絶望
ミカルはある日、母親と林檎を食べてることが始まりだった。誤って種を飲み込んでしまい、一度は吐き出したものの、欠片が胃に残っていた。大半の者はこの時点で胃酸が欠片を溶かす。だが稀に、溶かせない時がある。まさにそれだった。
ミカルの発芽病が発覚したのはそれから一ヶ月後のことだった。凄まじい腹痛に襲われ、病院に駆け込みレントゲンを撮った。
母「先生、娘は一体・・・?」
医「落ち着いて聞いてください・・・。娘さんは発芽病です。腹痛の原因はこの蔦でしょう。蔦が胃を内部から圧迫しています。」
ミカルの胃の内壁には蔦が一面に張り巡らされていた。
もう、手の施しようがない段階だった。
母「そんなっ・・・!先生、手術は?いくらでも払います、娘をっ!!!」
あまりの衝撃にミカルの母親、田崎・カルアは椅子から崩れ落ちた。そして、医師のズボンを強く握り、掴みかかった。
医「今の段階ならば一つだけ手があります。」
母「それはなんですか?」
医師は苦渋の表情をしながら答えた。
医「臓器移植です・・・胃を・・・切断するするんです。しかし・・・、料金が・・・。」
母「幾らなんです!?必ず払います!!」
医「恐らく・・・大体百五十万くらいでしょう。」
母「そんな・・・!」
もはや諦める他ない金額だった。田崎家は決して裕福ではなかった。おまけに、胃摘出術は五歳のミカルの体には負担が大きすぎだ。
『お母さん?大丈夫?お母さん。どこか痛いの?よしよし、大丈夫だよー・・・。』
戸惑いながら小さな手で背中をよしよしと摩る我が子を見つめた。幼いのに、こんな過酷なことにしてしまって、申し訳なく思った。
母「ごめん・・・ごめんね!ミカル・・・ごめんね!!」
強く、強く抱きしめた。
『うぅ・・・お母さん苦しいよぉ・・・』
母「あら、ごめんなさいね・・・」
そっと我が子を抱き上げたまま医師にありがとうございましたと頭を下げる。
『ありあとございました!!』
真似して言うミカルに医師は飴を渡した。
母「それは?」
医「促進を遅らせる薬を飴にしたものです。はい、ミカルちゃん、どーぞ」
『ありあとー!おじさーん!』
母「こら!おじさんじゃないでしょー?」
医「いいんですよ、三十過ぎたらオッサンですから。ハハハ」
医「同じ形状の薬を一便出しておきます、一日朝昼夜の3回食べさせてください。」
母「分かりました。」
医「お大事に、ミカルちゃんバイバーイ」
『ばいばーい!!』