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天 てん  作者: 雨世界
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7 三つ森神社

 三つ森神社


 花森町の隣の町である三つ森の街には、大きな三つ森神社という神社があった。(晴も名前だけはずっと前から知っているくらいの有名な神社だ)

 ……三つ森神社。

 その三つ森神社が、雨野天の実家らしい。

 三つ森神社の家系は代々受け継がれてきた伝統のある家系で、その苗字は神社と同じ名前の『三つ森』と言った。

 でも、雨野天の苗字は雨野だ。三つ森じゃない。(それに天は引越しをして、花森町にやってきた)

 なぜかというと、それは天の両親が離婚をして、天は離婚した両親のお父さんのほうの名前、(つまり、それが雨野なのだけど)を受け継いで、三つ森天から、雨野天になったのだった。

 それは今年の初めごろくらいの話で、有名な三つ森神社の話だから、公然と人々の話題になることはなかったけど、(いろいろと大人の事情があるらしい。祭りのときとか、新年のときとか、あるいは、三つ森の神社をこれからどうしていくのか、とかを三つ森神社の家の人たちだけではなくて、三つ森町の実力のある大人の人たちで話し合ったりしているようだ)裏ではもちろん、よく話されてることになり、それが学校まで伝わって、噂になっていたようだった。


「そのことって、もちろん、天野さんも知ってることなんだよな?」晴は言う。

「そりゃ、知っているでしょ? 自分の噂のことなんだからさ」幸は言う。

「なんでそんなこと、噂するんだよ。三つ森神社のこととか、知らないけどさ、天野さん本人とは関係ない話だろ?」

「もともと、天野さんは三つ森をついで三つ森神社の巫女さんになる予定だったんだよ。それを放棄するっていうか、ならないってことで、お父さんのほうについて行ったってことが、すごく問題になったってことらしいよ」幸は言う。

「雨野さんが三つ森の巫女になっていれば、それで問題はなかったってことなのかよ?」ちょっとだけ苛立った声で、晴は言う。

「そんなこと、私にもわからないよ。ただ噂ではそうだって、だけで……」幸は言う。


「そうだよ」

 そんな声が聞こえた。

 晴と幸が、え? と思って、声のしたほうを見ると、そこにはちょっと悲しそうな顔をした雨野天が立っていた。

「……雨野さん」驚いた声で、幸が言った。

 天はじっと、晴を見ていた。

 晴も、じっと、そんな自分を見ている天の顔をじっと見ていた。(天は泣きそうな顔をしていた)

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