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ブラウザの中の元彼

作者: KARYU

 「俺、こんなこと言ったっけ?」

 私の作品を読んで、彼は不満そうに呟いた。

 「ああ、それ? あなたとの事じゃないわよ」

 私の返事に、彼の眼つきが険しくなる。

 「Kai君って覚えてる?」

 私の問いかけに、彼は意表を突かれたのか、きょとんとした。そして、また私を睨みつける。

 「ああ。あの頃、俺と一緒に君のサイトにお邪魔してたやつだな。──くそっ、Kaiの野郎、人の彼女に……」

 苦虫を潰すような表情で不満を口にする。

 ふふっ。嫉妬をあらわにして、愛い奴。

 「Kai君に口説かれたの、あなたより先だったのよ?」

 「うそっ、手ぇ早えぇやつだったんだなおい」

 人のこと言えた話じゃないでしょ?

 「──って、じゃぁどうして」

 彼はようやく思い至ったのか、基本的は質問を口にした。

 「俺と?」

 そう、私はKai君ではなく、今の彼と付き合うようになった。

 「別に早いもの順って訳じゃないでしょ」

 私の言葉に、彼は気を良くした様子。だけど、事情はちょっと違うんだ。いい気分にさせたままにしておいても良かったんだけど、私は真相を告げた。

 「実はね。口説かれた後、Kai君が私の前に姿を現さなくなったの。口説くだけ口説いて。酷くない?」

 自嘲気味に笑ってしまう。そう、口説き文句を最後に、二度と現れなかったのだ。

 別に、口説かれたときは本気にしてた訳でもなかったし、そう誘導した私自身も「やった、言わせた!」と思っただけで、本気で想われたいとか考えていた訳じゃなかった。──筈なのに。

 「その後、傷心の私をあなたが口説いてきて。あなたは完全に漁夫の利だったのよ?」

 そう。思いのほかショックを受けていたのだ。

 私自身、Kai君に対して明確な返事はしていないにも拘らず。我ながら勝手だと思う。

 その後、元気が無い私を思いやってか、彼は私のサイトに以前より頻繁に訪れるようになって。そして、私のことを口説き始めたのだった。

 Kai君の件もあって、私は暫くそれを受け入れなかった。そうしたら、彼は実際に会って欲しいと言い出した。お互いの家は結構離れていたにも拘らず、彼は私の元にやってきた。中の人がどんな相手なのかも判らないのに。その事実が嬉しくて、私は彼を受け入れたのだった。

 「うわー……、じゃあ、俺はKaiの野郎に感謝した方がいいのか」

 「そこまでは言わないけどね」


 何の話かと言うと。

 私が書いていた小説の一節に、私がKai君に口説かれた時のくだりを取り込んだのだ。チャットを使っての話、彼にもピンと来たのだろう。誰との事か、までは思い至らなかった様だけど。

 それが一年ほど前の話で。その後、その小説をとある賞に応募したところ、なんと入賞してしまったのだ。


 賞を主催している出版社で、授賞式が行われた。

 私の他にも三人の受賞者が居た。

 出版社や協賛している会社の面々、選考員の作家さんたちに囲まれ、式は滞りなく終わって。さあ帰ろうとしていたところで、出版社の人に呼び止められた。先だって、今後のことについては後日連絡しますと言われていたので、何事かと思ったけどとりあえず言われるがまま会議室らしい部屋まで従った。

 部屋には、既に男が一人座っていた。見覚えがある。今回の受賞者の一人だ。見た感じ、私より結構年上っぽい。

 向こうも、私と同様にいきなり呼ばれて来たのだろう。所在なげに部屋の中を見ていた。

 私はその人の隣に座るよう誘導された。

 「いきなりのことで申し訳ない」

 出版社の人は対面に座り、頭を下げた。

 「実は、お二人にはちょっとした対談をお願いしたいと思いまして、お呼び立てした次第で」

 言いながら、ちょっと含みのあるような笑みを浮かべていた。何かあるんだろうな。そもそも受賞者は他にもいたわけで。

 そこへ、もう一人加わって来た。選考員の作家の一人、伊藤さん。彼女はここ数年で人気が出た作家で、私は彼女の本は読んだことは無かったけど、アニメ化されたその作品を見たことはあった。私の彼がその作品を結構気に入っており、勧められて見たのだ。別に十八禁とかお色気モノではなかったけど、男性向けのアニメだな、くらいの感想しか抱かなかった。

 「ごめんなさい、この企画はわたしが持ちかけたの」

 彼女は出版社の人の隣に座り、我々に一礼した。

 「実はね。あなた方の作品についてなんだけど、一部気になるくだりがあってね」

 『あなた方』、ということは私の作品だけでなく、隣の男の作品にもなにかある、という話なのか。

 思わず隣の男を見やる。彼も同じように思ったのか、私の方を見た。

 「まず先に確認させて欲しいのだけど。あなた方って、面識はあるの?」

 妙なことを言う。

 「いえ、初対面です」

 私も隣の男も、同様に応える。

 この質問が出るということは、二人の作品に何らからの共通項があるのだろう。

 「ふむふむ。じゃあ、これは偶然の一致なのかな」

 伊藤さんは、私たちにコピーらしきものを渡した。

 それは、私の作品の一節と、別の小説の、恐らく隣の男が書いたであろう物の冒頭の書き出しらしい文章が左右比較するようにプリントされていた。

 私はそれを読んで──驚愕した。仔細は違っていたけど、台詞回しはほぼ同じ。会話の『オチ』に至るまで一致していた。

 ただ、双方とも一人称の文体だったのだけど、──視点が真逆だった。

 「あ、あなた……まさか!?」

 「……ひょっとして、Miiさん?」

 双方同時に思い至った様子。

 「やっぱり、Kai君なんだ……」

 突然のことにパニックになる。

 「えっと、ご無沙汰しております、アンド、はじめまして」

 Kai君が私に向かって頭を下げた。妙な挨拶だけど、正しくその通りなのだ。

 私はというと、左手を胸に当て、『落ち着け』と自分に言い聞かせるばかりで何も言い出せずにいた。

 混乱が治まる前に、割り込まれる。

 「やっぱり、『それ』って、実体験なんだ」

 伊藤さんに突っ込まれ、恥かしくなって赤面してしまう。

 見ると、Kai君も赤面して頬をぽりぽり掻いていた。

 「じゃあ、その辺りのエピソードを聞かせて欲しいな。記事にしていいかどうかは後で判断してもらうとして」

 伊藤さんはにっこりと笑みを浮かべている。なんて意地悪。

 「えーと……、何を話せばいいやら……」

 Kai君も当惑している様子。でも、話をすること自体は厭わないのかな?

 「では、私から」

 仕方が無いので、私から話をすることにした。隠すことで作品自体の評価がおかしくなるとまでは思わなかったけど、昔のことでもあり、私も話していいかな、と思った。それに、そのことでKai君に聞きたいこともあったし。

 「当時、とあるコンシューマの人気ゲームなんですが、メーカーがそれの展開として公式のコミュニティサイトを用意していて。ゲーム購入者だけがログインして遊べるものがあったんです。私もKai君もそれに参加していて、そこで知り合いました」

 Kai君が頷く。

 「私は、そのゲームのファンサイトを勝手に立ち上げて、公式サイトで知り合った何人かを私のサイトに誘導して。Kai君もそこに来てくれるようになりました。暫くの間、そこでチャットして遊んでたんです」

 目を閉じ、当時を懐かしむ。

 「じゃぁ、口説かれたのはそこなんだ」

 伊藤さんはニヤニヤしている。なんか悔しい。

 Kai君は赤面して頷いている。

 「じゃあ、どうして……、口説いた後、音信不通になったの?」

 伊藤さんは、私が聞きたかったことを代弁してくれた。二人とも作品上でそう書いていたので、そこが気になったのだろう。

 全員の視線がKai君に集まる。

 「えっと……特に意図があった訳じゃないんですが」

 Kai君は言い澱む。躊躇っているのか。

 だけど、無言の圧力に負けて、

 「嫁が嫌がったので」

 などと言い放った。

 最初、頭が理解できず。

 ──なんですと?

 当時、既に既婚者だった、だと!?

 あまりのことにわなわなと拳を震わせていると、

 「それって、森先輩?」

 伊藤さんのよく判らない問いかけに気勢をそがれた。

 「いや、違っ……え?」

 Kai君も思わず普通に返事をしようとして固まった。

 Kai君が目を細める。

 「判らないかな、わたし」

 伊藤さんが意味ありげに呟く。ひょっとして、Kai君と顔見知り?

 Kai君は暫く伊藤さんを見つめ、

 「えっと……ああ、うん、多分、判る。でも、ごめん、名前が出てこない」

 「えーっ!?」

 伊藤さんはショックを受けている様子。

 「ひどーい」

 剥れている。

 「いや、だってさ。当時も名前で呼び合ってた記憶が殆ど無いし」

 Kai君はよく判らない言い訳をしている。

 「……どういうご関係で?」

 痴話喧嘩を止める意味で、私から問いただす。

 「高校が一緒だったのさ」

 伊藤さんが剥れたままだったので、Kai君が説明を始めた。

 「クラスが一緒になったことは無かった、かな? きっかけも覚えてないんだけど、俺のいる部活に遊びに来るようになって、部室で話をするようになったんだ。彼女が文系の部の部長やってたことは覚えてるんだが……」

 Kai君も当惑している様子。Kai君にとっては、それほど親しい間柄では無かったけど、伊藤さんはそう思ってなかったのか。

 「Kai君にとってはその程度の人だったと」

 思わぬ逆襲ネタに食いつく。我ながらなんて意地悪。

 伊藤さんは涙目になってしまった。しまった、やりすぎたか。

 「ふんっ、そうでしょうとも。わたしにとっては、岸君は結構大きな存在だったんだけどなっ」

 岸というのはKai君の本名か。不満を言いながらも、正直に話す彼女に驚いた。

 「仲良かったの?」

 Kai君に問いただす。

 「えっ、ああ。接点が少ない割には、仲良くさせてもらってたとは思う。ただ、一緒にどこかへ遊びに行ったりするほど親しくはしてなかったと思うけど」

 「だって。あなた、二年の途中から彼女できてたじゃない」

 伊藤さんが恨めしそうに呟く。さっき名前が出てきた先輩とやらのことか。

 「あ、うん。でも……」

 Kai君はそんなことを言われても、って顔をしている。当時からこんな鈍感だったんだろうな。

 だけど、さすがにここまでヒントを出されて、彼にも思い至った様子。

 「ひょっとして……、フラグ立ってた?」

 その言い回しがなんとも彼らしいと感じた。ほんの短い期間にチャットで垣間見ただけの、Kai君の性格。

 「──もう、やっぱり気付いてなかったんだ……」

 しょぼくれる伊藤さん。正直すぎだろ、おい。

 「えと、誰だったか、卒業した後に何度か、貴女の友達から、貴女に連絡してあげてよ、とか、連絡してあげた? みたいな事を言われたことはあったから、ひょっとしたら、って思ったこともあったんだけどね。でも、それも卒業した後だったし」

 Kai君が慌てて弁明らしきことを言い出す。

 「それで、連絡はしなかったの?」

 私は標的をKai君に変更。

 「いや、だって。連絡先とか聞いてもなかったし。俺、彼女いたからさ」

 ふーん。

 「彼女何人もいたんじゃないの?」

 ちょっと意地悪してみる。

 「いや、そんなモテ男じゃねぇし」

 慌てて手をぶんぶん振る。あやしい。

 「その先輩とやらとは別れたんでしょ? そのときはフリーじゃなかったの?」

 「いや、それが。三年のとき、今の嫁と付き合うという理由で先輩と別れたから、フリーの期間は無かったんだよね」

 そんな事情は知らんがな。けど、そんなことより。

 「そ、そんな……」

 伊藤さんの方がショックを受けている。恐らく、Kai君に彼女がいたから告白しなかったのに、その間にそんな事態になっていたことに。

 「ちょっと酷くない?」

 少し、伊藤さんに同情した。

 「いや、そんな事を言われても……」

 まぁそうだろうけど。


 運ばれてきたコーヒーを飲み、一息つく。

 伊藤さんも一応落ち着いた様子。

 「Kai君って、そんなモテてたんだ」

 ちょっと話を蒸し返してみる。

 「いや、そんなことは……」

 とKai君は否定するが、

 「結構狙ってる子いたんじゃないかな~。周り女の子侍らせてたし」

 伊藤さんが否定を覆す。

 「いやいや、俺のこと知ってる男子で、俺がモテてたなんて証言するやつは一人もいないって」

 「男子は多分気付いてなかったと思うよ。まぁ、あなたがモテモテだったとまではわたしも言わないけどさ」

 なんて返されてる。

 「女の子侍らせてたんだ」

 ジト目で見やる。

 「いや、それも誤解だってば。うちの高校、男子が二割しかいなかったから、必然的に女子に囲まれることになるんだよ」

 そうなのか。

 「女子が多い部活に入ってたからね~」

 それなんかエロい。

 「漫研とかだしね」

 「でも、言い方悪いけど、そんなにモテそうにも見えないんだけど」

 失礼ながら、見た目はそうモテそうに見えなかった。優しそうな風貌ではあったものの、ちょっとふくよか過ぎる。

 「あー、いまはぷよぷよだからねぇ」

 伊藤さんも容赦ない。

 「まあ、高校の時からすれば、体重が一.五倍になってるけど」

 思わず噴出す。一.五倍って。

 「昔は痩せてたよねぇ」

 「今は八十近いけど、高校のときは五十三くらいだったからね」

 暗算してみる。本当に一.五倍だー!

 自分も最近、ちょっと太ってきたので、Kai君の高校のときくらいあるわ。……身長は10cmくらい私のが低そうなのに……。

 「見たら判るよ~」

 伊藤さんが携帯を開いてこちらに見せる。

 「ちょっ、待ち受けって!?」

 Kai君が噴出す。

 待ち受け画面に高校生くらいの男の子。今日会うことを知ってて態々待ち受けに入れてきたのか。

 その写真は、恐らく卒業アルバムをスキャンしたか携帯のカメラで写しただけのものだろう。私とチャットしてた当事、既に既婚者だったのであれば、その彼らが高校生だった頃なんてまだ携帯電話やデジタルカメラなんてものも出回っていない時代。それでも、親しかったのであれば、普通のスナップ写真くらい持っていそうなもの。ということは、やはりKai君の言うとおり、それほど親しくしていた訳では無いのだろう。

 詰襟姿のKai君は、かなりすっきりした印象だった。

 「へぇ」

 確かに、スリム。だけど、言うほどモテるとも思えない。フツ面じゃね?

 「な、モテそうには見えないだろ?」

 Kai君はちょっと自虐的。

 「それがねぇ。好き嫌い別れてたんだけど、好きって子も割といたのよ?」

 伊藤さんも自虐的に笑う。

 「わたしも好きだったから、自分の作品のモデルにしたりしたのよ」

 「えーっ!?」

 衝撃の新事実。

 「ひょっとして、○○?」

 心当たりでもあったのか。Kai君がアニメの主人公の名前を言うと、伊藤さんは悲しげに頷く。

 確かに、伊藤さんのアニメに出てくる主人公の男は、フツ面だけど遠まわしな隠れモテ設定だった。まぁ、割とよく見る設定ではあるけど。

 「いや、全然似てないだろ? 共通項なんて、『普通の男』で『女どもに男として思われていない』ところだけで」

 男として見られてないから、女性が近づき易く、気を許してしまう。そういう設定だった。

 「当時あなたは、色んなことに頑張っていたじゃない」

 主人公は、アニメ登場時点では頑張らない男だったけど、昔は色んなことに頑張っていたという設定だった。

 「いや、全然頑張れてないじゃん?」

 Kai君はあくまで否定的。

 「いくつも部活掛け持ちしてたし」

 そうなのか。

 「いや、確かに掛け持ちはしてたけども。全然足りてないってば。本当は、美術部も写真部も弓道部も、茶道部にも入りたかったくらいなんだから」

 いやいや、それは欲張り過ぎ。

 「本人が思っていたほどは頑張れてない、ってことね」

 横から指摘する。

 だが、伊藤さんは他のことで畳み掛けてくる。

 「資格試験も受かってたじゃない」

 「ちょっとだけじゃん。他にも色々獲りたかったけど、面倒になって結局受けてすらいないし」

 それも同じ話か。

 「そのちょっとだって、当時は結構凄い話だったでしょ。情報処理課全滅だったのに商業課から受かってさ。情報処理課の担任、涙目だったよ?」

 「まぁ、それだけは唯一頑張ったって言えるかもしれないけどさ。でも、他はたいしたことなかったし」

 なんでこう自虐的なのかは知らないけど、

 「だから、俺なんて口ばっかりで全然頑張れてないって」

 あくまでそういう認識らしい。

 「三年の体育祭の時なんて。応援団席の後ろに飾るでっかい看板を一人で全部描いてたじゃない」

 何じゃそりゃ。

 「いや、アレは……書き手もいなかったし」

 「漫研の後輩とか駆り出せなかったの?」

 素朴な疑問を突っ込む。

 「いや、それがさ。体育祭と文化祭の間が一週間しか無くて、そっちの準備も忙しかったのよ。他の団からの要請も断ってたし。描けないやつが何人いても邪魔だからさ、準備とか以外は一人でやった方が早いから」

 うへぇ。仕方なくなのか、当人の頑張りなのか、よく判らなくなってきた。

 「文化祭の方は大丈夫だったの?」

 「部の方はね。ただ、クラスの出し物は俺がぶっちぎったせいでちょっと酷い有様だったけど」

 Kai君は舌を出して笑った。なんで、彼一人が頑張らないだけでクラスの出し物が酷いことになるのか。

 「体育祭の準備中に、卒業アルバムの撮影とかも手伝わされてなかった?」

 「なんで知ってるの? 俺、言ったっけ?」

 なんかもうめちゃくちゃだな。ただのお人よしなだけな気がしてきた。確か主人公もお人よし過ぎる設定。

 「あと、頑張ってた話じゃないけど。わたしの趣味について打ち明けたとき、あなた笑わなかったじゃない」

 そういうシーンもアニメで見たな。

 「ああ、あれか。別に笑うとこなくね?」

 Kai君はごく当たり前な風に言う。『それ』がどんな趣味かは知らないが、当人が他人の目を気にしていたんだとすれば、結構キュンと来る話だったんだろうなと推察できた。

 「そして、その鈍いところも」

 伊藤さんは涙を浮かべながらも、にっこりと微笑んだ。


 帰宅して、彼にメールを送った。

 ちょっと悩んだけど、Kai君に会ったことも伝えた。

 案の定というかなんというか、直ぐに電話が掛かってきた。

 「どういうことよ?」

 それは色んな意味で言っているんだろうな。

 「それがね……」

 今日あったことを、包み隠さず伝える。

 最初はやきもちを焼いていた彼だったが、仕舞いには「俺も会いたかったな」みたいな事を言っていた。

 日常の中に紛れ込んだ非日常。たまにはこんな日があってもいいんじゃないかな。


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