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第十五幕 「私を愛してくださる? 『はい』とおっしゃるのはわかってる」

ざっくり人物紹介。


微妙阿久人びみょうあくと。自覚無き超天才役者。ブサメン寄りのフツメン。


潮時信女しおどきのぶめ。アクトを動画部に誘った同級生。サイドポニー栗毛美少女。


吝苦無やぶさかくない。動画部部長。ふんわりロングダイナマイトボディ。


吉賀王剣きがおうけん。動画部マスコットキャラクター。ほぼ二頭身。


広井結女ひろいゆめ。演劇部エース。アクトに「お前が私の相手役? 役不足だ」って言った人

ジュリエットが二人。

しかも、一人は名前を捨てた、元ジュリエット。

ロミオの記憶にはないもう一人のジュリエットがいたのだ。


なんだこの話。


ユメの乱入から生まれたアドリブ劇。

コメディからは遠いサスペンスとなるような話になったがなんとか紡いだ。

役不足凡才の俺に出来るのはこのくらいだ。

でも、きっとユメなら、このサスペンス劇が最初からあったかのようにやってくれるだ……


「でも、これだけは信じて、私はあなたを愛しているのよ、ロミオ」


ん?


左の腕が柔らかい。もとい、柔らかい感触がある。

ユメジュリエット、黒髪のジュリエットが俺の傍に、いや、俺の腕を抱きながら真っ直ぐ俺を、ピュアな瞳で見つめている。


あるぇ~?


俺の筋書き。



詰め寄られる俺。


「い、一体どういうことなんだ!? う、頭が……!」


とか言って頭を抱える。


空気を読めるきがちゃん先輩演じるムチャブリエル飛び込んでくる。


「一体どうなってしまうのか、次回に続く!」



筋書き終わり。


けれど、ユメはさっきまでの強烈な迫力から一転し、一途に思うが故の強さに変えてしまっているふにふに。


「私を愛してくださる? 『はい』とおっしゃるのはわかってる」


ジュリエットの台詞を使って、まだ終わらせないぞと言わんばかりの演技を見せつけるやわらかい。

左腕の感触に負けないくらいやわらかい微笑みなんだけど、真っ黒な瞳はじいっとこちらを見ている。

あれ? ハイライト消してる?

っていうか、左腕やわらかい感触に塗りつぶされていたけど、結構な力で抱きついてきている。

あれ? 折りにきてる?


ユメの意図が読めない。

昔から読めないヤツではあったが、今はよりいっそうだ。

これだから天才ってやつはよう!


「わ、私の方が彼を愛しています!」


そこに新たな天才、潮時ジュリエット、栗毛のジュリエットが右の腕に抱きつく。

やわらかい。

あと、サイドポニーが揺れていい匂いがします。

けれど、これは事故なんですお巡りさん。

偶然嗅いでしまっただけなんですんすん。


正直、人生に三度あるというモテ期は恐らく誰でも可愛い幼少期に終わってしまったであろうブサメン寄りフツメンにとっては、マヂ無理……な展開。


しかも、潮時ジュリエットさんや、あなた実はバルコニーから飛び降りてきてるからね。

まあ、実際は、部室の中にあった小さな台ではあるんだけどね。


もうこれは、『ロミオ』に任せよう。

俺は、芝居を続けながらも、ゆっくり静かに息を長く吐き、小さく吸い、スイッチを入れる。



ふぅーーーーーーーーーーーーーーーー



すぅ



私は、ゆっくりと右側を向き、出来るだけ優しく語りかける。


「ジュリエット、落ち着いて。怪我はないのかい?」


「怪我、ないに決まっています! あっても構いません! あの女を引きはがすのが先決です」


「そ、そう。なら、よかった。じゃあ、まず落ち着こ……」


「そんなヤンチャ娘の怪我の心配だなんて……やっぱり貴方はあの頃と変わらず優しいのね」


黒髪のジュリエットが微笑んでいる。

そして、どこか確信めいた目をして私を見つめている。


「あの、今更昔の女が出てきて何の御用でしょうか? とっととお帰り頂けませんか」


そんな黒髪のジュリエットの笑顔を砕く栗毛のジュリエットの一言。

いや、笑顔は砕けていない。しかし、揺らぎのない仮面のような笑顔。

ぴしりという音が響いた気がした。


「あらあらあら、貴女は、過去の彼の事を何も知らない癖に」


「過去の? でしょ? 過去は過去。過ぎ去ったただの思い出。ただの思い出女は早々にご退場してはいかが?」


もうマヂ無理……。


俺の腕を取り合って笑顔のにらみ合いを始める二人。

笑顔のにらみ合い。矛盾ね。

怖いし柔らかいし怖い柔らかいこわいやわらかいこわやわ。


「それに、多少は知っています。貴女のこともね。元、ジュリエットさん」


「……! そう、ね。そうかもしれない。けれど、やっぱり貴女には無理よ。だって、彼を持つ手が震えてるし顔も赤い。積み重ねた時間の重みが違うのよ。出会ったばかりの男にコロリなんて、どうせ尻も軽いに決まっているわ」


ユメジュリエットが更に抱きついてくるやわらけー!


「ねえ、私、あなたにもう夢中なの。だから、軽い女に見えるかもしれない。でも、信じて」


潮時ジュリエットがちょんと袖をつまんだかと思うと、徐々に熱が入ってきたのか、どんどん身体を寄せてくるやわらかあつっ! 

っていうか、凄く上手に原作台詞差し込んでくるね! やっぱ天才は違うね!


え? なに?

やっぱり俺の筋書きではダメだったの?

あ! 今のこの状況はコメディ? ラブコメっぽい!

天才二人はこの筋書きに持っていきたかったのかやわらかい!


けどね、やわらかい二人は多少色恋も経験あるんでしょうがふにふに、ブサメン寄りフツメンのソレガシには経験もなくやわらかく、どうしていいか分からぬぷにぷに、弱るやわらかく。


視線を彷徨わせていると、苦無先輩が俯いて身体を震わせている。


笑ってんじゃねえよ! あんた!


俺の心の叫びが届いたのか、苦無先輩は震える手できがちゃん先輩の肩に手を置き、指示を出す。


ムチャブリエルこと、きがちゃん先輩が飛び込んでくる。

今この時ばかりはマヂ天使ぃ……!


「ロミオを取り合うジュリエットが二人!? 一体どーなっちゃうの!? 次回に続く!!!」


いや、マヂどーなっちゃうの? このあと。

あ、リアルの方で。二人ともはなしてくれないんですが。

お読みいただきありがとうございます。


少しでも楽しんでいただければ何よりです。


よければ、ブックマークや評価をお願いいたします。


今回の『ロミオとジュリエット』は、

作:シェイクスピア 訳:河合祥一郎 『新訳 ロミオとジュリエット』から一部引用させて頂きました。

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