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第十幕 「スタート!」

一話短め、間隔広めの読みやすさ重視の作品になっておりますので、苦手な方はブラバ推奨です。

超ラブラブな二人というムチャブリエルの無茶ぶりに応えながらの芝居。

正直に言おう、潮時さんみたいな美少女とそんな芝居が出来るのは嬉しい!


とはいえ、雑念交じりでやれば失礼。

大丈夫、全力で演じれば、面白くなるんだ。

俺の下手な演技でも、いや、下手だからこそ、盛り上がる!

凄い話だ。

だから、やってやる! 全力で!

俺は、目を閉じ、両手を合わせ、三度深呼吸をする。


下手なりに考えたルーティーンだ。


「カウントダウン! じゅうー!!」


はーーー


「……きゅうー!」


すーーー


吐いて吸う、それだけだ。


「はーち! なーな!」



はぁーーーーーーーー



「ろーく! ごー!」



すぅーーーーーーーー



この世界の空気を、微妙阿久人の身体にある空気を吐き出し




「よーん! さーん!」




はぁーーーーーーーーーーーーーー




「にー! いーち!」





すぅ






別の世界の空気を身体に入れ、ロミオの身体に、僕は、空気を入れる。




「スタート!」


ジュリエットの顔が、こちらを見た潮時さんの瞳が見開かれ揺らぐ。

すごいな、本当に一目ぼれの相手にいきなり出会ったみたいな演技だ。

頑張ろう。俺の台詞から。


「卑しいわが手が、もしもこの聖なる御堂を汚すなら、どうかやさしいおとがめを―」


全力のイケボ(のつもり)、と、全力のイケメン(のつもり)スマイルを潮時ジュリエットに向け、台詞を続ける。


「………」


……ああ、やっちまった。

動きが止まってる。

カメラ側の先輩方もどよめいているのが分かる。

ああ、俺はどうしてこう相手役を困らせることしか出来ないんだ。


「あ! あ、あにょ! あ、あ、あの……」


顔を真っ赤にして口ごもる。

……潮時さん、なんて凄いアドリブでつないでくれるんだ!!!!

一生懸命喋ろうとして噛んだ演技をすることで、さっきの止まってしまった時間も見惚れていましたみたいな雰囲気に出来るし、それによりちょっと面白い上にかわいいジュリエットが生まれている!

この子天才かよ!


そうか俺はうぬぼれていたんだ。

小学校から子ども劇団に所属し、あの天才達に揉まれたことで。


俺は、何も気を遣う必要はなかったんだ。

この子の一目ぼれ演技は完璧だ。

あとは、フツメンである俺が全力でイケメンを演じれば、最高のコメディが出来上がるんだ!


僕は、ジュリエットの手をとってとびっきりの愛情をこめて手にキスをする。

振りです。振り。流石に、フツメン俺、訴えられたら負けます、ひゃい。


「あ、あ、あ……」


潮時さんが震えている。

恐怖か、素の恐怖っぽい演技なのか? 演技なのか? 素じゃないよね。

でも、顔真っ赤だからラブラブで嬉しい演技かもしれない。

後者であったほうが心のダメージは少ない。

いや、まさか! どっちともとれるダブルミーニングな芝居では!?

天才かよー!!!


もう何も躊躇う必要はないな。

全力でジュリエットに夢中な自称ロミオを演じるのみ!!!


僕は甘い言葉を並べ、微笑み、抱きしめる(触れるか触れないかくらいの腕の回し方で)。


どうだ、フツメン俺が演じるロミオは滑稽だろう!

俺はなんだか楽しくなってきた。

演技をしててこんな気分は初めてだ。


このシーンのクライマックス、フツメンの見せ場だ!


「動かないで。祈りの(しるし)を僕が受け取るあいだ」


そして、僕は彼女の唇にキスを―。


振りね! 振り! フツメンのキスシーンなんて映像作品にしてもビミョーでしょうよ!

ドラマのフツメンとか言われてる役者さんも、相対的にフツメンに見えるだけであって、基本顔のパーツ整ってるから!

っていうか、設定はどこにでもいるような高校生のはずなのに、どこにもいないような唯一無二のイケメン俳優使うんじゃないよ! 全国のフツメン男子をブサメンに落としたいのかテレビ局!


閑話休題。

というわけで、キス(の振り)をして、そっと離れる俺。

どうよ、この道化っぷり。

と、自嘲気味に笑っていると、目の前の潮時ジュリエットさんが真っ赤になって、


「あにょ、そにょ……うにゃ」


と、謎のうわごとを呟いてる。

ナニコレ、カワイイ。


でも、台本だとこのあと、ジュリエットからキスをし返すシーンなんですが……。

待つ俺、うにゃうにゃ言ってる潮時さん。


「や、やっぱ、無理でしゅうううううううう~!」


と叫びながら目をぐるぐるさせて崩れ落ちる潮時ジュリエット。


「じゅ、ジュリエット! じゅりえっとぉおおおおおおお!」


抱えながら叫ぶ俺。

……すげえよ、この子。

素を交えてキスを嫌がるために倒れたようにも、ジュリエットとして照れて崩れ落ちるようにも捉えられるダブルミーニング演技じゃないですか……!

て、て、天才かよーーーーーーーー!!!


「さ、さーて! キスでぶっ倒れたジュリエットはこの後、家の者に運ばれ看病されました。そして、敵だとバレたロミオは一度逃げ出します! けれど、どうしても会いたいストーカーロミオは夜中にキャピュレット家に忍び込むのでした。シーン2に続く~☆」


流石、きがちゃん先輩。ナイスアドリブ。

いやー! なんて素晴らしい面々なんだ! 

へたくその俺はただただあの二人を信頼して全力で演じるのみさ!

よーし! シーン2もがんばるぞう!


「え……アクト、マジ……?」

「彼は……予想以上だね」

「おいおいおい、アイツどうなってんのよ?」

「すごぃ……」


四人の声が聞こえるけど気にしない☆

っていうか、最後本願寺先輩の声じゃない?

思わず聞こえるくらいの大きな声が出るなんて。

いやー、俺の役不足っぷりに驚いたようですね!

皆さんの期待に応えますよ!


「うみゃああ~……ろ、ロミオしゃま~、……すてき~」


潮時さん、まだジュリエットを演じ続けているだなんて……恐ろしい子!


お読みいただきありがとうございます。


恋愛要素っぽいのが見えたところで今日はここまでで……汗


少しでも楽しんでいただければ何よりです。


よければ、ブックマークや評価をお願いいたします。



今回の『ロミオとジュリエット』は、

作:シェイクスピア 訳:河合祥一郎 『新訳 ロミオとジュリエット』の台詞を引用させて頂きました。

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