情に変わり俺の手をとった。


ちょうやわらかいんですけど!


「あの! もしよければ! 『動画部』に入りませんか?」


「どうがぶ?」


ナニソレ?


「動画部って言うのはその名の通り、動画サイトにあげる動画を作る部活なんですけど、私! あの、新入生なんですけど、部長に『演技できる子がもう一人欲しいから演劇部の新入生に声かけて攫ってきて』と言われまして!」


なにその部長、怖くない?


「あの! あ、あなたを見かけて、どうかなって思いまして!」


「ああ……うん、」


正直、断りたかった!

だって、その部長、怖いよ!


けど、『演技できる子が欲しい』。


勿論、才能ある、実力ある子っていう意味じゃない。

演技がしたい子ってことだ。


俺は……演技が、したいんだ。


「あ!や、やっぱダメですかね、先輩みたいに才能あ……」


「行くよ」


「え?」


「入るよ。俺でよければ」


「ほ、ほ、ほほほほっ本当ですか!?」


「あ、う、うん」


美少女の柔らかい手が俺の手を強く握りしめる。

でも、いたくないよう! すっごいやわらかいんだもの!


「役不足だと思うけど」


「あ……」


そう言うと、美少女は少し表情を暗くさせる。

あ、こういうことは言うべきじゃないか。

多少は実力あった方が嬉しいもんな。


けれど、美少女はキッと顔を上げ、こちらをその大きな瞳で見つめてくる。


「わ、私! がんばりますから!」


「……うん、よろしく」


これからは何があっても受け入れよう。


「あ、私! 潮時信女しおどき のぶめって言います! 早速行きましょう! アクト先輩!」


サイドポニーの美少女、潮時さんに引っ張られながら俺は、動画部があるという部活棟へ向かう。

役不足な俺に何が出来るか分からないけれど全力で頑張ろう。

俺を新しい世界に導いてくれる美少女の背中を見ながら、俺はそう誓った。




********


「ん? 今のってもしかしてアクト?」

「え!? どこよ!? いないじゃない! あんた早く教えなさいよ! バカ!」

「っていうか、なんでみんなついてくるのよ~、ウチがアクトっち独り占めするつもりだったのに……」

「抜け駆けは許さない。わたしだって、アクトに会いたい」

「っつーより! アイツはなんで、アタシたちより先に全部手続きすませてんだよ!」

「ご、ごめん……ボクが喋っちゃったんだ……毎日怖い声で聞いてくるから、思わず」

「「「「あ~……」」」」

「ま、仲よくしようぜ! 転校生同士!」


至って普通の公立高校。

そこに、一年留年の新入生が入学してくる普通ではあまりない事態が起きた。

だけでなく、七人の転校生が入学してくるという異常事態が。

そして、さらなる大異常事態が起きることはまだ誰も知らない。


お読みいただきありがとうございます。


少しでも楽しんでいただければ何よりです。


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