表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/3

一幕-残念、それはゲーム部でした。-

「告白だと思っちゃった? いやーごめんごめん。楽しくってつい……」

 そこからの話は、帰り道を二人で歩きながら、話半分で聞いていた気がする。

 人間は数十分しか集中を持続できない生き物だ。僕の集中力や記憶力、思考力は全て先刻の告白(だと僕が勝手に思い込んでいただけ)のシーンで使い果たしてしまっていた。だから大まかにしか把握していないがそこは仕方ないだろう。人間だもの。

 燎ヶかがりがおか高校ゲーム研究部は部員五名の弱小部だ。三年生が二名、二年生が三名。この高校では五名以上部員がいないと部活動として存続できないため、このままでは入部者がいなければ廃部となってしまうらしい。

 そこで三年生である紫条有架が幼なじみであった僕を勧誘しにきた、というのがことの顛末らしい。

 前々から有架姉は人をからかうのが好きな性格をしているため、実は僕も騙されたことは一度や二度ではないのだが、最近では大人しくしていたし、まさかこれほどの演技力を持っているとは知らなかったため、今回は盛大に騙されてしまった。というより、曲がりなりにも顔は美人であるため、その手の冗談は質が悪いのだ。この一件で僕は自分の流されやすさを自覚してしまい、何とも居心地が悪く感じる。

「でさー、入ってくんないかなー。ゲーム研究部。今なら飴ちゃんあげちゃうよ!」

 有架姉は袋に入った飴玉を見せびらかす。

 告白されるかも、という臨界点ギリギリの展開を期待していただけに飴玉一つではどうにも気が乗らない。

「口移しだったら考えないこともないけど」

 小声で言ったつもりだったのだが、その瞬間、赤信号で車が停止していて、僕の声は思った以上に目立ってしまう。

「……金輪際、私の半径30メートル以内に近づかないでね」

 サッと引く有架姉。だが、ここにきて『鋭角の要』が最速の土下座を披露する。頭を下げるのは久しぶりではあるが、毎日30回×6セットの土下座特訓を今も続けている僕はもはや角度だけでなく速度の域でも抜きん出ていた。日本全国のドゲザー(専門的に土下座をしている人たちの俗称)の中でもトップクラスの速度だろう。

「すいませんでしたぁ!!」

 そして応援団もかくや、というほどの大音声。これを見て許さない人間などいようものか。もしいたらきっとそれは極悪非道、悪鬼羅刹の類に違い有るまい。

「ちょ、ちょっと、カナちゃんってば!」

 動揺する有架姉に、僕は再度叫んだ。

「すいやせんっしたぁぁああああ!!!!」

 やがてガヤガヤ、と周囲に人垣が出来ている気配がした。僕の大声が人を集めてしまっているようだった。

 だが、そんなことはもはやどうでもいい。それよりも果たすべきことがあるのだ。今は許しを請うのが先だ。

「有架お姉さま!! まっことに、さーせんっしゃぁああぁあぁああああーーーー!!」


――


 調子にノって騒ぎすぎたせいで、有架姉からお許しではなく、左頬への強烈な右ストレートをもらってしまい、その日は災難な一日だった。

 翌日、いつも通り登校した僕は、教室へ向かっていた。

 幸い顔の腫れは一日で収まり、明日腫れが残ってたらクラスメイトにどう説明したものかと考えた言い訳総計12パターンをお披露目する機会は訪れそうにないらしい。

 季節はまだ四月。まだ部活に所属していない生徒も半分ほどいるのだが、例年の累計からすると、帰宅部のまま卒業する生徒は一割に満たないらしい。理由は生徒数の人数の割に設備が充実していること。おかげで部員五名の弱小部であるゲーム研究部ですら部室を獲得している。まぁその裏には薄汚い謀略が眠っているのだろうが、人生知らぬが仏である。こわやこわや。

 ゲーム研究部、通称「げーけん!」(そのビックリマークどこから来たの? あと、それどこの軽音楽部?)の部室は、部活棟一階の一番奥まった箇所にある。おかげで窓から見える景色はつまらないことこの上ない。コンクリート壁とイチョウの木が寂れた空間に生えているだけだ。……このように。

 さて、どうして僕はげーけん!部の部室に来ているのだろうか。登校して、教室へ向かっていたはずではなかったか。

「うん、えっと……、その、昨日はゴメンね。……なんだか緊張しちゃってさ」

 有架姉はそう言うと顔を赤らめてはにかんでいた。

 ははは、しょうがないなぁ。このお茶目さんめっ。

 というわけで、急に呼びかけられ、僕はそれにホイホイとついて行った形だ。ウホッ、いい女。とか言いながら。

「じゃあ、ここに署名もらってもいいかな……?」

 有架姉は小首を傾げてそんなふうに訊ねてくる。ああ、かわいいなぁもう。おじさん奮発しちゃうぞ☆

 紺野、要……、っと。よしこれでΟK。って、ん……? 

 何だよこれって、婚約届けとかじゃないのかよ、ガッカリ……。じゃあなんだよ。入部届……? あれ……?

 そういえば昨日はうやむやのうちに入部届を書かずに済んでたけど、やっぱりダメなのん?

 おいおい、ハハハー。まさかまさかの、そういう展開? おじさん、嵌められちゃった?

「カナちゃん、ホントにキモイね。ドン引きだよ。むしろドドン引きだよ」

「それは引きすぎだろ。ニュートン先生もビックリだよ。あと、なんか死相がするからそれやめて」

「トコトン引きだよ」

「速攻ゲームオーバーになりそうな難易度だな」

「トコトコ引きだよ」

「途端に可愛くなったな、あと結婚しよう」

 あ、逃げた。高速で三メートルくらい引かれた。そして地味に精神的ダメージでかいなこれ。


 キンコンカンコーン!


 チャイムの音に気を取られた隙に、有架姉は部室の扉を潜り抜けてしまう。開かれた距離は手を伸ばしても届かない。

「30メートル以内に近づかないルールは無くなってないんだからね! 部の存続のために入れてあげたけど、幽霊部員じゃなきゃダメだからね! 言うこと聞きなさいよッ!」

 そんなふうに一方的に告げるだけ告げて有架姉は背を向けて走り出す。確かにそろそろHRの時間になる。急がないと僕も遅刻する。

 それにしても……。

 有架姉ってばツンデレだよな……。

「……都合のいい妄想するなぁー!」

 遠くから有架姉のツッコミが聞こえてくる。

 ……ていうか、モノローグにツッコむなよ。

・有架篇その2。

入部しました。


・もう少し会話を盛り上げたいところ。

今後要精進ですね!


・分かりにくいパロディ解説

ドドン! どどん波を打つときの掛け声です。原作では死ななかったんだっけ。ちょっとうろ覚え。そっか。死んだのはピッコロ戦が最初か。

……まぁ死にそうなのでアリ。アリ、だよね?


・トコトン。

難易度トコトンは大抵激ムズです。にわかな僕はあっという間にばたんきゅ~です。

あれ? 辛口とか言うんだっけ? やっぱりうろ覚え。テキトーでさぁっせんっしゃあああぁああぁああぁああ!!


・トコトコ。

なんだ、これ? まぁ可愛いからいいや。


・追記。

五名と言っておきながら三年と二年の合計が三人だったので修正しました。

土壇場で三名から五名に変更したので周りまで見てなかったという……。

申し訳ありません。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ