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カレーなる異世界ライフ!!  作者: 浅見朝志


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7/8

掃討作戦開始!どんな困難もカレーに乗り越えてみせるよ!

自然と目が覚める。

頭はスッキリとしていたが、部屋の窓から外を見るとまだ暗い。

お風呂に長く使って疲れを取ったからかな、普段は布団から出るのを渋るところだけど、今日は朝の準備が辛くなかった。

午前5時に起きて支度を整え朝ごはんを軽く食べると、6時には宿の外に既に待っていた馬車へと乗り込んだ。

厨房に着くと6時半の10分前。

もうちらほらと同じ食糧班の配膳班に所属している人たちは来ており、その中でヒヅキさんとレミューさんも話をしているようだった。

2人はこちらに気付くと近くまで歩いてきてくれた。

「おはようソフィアさん、ルーリちゃん」

「おはようございます、ヒヅキさん、レミューさんも」

「おはよう。今日も1日華麗に作業をこなしてみせるわ!」

2人とも調子は変わらず、今日も昨日と同じようなコンディションで作業ができそうだ。

軽く話を交わしていると、あっという間に6時半となった。

厨房の扉を開いてレイマーさんが入ってくる。

「みなさん、おはようございます」

おはようございます! と食糧班全員から朝の挨拶が返る。

「人数の確認ですが、配膳班が4人と調理班が4人、全員そろっているようですね」

計8人しかいないからか、特に点呼を取ることもなく目視の確認で十分なようだ。

「それでは本日朝の9時より、作戦が決行されます。食事はその1時間前、8時からです。各自がそれぞれの役割をしっかり果たして、美味しいご飯をたっぷりと食べてもらいましょう! 今日から2日間、よろしくお願いいたします!」

「「「お願いします‼」」」

そうして掃討班が作戦に入る2時間半前に、わたしたちの仕事が始まった。


「全部で20個あることを確認してね」

「了解、えーっと1つ、2つ、3つ……」

「コメはそこの恒温器に食事回分で分けて入っているから」

「うんわかった。誰か運ぶの手伝ってー!」

「入り口まで運ぶ台車はこれだったよね? 1度で2個ずつしか運べないけど」

「そこまで時間はシビアじゃないから大丈夫だよ、すぐ側なんだから最悪手でも運べなくはないし」

配膳班に対して調理班が作ったカレーの引継ぎを行う傍ら、カレーの搬送の準備が着々と進む。

拠点は向かいにあるので、すぐに持って行けそうな感じもするのだが、このカレー鍋1個当たりがかなり重いので運搬班に運ぶのを手伝ってもらう手はずになっている。

午前7時、運搬班へとカレーを託し終えた配膳班は次に拠点で配膳の準備を整える作業がある。

わたしのこの時間の役割は引継ぎを終えると以上となり、後は次のカレーの調理まで休みつつ待機だ。

「それじゃあ後はよろしくお願いしますね」

「ええ、任せて! 1番美味しい状態のカレーを食べてもらえるように全力で準備をするから!」

彼女たちは気合いも充分に拠点へと向かっていった。

その姿にわたしたち調理班の心もなんだか奮い立たせられるようで。

「これから長丁場で忙しいだろうけど、味を落とさないように1つ1つ丁寧に作業しなきゃね!」

「当然よ。でも私に関しては心配してもらわなくても大丈夫! いつでもどこでも完璧な調理をするもの!」

「……がんばる‼」

「なんだか心の底からやる気が漲るね……! もっともっと美味しいカレーにしてやろう!」

配膳班が後にした厨房は、人数が減って淋し気になるかと思っていたけど予想外に熱い雰囲気に包まれた。

今やわたしたちの空気の間にあるものは、準備に準備を重ねた運動会や文化祭などの当日の熱気のようなものだ。

「なんだかもう、私は働きたいわ! 下準備か何か先にできるものはないかしら」

レミューさんに至ってはその熱に冒されて6時間近くフライングのスタートダッシュを切りそうになっていた。

「いやいや、流石に落ち着こう⁉ 今から張り切り過ぎても後半でバテちゃうよ?」

「そうだよレミュー。美味しい料理を作るためにも、作業時のために体力は備えておくべきだ」

わたしとヒヅキさんから突っ込まれて、レミューさんは「うぅ」とちょっとしょぼくれた様子になってしまった。

そんなレミューさんの背中をさすって、ルーリは「大丈夫。みんな気持ちはいっしょ」と慰めている。

「ありがとう、ルーリちゃん……」

とりあえずわたしたちは厨房近くに用意されている休憩室に行って仮眠を取ることにした。

朝が早かったから、よく眠れてしまいそうだ。

布団に入ると意識は簡単に溶けていった。


布団から出て時間を確かめると11時だった。

作業の開始まではあと1時間あったので、ちょっと外に出てみると町は大分騒がしくなっている。

向かいの拠点からは常に人が出たり入ったりで慌ただしく大勢の人が行き交っており、改めて討伐作戦が始まったんだと実感した。

「11時ということは、食事の時間だね。みんな美味しく食べてくれていればいいけど」

「きっと大丈夫。ほら、あそこ」

ルーリの指が差す方向を見ると、冒険者と思しき人たちが拠点に入っていくところだった。

「聞いたか? 今年の討伐作戦の補給食がめちゃくちゃ美味いらしいぞ! さっき1班のやつらが出動する前に聞いたんだよ」

「へぇ、去年までは普通に腹に溜まるメシだったのにな。今年から魔法効果が付与されるようになったていうのは説明で聴いたけど、味もいいのか」

「あ! それ俺は噂で聞いたんだけど、元々は隣町の食堂で提供されてるご飯なんだって。知り合いでわざわざ食べに行ったやつがいたけど、ホントに美味いって言ってたぜ」

「あー、楽しみだなぁー」

ワイワイと、とても食事を楽しみそうにしている様子だ。

「……」

なんだか胸の内側が熱くなる。

食堂で初めてカレーを食べてもらって良い感想を聞いた時も感じたような、達成感と嬉しさが混ざったような気持ちだ。

「ほら、評判は上々。ソフィアのカレーは美味しいから、私はまったく心配してなかった」

ふふん、とちょっと自慢気にルーリが言う。

ルーリはいつもわたしへの信頼とか期待が強い気がするから、いつかその思いを裏切ってしまうんじゃないかと少し不安になるなぁ。

ただ、そうやって常に信じてくれることは純粋に嬉しい。

「うん、ありがと。ルーリはいつもわたしを褒めてくれるよね」

「ううん、私が今言ったのはただの事実。私だけじゃなく、みんながソフィアの料理を認めている。この評判はそういうこと。いずれソフィアの料理はこの地域の名物料理となるに違いない」

「そ、そうかな……そこまでは分からないけど、でもこうやって実際に喜んでもらえるところとか、楽しみにされているところを見るとすごくやる気が出てくるね! 次からもがんばろうね、ルーリ‼」

気合いがより一層充填されて、午後からの作業への熱意が高まる。

「よし! レミューさん達もそろそろ起こしてこようか?」

「うん。気持ちよさそうに2人して寝てたから起こさないで来たけど、流石にそろそろ布団から出た方がいいと思う」

そうして仮眠室に戻り2人を起こした後、準備を整えて厨房へ向かう。

「さーて、今回も最高に美味しいカレーにするわよ!」

「寝起き早々テンションが高いな」

レミューさんは起きた後かなりテキパキと身なりを整えていたが、反対にヒヅキさんはぼーっとしていた。

わたしもどちらかというと普段はヒヅキさんと同じく朝が弱いので、レミューさんのように起きてすぐに色々と行動に移せる人が羨ましいなぁ。

「だめよ! ヒヅキは一旦顔でも洗ってくるべきね。ヒヅキがそんなことでは私の精錬された調理の腕が振るえないわ」

「なんでだよ、私関係ないじゃん」

「だってあなたは私のアシスタントじゃない」

「いつからだよ‼」




「よし! じゃあ2回目の調理を始めるよ~‼」

食材の搬入が済んで、12時に調理が始まる。

1度目の調理は昨日経験済みだからか、野菜の下処理も鍋の用意も調理工程もどれもスムーズに進行した。

1400食を作り終え後片付け、その後検食。

問題ないことを確認した後に鍋を冷却し、配膳B班に1400食の引継ぎを行って作業は終了する。

「じゃあまた休憩だね。今度は夜0時だからなるべく寝ておかないと、その次の回とかも辛そうだもんね」

「そうだね、ご飯を食べたらもう部屋を暗くしちゃって、ちゃんと寝られる環境にしておくことにしよう」

「えぇ~、つまらないわ。せっかく泊りがけの作業だし少しくらいお話しをしたっていいじゃない」

「遊びじゃないんだぞレミュー。きちんと作業に責任をもって取り組まないと」

「むぅ~」

なんだかレミューさんはちょこちょことやりたがっていることを抑えられているようで、ちょっと不憫な気がする。

「わ、わたしも少しくらいならお話しするのもいいかな? って思うよー。だからご飯を食べて30分くらい、眠くなるまでお話ししよう?」

そう言うと、レミューさんはこちらを向いて目をウルウルさせる。

「ソフィアさん! あなたならそう言ってくれると思ったわ‼ いっぱいお話ししましょう? もうヒヅキなんか放っておいて!」

「コラ! なんかってなんだよ」

少し賑やかに2回目の調理後はお話しして、その後は次の調理に備えて早めに寝た。

朝の11時まで仮眠をしていて、今また布団に入ったのが17時だからあまり眠くない。

1時間、2時間くらいじっとしているとようやく意識を手放せた。


そうして早くも午前0時。

「なんだかあまり眠れなかったな……」

「うぅ、私もよ……」

わたしと同じであまり寝つきが良くなかったらしい。

活動時間が急に不規則になったからこれは仕方がないけど、調理に影響しなければいいな。

「ルーリは大丈夫?」

「私は大体いつでもどこでも寝られるから大丈夫」

確かにさっき布団に入った後もすぐに寝息が聞こえてきたっけ。

羨ましい能力だなぁ。

先程目覚しになるかと思って外の風にあたりにいったのだが、暗い夜の雰囲気にむしろ気が滅入ってしまった。

それから調理を開始したが、少しミスが目立った。

わたしの方だと野菜の下処理中に既に皮の剥かれたジャガイモを皮むきの魔具にかけてしまったりした。

ヒヅキさんも少しお肉を焦がしてしまったようで、レミューさんに至ってはなぜか途中からジャガイモをいくつかみじん切りにしていた。

「わ、私としたことが……不覚をとるなんて……」

「よくジャガイモをみじん切りしようと思った」

ルーリは何故か感心している。

でも眠い時に単純作業を繰り返していると、全く意識がないのに手だけ勝手に動いていることってあるよね。

ちなみにみじん切りにしたジャガイモは蒸かしてポテトサラダを作ってわたしたちで食べた。

「とりあえず、無事に作り切れたのは良かったね……」

「うん、トラブルは多かったけど品質は落ちてないからよかったよ」

再び配膳班へと引き継いで休憩へ。


そして今度は前回に中々寝れなかった反動で寝すぎてしまい、起きたのは12時ギリギリ。

ルーリに思いっきり揺すられて起こされた。

ヒヅキさんとレミューさんも同じようにして布団から出して、慌てて準備をして厨房へ。

搬入自体はルーリが立ち会ってくれていたようですでに終わっており、急いで調理に取り掛かる。

「うぅ~~ごめんねルーリ、ありがとう!」

「気にしてない。みんな疲れてるから仕方ない」

「本当に申し訳ない……」

「またしても不覚だわ……」

最後の最後はルーリのしっかりとした睡眠に3人とも救われた。

その後の調理は慌ててミスが増えるかと思いきや、ぐっすりと睡眠を取れていたからという理由と、

これ以上ミスを重ねるわけにはいかないという2つの理由で確実に進めることができた。

「ふぅ、恥の上塗りをせずに済んでよかったわ……」

「そうだな、焦って失敗せずによかった」

トラブルが続いたものの、なんとか乗り切ることができた。

ちなみに調理作業はこれで終わりだ。

終わってしまうとなんだか拍子抜けな感じがする。

でも、わたしたちはやるべきことをしっかりと果たせたんだなぁ。

「みんな! お疲れさまでした! これでわたしたちの仕事は終わりだね! 何とか最後までやり切ることができてよかったよ……」

「お疲れさまでした。私としては最後の最後まで見苦しいところを見せてしまって、なんだか消化不良な感じだわ……」

「お疲れ。自分の役割を果たせてホッとしたよ。レミューも何事もなく作業を終えられたんだから、そんな時くらい素直に喜べばいいじゃないか」

「そう。何事もなかったことを喜ぶべき。私たちの料理でみんなを助けられているはずだから、私たちが無事に作業を完了できたことは作戦遂行に大きく貢献ができている」

みんなそれぞれの感想を抱いてはいるようだが、為すべきことは全て行えた。

わたしとしてもこの作戦の要にバフ付きカレーという能力が前提となっているという責任感があっただけに、作業を終えて肩の力がドッと抜けた感じがする。

あとは不測の事態に備えて、作戦終了までの間仮眠室で待機しておけばいいだけだ。

わたしたちは仮眠室に戻って、仕事が終わったことによる高揚感でちょっとはしゃぎはしたものの、やはり長丁場で疲れていたからか気付いたら寝てしまっていた。

次起きた時は作戦が終わった時だろうなんてみんな心の内では思っていたから、荒々しいドアをノックする音に起こされた時には何事かとお互い顔を見合わせた。




「拠点が……魔獣に襲われた……?」

扉を開けて目の前にいたのはレイマーさんとダレスさんだった。

レイマーさんはわたしが扉を開けるなり、衝撃の事実を伝える。

「ええ。ほんの30分前の出来事です。正確には数体のマラバリが町へ降りてきたため、手の空いている兵士と冒険者で拠点へと誘い込んで駆除しました」

拠点にしている施設は山に近い。

掃討班は包囲網をひと時も崩さないように3班に分かれて一定の時間ごとに入れ替わり補給をしつつ掃討を行っている。

それも時間を掛けるごとに網を小さく、町から遠くしているのだから拠点に魔獣が侵入してくることはないはずだ。

「一体なんで町に?」

「掃討班の見落としだと思います。どこかに隠れていたのか地図に欠陥があったのか、原因は分かりませんが……」

「ええと、もう退治はできたんですよね? 危険はもうないんですよね?」

「はい、今のところは」

ホッと胸をなでおろす。

とりあえず身の危険はないようだ。

「とにかくこっちも何事もないようでよかったよ」

ダレスさんはわたしたちが危険な目に遭っていないかを確認しに来ただけのようだ。

「ダレスさんもご無事でよかったです。作戦室は無事だったんですね」

「ああ、騒がしくなったのは下の階の方だったからね。ただ下の情報が断片的にしか入ってこないから、どれくらいの規模で騒ぎが起こっているのか分からなくて中々に不安だったよ」

コホン、とレミューさんが会話を止める。

「あの、そうするとレイマーさんは一体どのようなご用件で? 随分急いでいらっしゃったみたいですが……」

ああ、確かに。

緊張が解けてしまってか、今の状況を忘れていた。

レイマーさん何か緊急の用件なのだろうか?

「実は……」


「えぇ⁉ 鍋がひっくり返った⁉」

「はい、1回分が……」

なんでもその時間、ちょうど食事の時間が迫っていたこともあって配膳班はカレーの準備をしていたそうだ。

そこへ追い込んだ魔獣の1匹が食事を行うホールへ壁を突き破って入ってきて、そして突発的にそこは戦場になってしまい、配膳班としても鍋のために命までは懸けられないのでカレーを置いて避難した。

結果、戦闘が終了したころにはカレーの鍋は見事に逆さまになっていたらしい。

「配膳班に怪我人は⁉」

「幸いなことに全員無事です。ちょうど食事の時間よりも前からホールにいた兵士や冒険者が何人かいて、その人たちが魔獣を抑え込んでいる間に避難できたようです」

「そうですか、よかったぁ……」

カレーが無駄になってしまったのはもったいないし残念だけれど、誰1人怪我をしなかったというのは不幸中の幸いというやつだろう。

「じゃあ用件というのは、そのひっくり返った1回分……つまり350食を今から作り直して欲しいとか、そういうことでしょうか?」

ヒヅキさんはなるべく早く状況を知りたいのか、ズバリ本題はこれか? と切り込んでいく。

「ええ、まさにその通りです。大変申し訳ないのですが、みなさんにはもうひと働きしていただきたいのです」

急いでいたわけは分かった。

壁にかけてある時計を見るともうすぐ0時だ。

「あと2時間しかないですね……」

みんなの表情に苦しそうなものが混ざる。

「作る量が減るとは言え、作る時間がその分減るわけではない」

ルーリの言う通りで、大量の食事を作るにあたって下準備は食べる人分増えるものの、熱を入れる時間や味付けする手間などは変わらない。

1400食が4分の1の350食という量に減ったからといって、作業時間も3時間から1時間未満に減るようなことはない。

「なんとか……なりませんかね……?」

「うーん」

みんな一様に考え込む。

カチコチと時計の針が動く音が聞こえた。

時間が止まったかのようなこの仮眠室にも、刻一刻と最終午前2時の食事回が迫ってきている。

……ダメだ。

無理って意味じゃなくて、このままじゃダメだ。

ただいたずらに時間だけ過ぎてしまう!

「とにかく、みんな準備を始めよう! 詳細は厨房で打ち合わせよう!」

とりあえずみんな頷いてくれる。

レイマーさん達には出てもらって、わたしたちは着替えて厨房へと向かった。


厨房の片隅に椅子を6つ、円を描くように並べてみんなで座っている。

「今は0時15分だ。あと15分以内で、まず作れるか作れないかの判断が欲しい。それを作戦班へと伝えて、代わりの補給物資を調達するか作戦を変更するかを決定しなくてはならない」

口火を切ったのはレイマーさんだ。最初の議題は「作れるか作れないか」だった。

「食材の確認が必要。みんなで手分けして数えるのがいい」

ルーリが即座に提案を出してくれる。

「そうだね、そこが一番肝心だと思う。今から食材を調達するのは難しいし、何が何人分あるかを確認しよう」

そうしてわたしはスパイスとオニオンソテー、ルーリとレミューさんが野菜、ヒヅキさんが肉をそれぞれ確認しに行き、みんな10分とかからずに戻ってくる。

「お肉は大丈夫そう」

「野菜も充分にあったわ」

メインとなる食材は問題なかったようだが、しかし。

「……スパイスが一部足りないです」

レイマーさんは予想をしていたのか、やはりという顔になっていた。

「スパイスについては集められるだけ集めたのですが、カレーという料理のように多量のスパイスを1度に使う料理は他にありませんでしたから、供給量に限りがあり要望の分ギリギリしか確保できなかったんです」

「そうだったんですか……ちなみに足りないスパイスはクミンとコリアンダーです。2つは攻撃力と防御力に関わるバフを付与するのに不可欠ですし、カレー自体にもなくてはならないスパイスなので、正直これらの量が圧倒的に少ないと料理できないです……」

特にクミンなくしてカレーの香りは立たない。

無意識だったが、カレーのバフ研究をしていた時もクミンを外したパターンだけは検証していなかった。

わたしの中でクミンの入っていないカレーはあり得なかったからだと思う。

だから多分、クミンを抜いたカレーではバフがかからない気がしている。

ただの勘だけど。

「食材はあるから、他の料理はできるかもしれないけどね……」

ヒヅキさんの言葉にレイマーさんは頷く。

「確かにそうですね、食材はあるわけですしご飯だけなら提供はできそうですね。野菜炒めとか、煮込みとか……」

「ただ、それだとバフが付かない」

ルーリがズバリなことを言う。

「はい、そうですよね。なので作戦を変更する必要は出てくると思います。包囲戦を敷いている前班の戦線を引き継ぐ形ではなく、援護しつつ一緒に撤退をしてくる方向へと」

「つまり、掃討をし切らないということ?」

レイマーさんは神妙そうに首肯した。

「ええ。バフを付与しない状態での深追いは危険です。魔獣も必死になって抵抗するはずですからね。被害を大きくしないためにも、ここは退くべきです」

スラスラと今後の対応を考えて口にしている言葉の明瞭さとは裏腹に、その顔は曇っていた。

他のみんなも表情は一律暗い。

だってそれもそのはず。

今回途中で掃討班を撤退させて被害を減らす代わりに、これから来る冬に掃討をし損ねた魔獣たちが町や村に降りてくる可能性が上がってしまうから。

決してわたしとしても他人事ではなかった。

できることならどうにかしたいけれど、この町でわたしにツテなどどこにもない。

沈黙の中、ダレスさんは重たくなり始めていた空気を和らげるためかわたしに話を振る。

「あ~あ。こんな時にデッツのような商人がいてくれればいいんだがねぇ。あいつなら所も時間もかまわず売りに来てくれそうなものだが」

「確かに、そうですね。アグレッシブな人ですし」

ザイール町の人たちで、しかもスパイスに興味がない人なら知らない名前だろう。

突然出てきた知らない名前に、レイマーさんたちは一体誰のことだろうと首を傾げる。

「デッツさんっていうのは、私の町でスパイスを専門に取り扱っている商人なんです。この人がかなり行動力がある人で、ひと月に色んな町にスパイスの調達をしに行くんですよ。地域もまたぐから扱うスパイスの種類も豊富で、珍しいものも結構置いているんです。確かこの町にも定期的に立ち寄ってい……あっ」

あるじゃないか、ツテ。

「ダレスさん、今日って何日でしたっけ?」

「え?今日は9日……いやもう日付が変わって10日だな、ってもしかして……」

「……あー」

ダレスさんもルーリも分かったらしい。

「デッツさん、今この町にいるんじゃないですかね?」




「よし!野菜の皮は全部剥けたから、わたしは鍋の準備の方に行ってくるね!」

「ええ! あとは任せて!」

「私も皮むき終わった。肉の調理をしてくる」

「了解。よろしく頼むよ」

後の野菜のカットはレミューさんにいったん任せて、鍋に水を汲んで熱を入れ、オニオンソテーを取りに行く。

ルーリは肉の調理を担当することになっているので隣の肉の下処理室へ向かう。

0時30分現在、厨房は通算5回目の調理で騒がしくなり始めた。

今この場で作業を行っているのはいつも通り4人。

レイマーさんは作戦室へと報告をしに帰っていった。

内容は「カレーは作れるかもしれません」という少し曖昧なものだが、こちらとしては完全に作るつもりで作業をしている。

カレーの基となるスパイスの不足に関しては、デッツさんが今このザイール町にいるかどうかが解決の鍵だ。

ダレスさんはデッツさんが普段泊まっている宿に心当たりがあるとのことで、打ち合わせが終わるなりダッシュで厨房を後にした。

わたしたちはきっとスパイスが届くと信じて調理を先んじて勧めている最中である。

残り1時間半、作業を急ピッチで行う必要があるため、それぞれの担当割りは柔軟に変えられている。

まず、野菜の下準備に関しては前と同じくレミューさんとヒヅキさんに行ってもらっているが、その後の肉の調理はルーリが担当することになった。

わたしは鍋の準備を一人で行い、その後はルーリが担当していたルウの調理をする。

スパイスがこない限り野菜を炒める際の味付けに入れないので、その作業が空いた分ルーリの担当を巻き取りルーリもまた空いた作業を肉の調理に充てた。

わたしは元々ルーリがやってくれていた、鍋に水を入れる作業をひたすら行っている。

ルーリのような腕力のない私は、計量器に水を小分けして鍋に足していく。

「う~、腕が怠い……」

わたしがオニオンソテーを冷凍室から取ってくる間に、大体ルーリが全て用意してくれていたのでわたしは全く苦労していなかった工程だったが、いざ自分がやるとなるとその大変さがよく分かる。

なんとか用意をし終えて熱を入れる。

沸騰するまでの間にルウの調理準備をして、鍋が良い具合になったタイミングでオニオンソテーを投入。

「ふぅ、共同作業の大切さが身に染みるなぁ……」

額に浮かんだ汗を拭ってしみじみと、わたしは友人に恵まれたことを幸運に思った。


そして午前1時15分。

ほとんど全ての工程が完了していたが、まだスパイスは届いていなかった。

「そろそろ来てくれないと厳しいね……」

「煮込みに時間を掛けないと味が染み込み辛い」

ちなみに既に野菜は炒め終わっており、肉を加えて煮込み中だ。

通常は炒めるタイミングでスパイスを入れていたのだが、その工程では間に合わないと判断して煮込みの途中で投入するように手順を変えた。

「ねぇヒヅキ、間に合うわよね……?」

「分からないよ、私に聞かれても。もちろん間に合って欲しいけど……」

時間だけが過ぎていき、みんな不安そうだ。

ちなみに本格的に間に合わないとなったら、鍋の中身にチキンブイヨンを追加してスープにする予定だ。

もちろんバフにはならないため、その際は掃討作戦自体も中途半端だが終了という形になってしまう。

「……表が騒がしくなった」

ルーリがボソッと呟く。

「え? わたしには聞こえないけど……」

耳に意識を集中させてみるが、特別な音は拾えない。

しかし、ルーリの耳はとても鋭かったようだ。

次第にどったんばったんと扉を開ける音や何か重いモノを運ぶ音が厨房の外へ響いた。

そして突然厨房の扉が開かれる。

「ソフィアちゃん! お待たせしたね!」

「ダレスさん!」

「ダレスさんおかえり」

やはりまた走ってきたのか息を乱しながらもダレスさんは言葉を続ける。

「ああただいま。この通り連れてきたよ……って私が扉を塞いでいたんじゃ見えないよね。ごめんごめん」

そうして扉から離れると、そこにはアルコートで見慣れた顔があった。

「やあソフィアちゃん。急に起こされたと思ったら相手がダレスで、スパイス全部持って来いと言われたから何事かと思ったよ」

「こんばんは、デッツさん。本当にすみませんでした。でも事情が事情だったもので」

「いやいや謝ることじゃないさ、事情は全部道中ダレスに聞いているよ。よく頑張ったな、もう安心だぜ」

そうしてデッツさんは一度部屋から出ると、何やら大きい台車から次々と箱を持ってくる。

「クミン、コリアンダー、ペッパー各種、シナモン、セージ、カルダモン、クローブ、オレガノ、ターメリック、フェンネル、オールスパイス、バジル、サフラン、スペアミント、タイム、ローズマリー、ローリエ、レモングラス……」

どんどんと箱に箱が重なっていく。

「ちょちょちょ、待ってください! ありがとうございます! でもフレッシュハーブは今回使いません!」

「おっとそうかい。すまんすまん、いつもの調子で全部見せたくなっちまったよ」

デッツさんは相変わらずのスパイス狂いのようだ。

まあとにかくこれだけ種類が揃っていれば、不足していた種類のスパイスは全部満たせそうだ。

「よし、じゃあ早速味付けをしていくね!」

スパイスを巨大フライパンで5分ほど軽く煎って、香りが立ったことを確認して鍋の1つ1つに投入する。

そして最後の鍋に残りのスパイスを全て入れた時、一瞬、紫色の光が瞬いた、ように見えた。

「えっ?」

思わず声を上げてしまう。

「ソフィア、どうかした?」

ルーリが心配そうに尋ねてくる。

「今、ちょっと鍋がおかしくて……なんだか紫色に光った気がしたんだけど、ルーリは気付かなかった?」

「ううん、特に何も感じなかったよ」

「そっか……」

見間違いだろうか。

煮込み終わった後、その鍋の検食はまず私がしたのだが、特に変わった様子はなかった。

なんだったんだろう……




時刻は1時45分、ギリギリの完成だ。

配膳班の人たちに協力して、カレーを拠点に運ぶ手伝いをする。

食堂に使われるホールの壁は無残にも大きな穴が空いているが、そんな様子とは正反対に床に壁の一部が散乱しているということはなく、

テーブルや椅子なども綺麗に並べられていてしかももう既に席について待っている人たちが多い。

「な、なんだかちぐはぐな感じがする。壁はボロボロなのにテーブルと椅子は無事なんだね」

「確かに……穴の空いた部屋に大勢の人が静かに座ってる光景って異様だわ……」

そんなわたしたちの呟いた言葉に配膳班の人たちが応えてくれる。

「ああ、床の片づけとテーブルと椅子の用意は兵士さんと冒険者さんが率先してやってくれたの」

「なんでも、絶対にカレーを食べたいから! だそうよ。もう毎回の食事が大賑わいだったもの。最後の1回も楽しみにしてたみたい」

「だから魔獣にカレーをひっくり返された時なんか、兵士さん達、どっちが魔獣か分からないくらい怒ってたわよ。バフがなくても攻撃力上がってたわ絶対」

みんなカレーを楽しみに手伝っていてくれたのか。

席に目をやると、これから掃討戦へと向かうのにも関わらず明るい顔が多い。

この光景を見ると、簡単に諦めなくてよかったと思える。

「作って良かったね……」

横でコクリとルーリが頷く。

作戦があわや途中で終わってしまうかもしれないピンチだったが、多くの人たちの支えで無事料理を提供することができる。

慌ただしくなってしまったが、今回も美味しいカレーができた。

最後の食事回も充分に楽しんでもらおう。


わたしたちも配膳を手伝って、無事に食事回は終了した。

バフも正常に付与されているようでなによりだった。

後片付けで食器などの洗浄を行い、全て終わったのが深夜3時。

なんだか目も冴えてしまったので、仮眠室には戻らずにルーリと一緒に外で山の方を眺めていた。

「わたしたちのできることは終わったね……」

「うん、あとは掃討班が無事に帰ってきてくれるのを願うだけ」

なんだかふわふわとした気分だ。

肩の重かった荷が全て降りて、久しぶりに体が軽くなったような、そんな感覚。

外は寒かったが、そんなぼんやりした頭には冷たい空気が気持ちよかった。

そうして何をするでもなく外にいると、それは突然に起こった。

「……ソフィア、あそこ」

最初にそれを発見したのはルーリだった。

その指が向けられた方向に視線を向けると山のあちこちに小さな白い光点が現れているのを見ることができた。

「なんだろう? 灯り?」

そしてその光が消え一瞬の間の後、

山の一点で光が丸く大きく膨らみ、そして四方へと弾けた。

空が照らされ、まるで昼のようになった。

そして遅れること数秒。

ドォーン‼

と腹の底に響く爆音と、窓をビリビリと鳴らす衝撃が届いた。

「な、なにごとなの⁉」

わたしといえばびっくりして転びそうになっていたところをルーリに支えられている。

その爆発と思しき光の発散は1回きりだった。

「一体、なんだったの……」

拠点の方では作戦班の人たちを始めとして慌ただしく動き出しているようだ。

次第に、町の様子も騒がしくなってきた。

あれだけの音と衝撃があったのだから、当然町の人たちは起こされたのだろう。

「ソフィアさん! ルーリちゃん!」

後から声がかかる。

ヒヅキさんとレミューさんだった。

「なんか! なんかすごい音がしたわ‼ 何がどうなってるの⁉」

「落ち着けレミュー。でも本当にものすごい衝撃だった。今の状況は?」

「うーん、それがわたしにも分からなくて。山の方で急に大きな光の球のようなものができて、爆発したように見えたけど……」

「そうなんだ……掃討班の人たちも無事だと良いけど」

確かに、あの山には掃討班の人たちが今も作戦を遂行しているはずだ。

あの爆発に巻き込まれていたとしたら一体どうなってしまっていることか……

祈るような気持ちでそこに佇んでいると、山の方から多くの人影が町に向かってくるのが見えた。

「あれ、掃討班の方達じゃないかしら?」

レミューさんの言った通り、確かに拠点で見かけた顔が多くいる気がする。

「無事だったんだ……」

少し安心する。まだ誰も怪我をしていないと決まったわけではないけど、ただ彼らの顔つきを見るに悲壮感を漂わせている風でもないのでそれほど悪い結果ではないのだろう。

「でも作戦ってあと2時間近くなかったっけ? やっぱり不測の事態だったんじゃ……」

ヒヅキさんの言う通り、今は4時近くで作戦は本来なら6時まで行われる予定だ。

彼らが拠点に入り、しばらく経った後に町へディグルッド町長による大型拡声魔具を使用した放送が流れた。

わたしたちは流石に外で経過を待つのは寒かったので仮眠室へ戻って、報せを待っていたところだ。

『町役場からの放送です。朝から大変なご迷惑をおかけしまして、誠に申し訳ございません。先程の光と音について、掃討作戦における魔法行使におけるものだと判明いたしました。町や人へ害を与えるものではありません。また、これ以降の魔法行使はございません。大変お騒がせをいたしました、再度お詫び申し上げます。加えてご報告申し上げますと、掃討作戦事態はこの朝4時半をもちまして完遂することができました。皆様のご協力に大変感謝をしております。誠にありがとうございました』

放送は1度繰り返されて終わった。

放送が終わると同時に、仮眠室のドアがノックされた。

「ソフィアさん、起きてらっしゃいますか?」

レイマーさんの声だった。




「みなさんのご協力ありまして、掃討班の全員が無傷で生還いたしました。ありがとうございました」

レイマーさんによると、あの大規模な魔法行使は複数人の魔術師による総攻撃の結果だという。

味方に損害も無く、包囲網内の魔獣は全て掃討できていたために早めの撤退ができたらしい。

「ちょっと謎は残るけど、でもこれで全部終わり……だよね?」

「ええ、そうね。終わりよければ全てよし、よ!」

わたしはルーリ、レミューさん、ヒヅキさん、レイマーさんの顔を見渡した。

全員仕事終わりの疲労感を雰囲気に滲ませているものの、それでも仕事をやり遂げた達成感からか表情は清々しい。

「それじゃあ皆さん! 3日間お疲れさまでした‼」

「「「お疲れさまでしたー‼」」」

それからしばらくワイワイとお話しに興じた。

「あの時ルーリちゃんに起こしてもらわなかったら1回どころか4回分の食事を用意し損ねてたわ!」

「あそこでレミューがジャガイモみじん切りにしてたのは笑っちゃったよ!」

などと、お互いの失敗した話を笑いながらする。

これも作戦が無事成功したからこそ、笑い話にできるというものだ。

そうやってお喋りしていると、申し訳なさそうにレイマーさんがわたしに話しかける。

「実は……ディグルッド町長がソフィアさんにお話をうかがいたいと」


作戦室は静かだった。

それもそのハズで、今その場にいるのは町長だけだった。

わたしはルーリと共に入室して、席に着いた。

「お疲れのところすまないね、ソフィアさん」

「いえ……。それでお話っていったい…‥?」

「うむ、実はだね……」

光の爆発があって掃討班が戻った後、彼らに話を聞いたらしい。

レイマーさんが私たちに話してくれた内容通り、その爆発は魔術師による総攻撃の結果起こったものであった。

しかし、そこで使われた魔術はおよそその規模の爆発を起こすものではなかったという。

「それでだね、君のカレーによるバフの種類の中に魔法強化があったんじゃないかという考えが1つあるんだが、その効果を混ぜた覚えはあるかね?」

「いいえ、わたしのカレーで魔法強化を行えるものは現状発見できていませんので……」

「うむぅ、そうかね……確かにあの威力はバフを由来にするにしては高威力すぎる。伝説に聞く極大種のバフならば可能かもしれんが、本人も知らないというなら違うのだろうな」

ピクッとルーリが一瞬反応したように見えたので、チラリと様子を伺うが、特に何の動きもしないようだ。

「恐らく包囲網が小さくなったことによって、魔法粒子が狭い範囲に密集し、追加の魔法弾をきっかけに暴発したのでしょう。元々攻撃魔法には魔属性への特殊効果しかない白魔法のみを使用していたため味方の損害もゼロだったというところですかね」

レイマーさんが後を継いで推論を述べる。

「うむ、検証は必要だがそんな所かもしれんな。ソフィアさん、遅いところ呼び立てに応じて下さりありがとうございました。後は陽が昇るまでごゆっくりとお休みくだされ」


わたしとルーリは拠点を後にして、再び仮眠室へと向かった。

「でも結局のところはなんだったんだろうね、あの光。詳しいことは何も分かってないみたいだったし……」

するとルーリがピタリと足を止める。

「どうしたの、ルーリ?」

「ソフィア、カレーを作ってる時に鍋が光ったって言ってた」

「ああ、うん。見間違えかなと思ってるけど、一瞬確かに光ったように感じたんだよね……」

「何色に?」

ジっとわたしを見据えて質問を続けるルーリ。

「ええっと、ぼやぁっと紫色に光ってたかな」

「……強化魔法は通常付与した瞬間、その効果を与える対象の人が光るの」

「ええ! そうなんだ……初耳だよ。全員紫色に光ったりするの?」

「色によって効果の大きさが違うんだって。赤は小、黄は中、緑は大」

へぇ、便利だなぁ。どの色が付くかによって強さが分かるなんて。

「あれ? 紫色は?」

赤と黄、そして緑色しか出てきていない。

少し間が空いたように思えたけど、すぐにルーリは限りなく自然にその強さを口にした。

「……極大」

「え?」

「紫色は極大なの、伝説上は」

ルーリのまん丸で可愛い大きな眼はぼーっとしたように見えるが、それでも真剣さを含んでいて嘘を吐いている様子でもない。

ふいに強い風が吹き、ルーリの長い髪は拭き流されて顔が覆われ、わたしを映した瞳が隠れる。

その風の冷たさに身を縮こませる。

そしてとりあえず今は深く考えるのは止めようと思った。

このまま外に立ち呆けていたら風邪引いちゃうからね。

なにはともあれ、無事に終わったということで!

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