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僕が経験したチープな出会いの話  作者: 遊月奈喩多
3/3

後編 楽しい時間を過ごさせてもらいました

こんにちは、すぐ終わると言っておきながら結局1週間くらいはかかってしまう遊月奈喩多です!

久しぶりにお昼の投稿ですな!

ということで、お昼時に対応したようなコメントを出したいのですが、内容が内容なので……ふふふ。

深夜の墓地で幽霊少女と出会った自宅警備員、新崎 新。

彼の明日は、どっちだ……!


ということで、本編スタートです!

 ジョギング中に携帯電話を落としてしまった僕は、草木は眠ったとしても少なくとも僕の周囲に眠っている人間がいない丑三つ時の墓地で、1人の幽霊少女と出会った。暗闇の中とは思えないクリアな発色をした美脚の幼女は、僕の「お化けなら僕の電話探してくれない?」という質問に対して「うん」と頷き、代わりに僕の実姉を、幼稚園・小学校時代には尊敬すべき高みの人物として崇敬して、中高生時代は性の対象として意識しまくって、大学時代にはそんな感情なんて超えた愛情を持って一生見守っていきたいとさえ思うようになってきた、僕にとって唯一無二の存在を、要求してきたのである。

「あのさ、幼女」

「ななみ」

 ……そうだったね。

「あのさ、……ななみちゃん」

 言い直すように頼まれたらちゃんと言い直すさ、僕は紳士だからね。

「でさ、ななみちゃん。携帯電話って、普通の連絡ツールだぜ? なくしてしまったら、どうしても見つからないくらいのレベルになってしまったら買い換えてもいいかなくらいの物だぜ? それを探してくれって頼んで、その代償が僕の姉? どうして携帯の代わりが姉なんだい? 僕の得る物に対して失うものが大き過ぎるような気がするんだけど、それって気のせいかな? 僕が携帯電話を探してる理由ってさ、単にあの中に僕の個人情報が詰まってるっていうのもあるけど、まぁそれは充電切れしてる今なら特に問題はないだろうし、目覚まし代わりとして使ってるって言ったってそれは本物の目覚まし時計を使えばいいだけの話なわけであって、別にそこまで躍起になって探すようなものでもなくてさ、つまりは家族と連絡を取れるようにしておきたいから僕の手元に置いておきたいっていうのがまず理由なわけさ。で? 家族と連絡を取るための携帯電話を探してもらうのと引き換えに? 僕の? 大切な家族を? 差し出せ? それって、もう何の意味もなくなったりしないかな? ななみちゃんはさ、お人形で遊ぶ?」

「……あそんでた」

「よし、それなら話は早い。君が僕に携帯電話の代わりに僕の姉を差し出せっていうのがどういうことかっていうと、君がお人形で遊ぶじゃん? で、遊ぶときに着せ替えとかするとして……まぁ人形の着せ替えって僕の趣味でもあるから例えにしやすいんだけど、そのお人形に着せる服をどこかに落としたとする。で、僕がその着せ替え用の服の在り処を知っていたとする。それで、君が僕に『お人形に着せる服を探して欲しい』ってお願いした時にさ、僕が『だったらその人形を僕によこせ』って言ったらどう思う? それなら僕に見つけてもらっても仕方ないって思わないかい? だってさ、遊ぶパーツを探すために遊ぶ物自体を取り上げられてしまうんだぜ? どうよ、それについてどう思うよ。まぁ、ななみちゃんだってそう思うだろうけど、それってさ、そうやって見つかってもさ、もうその時点では見つかった物には何の意味も無くなってしまうと僕は思うんだよね。ななみちゃんは? ななみちゃんは、そう思わない? 思う? 思わない? ねぇ、違うかな。僕は何か間違ったことを言ってるかな? ねぇ、答えは? お返事は? 君がどう思うってことを訊いてるんだけどなぁ、僕は。ねぇ、答えろよ」

「……おもう」

「思う? 何を? どういう風に思うって? あのさ、僕はわりと本気で怒ってるんだよね。携帯の代わりに人間を差し出せってさ、ふざけたことを言うなよ、幼女? いくら君が綺麗な脚をしているからといって、そう何もかもを許せるほど僕だって寛大じゃないんだ。そんなことを言うんだったら、僕だって君に新しく代償を要求しなくてはならないよ? もちろん、それだって姉と引き換えられるようなものではないけどね。でもそうすると、君だってきっとまた何かしら要求してくるんだろうから、それってものすごくキリがないしすごく面倒なことだとは思えないかな? だったらここは1つ、君が僕の携帯を見つけるうえでの代償についてもう少し譲歩してくれればとても簡単に事が運ぶとは思わない?」

 と、目の前の幽霊幼女(本人いわく「ななみ」という名前らしい)がおずおずと僕のことを見ながら話しかけようとしていることに気付いて、僕は言葉を止めた。

「どうした、ななみちゃん?」

「……えっと。じゃあ、おじさんのお姉ちゃんじゃなければいいの?」

「うん、まぁそういうことかな」

 ついでに大事なものからも離れてほしかったけど、そこまで求めるのは何だか大人げないような気もしたし、何より年端もいかない幼女を半泣きにさせていきり立っている自宅警備員という自分の状況を客観的に見てしまった以上、何というか、先ほどまでの「姉を守るためなら目の前のこの幼女など再度殺してしまっても構わない」くらいの気概はあっさり失せてしまったというか、いやもちろんだからといって姉を差し出すかと言われればそれは断じてノーの一言なんだけど、少なくとも、姉を危険に晒すなら幽霊だろうと神様だろうと殺してみせるみたいな情熱はすっかり冷めてしまっていた。

「うーん、だったら……」

 ところで、ななみちゃんには悩んでいる時、横に揺れる癖があるらしい。揺れているから、自然にスカートも横に揺れ、そして裾が揺れるたびに、普通に立っていればスカートに隠れてしまっている部分の脚もちら、ちら、と見え隠れするのである。ただでさえ形の綺麗な脚。そしてやはり太ももも……、ごくり。しかし残念な――もとい幸いなことに、うっかり理性が僕からフェードアウトする前に、ななみちゃんは代償を決めてくれた。

「じゃあ、おじさん。今夜、いっぱいあそぼ?」

 その誘いを、僕が断るはずがなかった。


 その後僕が数時間をその墓地で費やしていたことに気づいたのは、朝日が墓石を照らしていき、ななみちゃんが消えた時だった。そしてベタなことに、僕の手のひらにはななみちゃんの柔らかくてもちもちですべすべで小さくな太ももの感触の代わりに、少し冷たくて味気ない、それでも僕にはやはり大切な、携帯電話の感触。

 いやぁ、楽しい時間を過ごさせてもらいました。

 そのうえ、僕の手元には携帯電話が戻ってきている。

 これを以て世の中ちょろいなんてことを口走れるほど僕はこの世の中について無知ではないし、もしかしたらまだ何かオチがあるんじゃないかなんて危惧を抱いてしまう程度には、僕は人間に対して――たとえそれが幼くて、しかももう生きていない相手であっても――不信感を持つ性質だ。それも、それなりに経験を積んできたゆえのことだと……僕は思っている。

 ともあれ、もちもちすべすべの脚を実質ノーリスクで堪能できた喜びの前に、僕の心は浮き立っていた! Hooooh!

 ということで、帰宅してすぐに自室の洋服ダンスの上に作った屋根裏部屋に直行し、ななみちゃんに携帯の代償として姉を差し出すことの無意味さを説くときに例示した人形で遊ぶことにした。

「じゃあ、今日は姉さんの服でも着せてみるか」

 そんなことを思い立って、実姉が幼い頃に来ていたという洋服を人形に着せてみる。うん、やっぱりよく似合う。触るとぷにぷにと指を押し返してくるところも、かわいらしい顔立ちもみんな好きだけど、何よりもやっぱりこの脚である! 決して僕のホントの好みであるすらっと伸びた感じではない。それでも見た目も綺麗だし、まだかすかに弾力が残っているし、すべすべしているし、……あぁ、そうか。道理で。

「そりゃ、ちょっと臭ってきたりもするよな」

 この人形も、そろそろ捨てなきゃいけないね。わりと気に入ってるんだけどなぁ。脚スベスベだし。でも、もう仕方がないのかもしれない。

 それにしても、まさか「この子」だったとはな。

「君、そんな名前だったんだね」


「そうだよ?」

 ついさっきまで遊んでいた、幽霊の声。


「思い出してくれた?」

「ここに持ってくるとき、名前なんて知らなかったよ」

 あーあ。

 やっぱり、オチってやつはあったらしいや。

こんにちは、前書きに引き続き遊月奈喩多です!

後編「楽しい時間を過ごさせてもらいました」はいかがだったでしょうか? サブタイトル通り、皆様にとっても楽しい時間になっていれば幸いです!

脚フェチでもいいじゃない、にんげんだもの。

ということで、また次の作品でお会いしましょう!


ではではっ!

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