25:従順で有能で役に立つ従者がいなきゃいけない
『メイちゃん2号』はいらだっていた。
ゲームをインストールした。そしてキャラクターを作成する。男受けする、かわいらしい顔の種族の女性キャラだ。キャラの名前の横には新規ユーザーである初心者マークがついている。すると、『教えたがり』の男プレイヤーをたくさん釣ることはとてもたやすく、面白いほどに簡単だった。釣り堀の魚より釣りやすい。
どうでもいいような男は簡単に釣れる。でも、本当に手駒に欲しい『役に立つ』男はやはり警戒心が強い。『役に立つ』駒とは、メイちゃん2号をゲーム内で優位に立てるようにしてくれる存在だ。戦闘がうまく、人脈があって、リーダーシップがある人間。
──そんな男を手に入れれば、ネットゲームは勝ちと言ってもいい。
メイちゃん2号の『ゲーム』は『女として、莫迦な男をどれだけ落とせるか』であり、実際、かわいらしい自分の操作キャラクターもそのキャラが行う戦闘も、ほかの人間とパーティーをくんで行う戦いも、とても好きだというわけではない。単純に『暇つぶし』であり、『復讐』のためにやっていることだ。今のメイちゃん2号に時間は腐るほどあるし、幸い、ゲーム内で実力者とおぼしき人が多いギルドにもお近づきになれた。その中でも複数人数に慕われているプレイヤーが優しくしてくれるようになり、自然とメイちゃん2号の立ち位置も安定してきた。最初は怪しげな人間だと警戒もあらわにされていた。まぁ仕方のないことだ。2号自身、自分のような『女』にすぐに心を許す男は愚かだと感じる。
だから、まぁ最初は冷たくされても仕方ないのだ。多少は。多少どころでない態度をとってくる子もいるが、聞けばまだ学生のようなので仕方がない。最近はギルドマスターがメイちゃんにやさしくしてくれるおかげで、周囲も軟化した。ゲームをしやすくなった。いいことだ。
──こんなことをしたかったんだっけ?
ふいに襲ってくる感覚を、メイちゃん2号は振り払う。正気に戻っては、だめだ。自分はメイちゃんだ。かわいくて、わがままで、自分だけがかわいくて仕方のないお姫様だ。
そう、メイちゃんは自由で気ままで、他人を踏みつけにしても気づかない、そんな女の子であるべきだ。
だって、お姫様なんだから。
でもお姫様には従順で有能で役に立つ従者がいなきゃいけない。
誰でもいいわけじゃない。メイちゃん2号のことを許容して甘やかし、ほしいアイテムや装備を全部とってくれて、メイちゃんが望めばいつでもログインし、メイちゃんとずっといてくれる相手。そんな人がいないといけない。
メイちゃん2号は欲していた。
自分だけのための王子様を。




