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摩耗核惨事  作者: pip-erekiban
第三章 参議院行政監視委員会
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米田参考人に対する意見聴取‐二

(米田参考人)

 さて、ただいま委員から「摩耗」の正体について、対処に当たった責任者としての意見を、と求められましたのでおこたえ致します。

 先ずはっきり申し上げたいのは、私どもが当初受けたのは、原子力関連施設に対する武力攻撃の可能性がある事案が発生した、という報告であります。具体的に国名を申し上げる立場にありませんのでその点については差し控えさせていただきますが、このとき我々が想定いたしましたのは、潜在的、顕在的に我が国に敵対する国家或いは武装勢力による武力攻撃という事態でありました。ですので、福島第一原発廃炉作業区に侵攻したのが直径約二二〇メートルの球体であると連絡を受けた際には、非常に困惑いたしました。

 といいますのも、私どもは他国からの武力攻撃に対処するという本来任務を全うする性質上、現在開発中の装備も含めて、各国の陸海空あらゆる装備の全般について常に情報を収集しているわけであります。これは国防上非常に重要な任務でありますから、現実に対処可能かどうかは別問題として、その装備について全く知りませんでした、というみっともないことは少なくともあってはならないと考えておりました。ですから、「摩耗」については、球状の兵器など全く未把握でしたし、その用途も全く想像がつきませんでしたから、巨大球体出現の報告を受けた際には非常に面食らったわけであります。

 近代兵器というものは、如何に技術が進歩しておっても、所謂生物化学兵器以外は、場合によってはそういった兵器におきましても、依然として炸薬効果を発揮する重砲火器の装備が欠かせません。戦車しかり、戦闘機しかり、であります。補給艦のような後方支援の艦船にすら自衛用の火器を外すということはできません。

 先ほど尾形参考人のご説明の中で、「摩耗」の質量が少なくとも七十五万トン以上と推定される、というお話がございました。この重量はですね、太平洋戦争時に我が国が建造した大和型戦艦の満載排水量の実に十倍以上に当たります。同艦の建造費用は当時の国家予算の約三%に達するものだったと聞いておりますから、単純比較できるかどうかはわかりませんが、七十五万トン以上の質量を持つ兵器を建造するためには国家予算の約三〇%を投入する必要があると概算できるわけであります。現在、先進各国の国家予算のうちに占める防衛予算の割合というものは公開されておりますので、そのような使い方をしている国というのは、これはひと目で分かるようになってるんです。

 しかしながらそのような防衛予算の使い方をしている国というものは把握しておりませんでしたし、体系化されたドクトリンの中で装備の用途を決定するという常識が確立している現代におきまして、単体の兵器としてこれだけの建造費用を要する兵器などナンセンスである、というのが先ず我々の間での常識であります。

 よしんば他の兵器の予算を秘密裏に流用するなどして建造費を捻出できた場合であっても、実際大和型戦艦建造の際には架空の駆逐艦二隻分の建造費を同艦の建造費の一部に充当したそうでありますが、「摩耗」を兵器と見做すにはなお疑問が残ります。それが、重砲火器等の周辺装備が皆無であった、少なくともそういった火器を投射した事実は福島上陸以降一切なかったという点であります。

 もし「摩耗」が兵器であった場合、我が国自衛隊の最新鋭装備によってもその外装を貫通不可能であったことから、相当強固な装甲を持っていたと考えられます。移動速度は上陸当初、地上において約三〇キロメートル毎時でしたので、非常に大きな質量を以ていたわりには移動速度は俊敏であったと評価できるでしょう。

 もしそのような兵器を建造できる技術を持っていたとしたら、これに重砲火器を搭載しないという選択肢はちょっと考えづらいものがあります。通常であれば何らかの周辺装備を搭載すると考えられる、そうすることが常識であろうと考えられるからであります。そうでなければもったいない。少なくとも我々の常識から見るとそういう話になります。

 ですので私は「摩耗」の福島宮城間越境が確実視される状況下で、災害派遣による害獣駆除に行動類型が改められた際、特に違和感はありませんでした。特定の国が建造した兵器による侵略だと断定された方がよっぽど面食らったでしょう。

 更に申し上げますと、現在は退官しておりますので、今以て解析がおこなわれているかどうかを知る立場にありませんが、当時得られた「摩耗」わ撮影した静止画、動画を調査した際にも、国籍標章その他記号、外国語表記等は外装からは確認できませんでした。もしそういったものが発見されたら、人工物即ち侵攻用兵器であったと断定できるものと考えられます。

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