米田参考人に対する意見聴取‐三
(乾委員)
参考人が摩耗生物説を違和感なく受け容れた理由については理解いたしました。それでは質問を続けます。
先ほど参考人は、巨大球体の福島宮城間越境が確実視された段階で行動類型が治安出動から災害派遣に切り替えられたことについて違和感を覚えなかったと説明されました。その行動類型に立脚し、六ヶ所村近郊においては相当な装備を配備してこれを迎撃しております。この際の戦闘につきましては、周辺区域にも弾殻等が散乱、或いは飛び火して被害が出るなど、害獣駆除のための武器使用の範囲を大きく逸脱して、武力行使にわたっていたのではないか、という批判についてご説明願います。
(米田参考人)
ご質問の武力行使というのは、自衛隊法第八十八条に定める武力の行使のことでよろしいでしょうか。
(乾委員)
そのあたりも含めてご説明願います。
(米田参考人)
ただいまのご質問におこたえいたします。
結論から申し上げますと、六ヶ所村近郊における武器使用につきましてはあれを以てなお足りなかったと反省しております。
そもそも、自衛隊法によって定義づけられている武力の行使と申しますのは、自衛隊法第八十八条にその明文の規定がございまして、そこには何が書かれているのかと申しますと、「第七十六条第一項の規定により出動を命ぜられた自衛隊は、わが国を防衛するため、必要な武力を行使できる」とあるわけであります。では第七十六条第一項の規定とは何か。これは、「我が国に対する外部からの武力攻撃が発生した事態又は我が国に対する外部からの武力攻撃が発生する明白な危険が切迫していると認められるに至つた事態」或いは、「我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある事態」に際し、我が国を防衛する必要があると認める場合には、内閣総理大臣は自衛隊の一部又は全部に出動を命じることが出来る、という条文でございます。所謂法第六章「自衛隊の行動」の冒頭に定められている「防衛出動」の規定であります。
本件事例におきましては、これは害獣駆除のための武器使用でありまして、そもそも武力の行使の前提となる自衛隊法第七十六条第一項の防衛出動を下令されたわけではございません。「摩耗」駆除に際して行われた作戦に関して、武力行使だ何だと世間では騒がれておりますけれども、そもそも武力行使の前提が成り立っていない。
私どもが治安出動であれ害獣駆除であれ武器を使用する際には、これは「武器の使用」であります。これは所謂「警察比例の原則」に基づいて考えますと、行政の意思を実現するために必要な最低限度の実力行使については当然に許容される、という原則であります。どうやら皆さん、より威力の強い武器を使用すれば武力の行使に当たる、というような文脈でお話されているようなんですけれども、そうではなくて、まずは防衛出動下令下かどうか、という前提条件が成立しているかどうか、というものが、武力の行使に当たるのか、はたまた武器の使用に当たるのか、という判断基準になるわけです。ですから、たとえば口径にして何ミリ以上の砲弾を発射すれば武力の行使、それ未満であれば武器の使用にとどまる、といった決めごとはございません。
極端な、というりも、こういったたとえ話の方がご理解いただけると思うので申し上げますけれども、自衛隊の行動類型が治安出動或いは害獣駆除であれば、必要があって戦車が砲弾を発射してもこれは武器の使用ということになります。翻って、防衛出動下令下にあっては、たとえ拳銃弾一発発射してもこれは武力の行使に当たります。そのあたりの誤解に基づいて武力行使にわたっていたのではないかとご批判賜りましても、「摩耗」の六ヶ所村侵攻を阻止できなかった以上は、「摩耗」北上阻止という行政の意志を実現できなかった我々の力不足を反省することはあっても、なおやり過ぎではなかったかというご批判は当たらないと考えております。全くやりすぎ過ぎもなんでもありません。寧ろ力不足でした。この場を借りて、国民の皆様方にお詫び申し上げます。




