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第十三幕 「かわいがりすぎて殺しちゃうわ」舞台裏

名前がややこしいので念のため。

微妙阿久人びみょう あくと 実は天才を超える超天才役者。自覚無。中学一年留年。

潮時信女しおどき のぶめ アクトを動画部に誘った同級生。

吝苦無やぶさか くない 動画部部長。趣味、情報収集。

吉賀王剣きが おうけん 動画部マスコットキャラクター。ほぼ二頭身。

広井結女ひろい ゆめ 演劇部エース。アクトに「お前が私の相手役? 役不足だ」って言った人

Side:ノブメ



バルコニーのシーン。

ロミオとジュリエットが語り合うシーンだ。

相変わらず、アクト先輩は、その人物が乗り移ったかのような演技をする。


私とはレベルが違い過ぎる。

でも、諦めない。

止まらない。

追い続ける。


もう、後悔しないために。


それに、今日のアクト先輩はなんだか楽しそうだった。

あの時みたいな生きてることそのものが苦しそうなお芝居じゃない。


吉賀先輩の力とか、吝先輩の言葉とか、色々あると思うけど、少しでも、私が力になれているのなら嬉しい。


ああ、嬉しい楽しい悲しい苦しい幸せ!


アクト先輩!!


途中、隣の部室から大声と拍手が起き、一瞬、現実に戻ってしまう。

あ、マズ……


「ジュリエットの家の方もまだ眠れずに起きていらっしゃるんだね。随分と盛り上がっていてしあわせそうだ。けれど、僕の方が幸せだ。だって、起きていながら夢を見ているかのような幸せを今感じているもの」


アドリブ!


すごい! まるで最初からそういうものだったかのように流れるように言葉を繋ぐアクト先輩。

それに……なんて嬉しい言葉なんだろう。


それがロミオがジュリエットに向けた言葉だとしても、今、私の演じるジュリエットに、アクト先輩が演じるロミオがくれた素敵な言葉なのだ!


「私もよ! でも、困ったわ。あっちの盛り上がりを聞いて、私、今、あっちの盛り上がり以上に舞い上がっていることに気付いてしまったもの」


本当に嬉しい! 嬉しい! 嬉しい!


しあわせな時間。ずっと続いてほしい。

ねえ、アクト先輩。


アクト先輩


アクト先輩


アクト先輩アクト先輩アクト先輩アクト先輩アクト先輩アクト先輩アクト先輩アクト先輩アクト先輩アクト先輩アクト先輩アクト先輩!


けれど、幸せな時間は終わりを告げる。


私とアクト先輩の幸せな時間は。


「ジュリエット、乳母がよんでるよ! ジュリエット、悪魔のような返事で答えてね☆」


吉賀先輩が何か言っている。乳母が呼んでる? 邪魔するの? 私とアクト先輩の時間を?


「私の幸せを邪魔する馬鹿は、消す」


絶対に許さない。


「で、では、ジュリエット、さようなら」


アクト先輩が行ってしまう。

これは演技。でも、苦しい辛い。

あの時、追いかけることの出来なかった背中が、こんなに近いのに掴んではいけない背中。

演技も心もダメダメな今の私では追いつけない背中。

でも、諦めない。

何があったって踏み越えてみせる。


だから、


「愛しているから飛んでいってほしくないの」


「君の小鳥になりたい」


アクト先輩が? 私の小鳥に? ずっと私の傍に?


「そうしてあげたい。でも、」


想いが溢れてきちゃうから。


「かわいがりすぎて殺しちゃうわ」


今はまだ、隠す。

いつかきっとちゃんと伝えることが出来る日まで。


ロミオがバルコニーを去る。

私は、今日はただ見送るだけ。


その瞬間。


ばん! という大きな音。

扉が開かれた。


吝先輩たちの更に奥。

動画部の部室の入り口にいたのは、あの(ひと)だった。


「私が、ジュリエットだったはずなのに!」


は? 何言ってるの?


お読みいただきありがとうございます。


少しでも楽しんでいただければ何よりです。


よければ、ブックマークや評価をお願いいたします。


今回の『ロミオとジュリエット』は、

作:シェイクスピア 訳:河合祥一郎 『新訳 ロミオとジュリエット』から一部引用させて頂きました。

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