私の走る意味3
「で、百メートル最後のメンバーはミサキだ。今日はこれで解散だ。連絡事項はない。各自帰るなり自主練するなりしろ」
そういって顧問は職員室に戻って行った。
「すごいねミサキ!二年生で選手になったのミサキだけだよ!」
隣でマユが自分のことのように喜んでいた。
「ミサキすごい頑張ってたもんね。努力が報われて私もうれしいよ」
そういって泣きマネをするマユ。
「あんたは私のお母さんか」
マユの頭にチョップを入れてやる。
「えへへ。でも本当によかったね。彼氏さん喜んでくれるかもよ」
「いや、だから彼氏とかそんなんじゃないって」
「またまた。毎日一緒に帰ってるのに?」
「帰りの方向が同じだけなの」
嘘ではない。あとで知ったのだが実はサカキは私のご近所さんだったのだ。
「ふーん。意地でも付き合ってないと?」
「付き合ってない」
「好きなのに?」
「好きでも、って何言わせるの!」
「やっぱり好きなんだね!」
マユは目を輝かせて喜んだ。もう恋バナをする時の女子の目になっている。
「いつから好きなの?」
「・・・知らない」
「えー。そんな冷たいよ。私とミサキの仲じゃない」
「・・・それでも内緒」
「告白とかしないの?」
「こ、告白なんて、できないよ」
自分でもわかりやすいほどに動揺してしまった。
「えー。なんで?ミサキかわいいから絶対大丈夫だよ」
「やめて。そんなことないから」
「顔赤くなってるよ。かわいいなもう」
そういってマユは私に抱き付いてきた。
私は自分でも顔が赤くなっているのがわかるほど熱くなっていた。きっと夏の日差しのせいだ。
「もう。早く部室行って着替えよ」
「そうだね。彼氏さん待たせちゃ悪いもんね」
「だから、違うって」
私たちは部室に行って着替えてから別れた。
「それじゃあまた明日ねミサキ。彼氏さんと何かあったら教えてね」
「だから違うって。また明日ね」