小笠原貞弘君の質疑-四
（廣瀬内閣総理大臣）
コアキャッチャーにつきまして、委員がおっしゃるように世界の原子力発電所においてはこれは標準装備となりつつあります。
しかし我が国の原子力発電所におきましては、先の東日本大震災における福島第一原発事故の際もそうでしたが、作業員による機器の操作につきましては多少の齟齬があっただけで、それにのみに起因する過酷事故ではありませんでした。また、コアキャッチャーさえあれば絶対に過酷事故の発生を防止できるというものでもございません。そもそも本件摩耗核惨事におきましては、摩耗の襲撃による使用済み核燃料の落下が発端であります。
そのような状況に至りましたならば、原子炉建屋地下にコアキャッチャーを設置したとしても、本件のような惨事を防ぐ手立てはなく、寧ろコアキャッチャーを設置することによるコストの増加は他のエネルギーに対する原子力発電の優位性を損ないかねません。
そういった観点からも、我が国において今後稼働を予定している原子力発電所においてコアキャッチャーを設置する必要性については、新規制基準において要請するところではないと承知いたしております。
（小笠原委員）
ちょっとおっしゃってる意味がよく分かりませんが、じゃあたとえば今、磐城第二と常陸第二で起こっている事故については、これはどのようにお考えなんでしょう。
いいですか総理。磐城第二、常陸第二では作業員が撤退したことによって、まさに装塡されている核燃料が熔融したんですよ。今、その燃料デブリがどういう挙動を示しているか、全く解析が進んでしませんよね。その点は福島第一原発と全く一緒ですよ。
たらればの話になるかもしれませんけれども、もし新たな規制基準にコアキャッチャーの設置を含めておれば、今回磐城第二と常陸第二の各原子炉から溶け落ちた燃料デブリがコアキャッチャーがあることによって、とにかく所在不明になるような事態は防げたんじゃないかと思いませんか。どうです総理。
（廣瀬内閣総理大臣）
その点につきましては、本件事故の回避可能性に予断を与えることになりかねませんので、この場でお答えすることは差し控えたいと考えております。
（小笠原委員）
分かりました。
総理は本件核惨事を経てもなお、再稼働方針の撤回どころか規制基準の更なる厳格化についてすら考慮していないということでよろしいですね。政府の無責任が明らかになったところで質問を変えましょう。
総理は先ほど、原油価格が不安定であることを懸念されて原子力発電所再稼働に舵を切るとおっしゃられたけれども、そもそも今回の核惨事とこれに伴う我が国経済の崩壊というものは、原発の過酷事故を原因とするものであります。大変な惨事の原因となった原発を、経済的な理由からもう一度動かす、という理屈が私には分かりません。 経済的に逼迫している状況から脱するためには何をやってもいいんでしょうか。
お答えください。
（廣瀬内閣総理大臣）
経済的な窮地を脱するためには何をやってもいいのかというご質問ですけれども、名にも私はこの窮状を脱するために犯罪を犯してもいいというようなことはひと言も申し上げてないわけであります。原子力発電所の再稼働という方針を示すとがあたかも犯罪的行為であるかのようにレッテルを貼って語ることは、国民生活に直結するエネルギー政策に責任を持つ政府として取るべき態度ではないと考えております。政府としても、中長期的には脱原発を目指すという旧来の方針に変更はないんですよ。
しかし当座の急場を凌ぐためには、新たなプラントの建設に資材を投入する余裕がないんです。今、現に存在するものを有効に利用する方針であると理解していただければと思います。
（小笠原委員）
それでは当座の急場を凌いでいる間に、運転を再開した原子力発電所で再度過酷事故が発生したら、これは一体誰の責任になるんでしょうか。
（廣瀬内閣総理大臣）
一義的には原因企業の責任に帰するものと考えております。しかしながら、規制基準の厳格性に鑑み、そう頻繁に過酷事故が発生するものとも到底考えられません。
（小笠原委員）
再稼働を容認した原子力規制委員会の責任についてはいかがお考えでしょう。
