1節
彼はしばらく呆然としていた。
気が付くと、右手には説明書、左手には彼女(?)の空色のワンピースを持っていた。
「説明書・・・そういえば、あいつって女の子ってことで良いのか?」
女の子、と呼ぶことに疑念が生じている事もふくめて、何も忘れていないことに安堵していた彼だった。
彼はその後すぐ、空色のワンピースを洗濯機に入れ、説明書を持って自分の部屋へ駆け込んだ。
説明書を見るのは、とりあえず[お風呂に入る事が出来る]のかどうかという事だ。
説明書によると、[後頭部にあるLANケーブル・USBメモリ差し込み口以外は水が付いても大丈夫です。]との事だった。
大丈夫かな・・・と彼は呟いたが、
「は~きもちよかった~」
と彼女(?)がお風呂から出るなり叫んでいたので、彼は安心した。
「あらた!おふろあがったよ!」
「はいはーい。」
説明書を机の鍵付きの引き出しに入れ、小走りで風呂場へ向かった。
彼女(?)に、「いっしょににはいりたかった!」と言われたが、彼は優しくチョップし、すれ違って行った。
彼は、風呂から上がると説明書を最初から最後まで読んだ。そしてこう思った。
「このまま普通の女の子のようにして接するべき・・・なのか?」
彼女は、「人間」と「ロボット」の間の、「comloid」として生きている。
彼女は生きている。




