佐竹参考人に対する意見聴取‐三
(吉田委員)
参考人に確認いたします。
先ほど、青木委員から尾形参考人に質問がありました。尾形参考人によりますと、政府担当者からの質問に対し、「摩耗」が生物である可能性はあると回答したけれども、そう断定した事実はない、と回答されました。その点いかがでしょうか。
お答え下さい。
(佐竹参考人)
お答えします。
尾形教授に対し、「摩耗」が生物であるかどうかを内閣として問い合わせた事実はございますし、その際教授が「生物の可能性も否定できない」とおっしゃったことも、これは事実であります。したがいまして、政府といたしましては、自衛隊機による「摩耗」の観測結果及び米田統合幕僚長の意見具申と、尾形教授の見解は必ずしも矛盾しない結果が得られたため、「摩耗」を生物と認定し、災害派遣に切り替えたわけであります。
タイミング的なものにつきましては、決して福島宮城越境を見越したものではなく、飽くまで「摩耗」を生物と認める要素が揃ったのがたまたまそのタイミングであった、というだけのことでありまして、決して政府としてシビリアンコントロールを放棄した、事案対処を自衛隊に丸投げした、ということではございません。
(吉田委員)
ありがとうございます。
「摩耗生物説」に関連して引き続き質問いたします。
「摩耗」が青森県内で活動を停止した後、総理は「摩耗」が再出現性のない生物であったとの認識を示されました。この点に関しましては、先ほど尾形参考人が「摩耗」の再出現性に関しては政府担当者からの質問もなかったように記憶している、とおっしゃってます。尾形参考人はまた、青木委員の質問に対して、多分に結果論的ではあるけれども、もし「摩耗」が再出現すれば現在の地球環境が「摩耗」生息に適した状態に変化している、と説明されました。逆説的ではありますけれども、「摩耗」の再出現について決して否定的な見解ではありませんでした。
参考人が、そういった専門家の意見を無視して「摩耗」が再び出現することがないと談話を発表した根拠は一体なんだったんでしょうか。
お答え下さい。
(佐竹参考人)
お答えします。
これは、確かに尾形教授に対して「摩耗」の再出現性について内閣として質問した事実はございません。
しかし一方で、委員の皆様も既にご承知のとおり、「摩耗」という生物は、直径約二二〇メートル、質量に至ってはどう少なく見積もっても七十五万トン以上あるわけです。「摩耗」の再出現性を否定する談話の根幹には、このようなサイズの生物が多数生息できるほど環境は激変していない、という認識がございまして、そういった認識は決して楽観的なものの見方ではなく、ごく常識的なものであり、国民の皆様方に広く共感を得られる認識であるとの考えに基づくものであります。
(吉田委員)
つまり、「摩耗」の再出現性を否定する談話に生物学的根拠はない、ということでよろしいでしょうか。
(佐竹参考人)
根拠がない、というよりは、そういった根拠を要しない、ごく常識的な認識を示した談話である、とご理解いただきたいと思います。