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夢食いと愚者  作者: 根谷司
≪禍根の瞳≫編
1/37

プロローグ・気高き意思は容易く折れて

 ――お前が守りたいもんはなんだ。


 と、向かい合ったそいつに訊ねられ、俺は疑問ごと否定する。


 ――そんなもんありゃしねぇよ。そんくらいは解ってんだろ。なんの嫌味だ。


 すると、そいつはさらに質問を重ねる。


 ――お前が守るべきもんはなんだ。


 俺は自嘲しながらこう答えた。


 ――知らねぇな、と言いたいところだが、あれだ、俺はナルシストだからよ。自分が大事っつーわけで、俺が守りたいもんは自分自身だ。


 その返答に、そいつは卑屈な笑声を上げる。


 ――成長したなー、ほんと。


 互いに作り笑いを浮かべたまましばし間を置いて、問答を続ける。


 ――おかげさまでな。随分後ろ向きな成長が出来た。


 その返しは嫌味のつもりだった。だが、俺の嫌味に対し、そいつは満足げにこう言うのだ。


 ――後ろ? はっ、どっちが前かも解ってねぇのに、どの口が言いやがる。


 俺は黙った。沈黙の理由は、そいつの言葉の真意を掴めなかったからに他ならない。


 ――なら俺が教えてやるよ。


 口を閉ざした俺の代わりに、そいつは続ける。両手を広げて、得意げに回答を紡ぐ。


 ――お前が守りたいもんは――




 そのやり取りの発端を、どこから語ればいいのか解らない。


 解らないから、一番最初まで遡ってみるとしよう。この場合での最初とはつまり、俺が一番最初に、「守りたいもんはなんだ」と、自分自身に問い掛けた時の事だ。


 そうさな、時系列で言うなら、一端は小学生の時で、中学生では何事も無かったからスルーして、高校に上がってあいつと遭遇した時まで時間が飛ぶ。そんな感じだ。


 あらかじめ明記しておく。


 これは、心にも無い事を平気で言う嘘つきであり、心無いことも平然とやってのける薄情者でもある、そんなクズの物語だ。

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