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『フレッシュ』から考察:クローンは私と同じ夢をみる?

 こんばんわ。初めまして!

 深夜テンションなので、自作からふとわいた考察をひとつ。


 『フレッシュ』では、世界観の主要な成分として≪スキン≫という用語が多々登場しますが、これは一口に言えば「クローン」です。作中には全4種のクローンが登場します。


 同種のクローンでは、当然ながら外見も遺伝子も同じはずです。

 でも、クローンたちの脳内の記憶に関する領域も同じか? 


 今回、筆者は論文など何も渉猟しょうりょうしていないので専門的な話ができかねますが、脳内には無数の神経細胞が張り巡らされていて、思考や行動をするには、神経細胞に特定のパターンで電流がながれることが主要であることは分かります。


 ここで「無数の神経細胞」とは書いていますが、それは中華麺にオ○フクソースを混ぜるがごとくグチャグチャにしてもいいという意味ではないでしょう。


 神経細胞の規則的なつがなり=電流がながれる道 と見立てた場合、それは1人の人間(の人格や記憶)を構成するうえでアイデンティティと呼べるほど重要な情報であるはずです。


 それがクローンのもととなる細胞(あるいはDNA)に含まれているのか?


 あくまで考察なので、答えはありません。


 しかし、筆者は『フレッシュ』内にて、素人考えながら次の結論を出しました。「クローンのもととなる物質に、神経細胞の構造に関する情報は含まれていない」と。


 タイトルの「クローンは私と同じ夢をみるか?」と言う問いに対しては、「現実的に考えるとNOである」が答えになります。含みの理由は以下。


 クローンは通常、赤ん坊として産まれます。

 29歳の人物Xの細胞から作製したクローンも、産まれたては0歳児の姿をしています。


 上記の疑問について、もし筆者の考えが誤りであれば、その0歳児の脳内には同じ遺伝子をもった29歳の人物Xと同じモノを考える神経細胞の構造が最初っから存在することになりますが……そんな薄らキミ悪い現象は信じたくないですよね?


 29歳の人物Xの細胞から作製したクローンは、人物Xとまったく同じ条件下で、29年の歳月をかけて育成することではじめて「同じ夢をみる」状況になるはずです。


 『フレッシュ』では、この条件という面については、極めてファンタジーなアイテム≪INC(インク)≫というものが解決しています。


 単に、クローンを任意の年齢(ここで言うと29さ……は少し行き過ぎなので10歳)相当サイズまでいっしゅんで大きくできる成長剤ですが、ここに脳内の神経細胞についてもテコ入れをするような作用があることで、膨大なデータを瞬時に処理できるようになっているのです。


 つまり、ここは『フレッシュ』の世界ではないので、今後出現する筆者や皆さんのクローンは同じ遺伝子をもっているだけの子ども! 脅威足りえない存在です。知らぬ間に単為生殖したくらいに思っておけばいいでしょう。安心してください。


 ただし『フレッシュ』の世界であれば、自分が目を離した隙に、自分と同じサイズをした自分と同じ遺伝子をもつ存在が立っている可能性が出てきます。


 言語化すると、恐ろしいものです。


 その存在が明日には、自分がいるべき場所を全部奪い去ってしまうかもしれない……そんな恐怖に駆られてもしかたありません。

 クローンのもととなった人物と親しい間柄にある人々も、その人と同じ顔をもった別人がいつの間にか隣に立っているかもしれないと考えると、気が気でない思いがするでしょう。


 『フレッシュ』の主人公・水鈴はちょうど友人が事故で死に、翌々日にその友人が新しい(クローンの)からだとなって会いに来る、という目に遭います。

 友人は新品のからだを除けば、言動も何もかもそのまんま。映画監督の父への強いあこがれも死ぬ前と一緒というのです。


 しかし、2人で思い出の映画を観たとき、水鈴は友人が明らかに別人であるように感じました。


 ……あれ? 『フレッシュ』のクローンは、ファンタジーなアイテムのお陰で、もとの人物と同じ思考ができる同じサイズのクローンってんじゃないの?


 作中では、水鈴がここで覚えた違和感のみにスポットを当てていますが、水鈴はその先のことも考えるべきでした。


 なぜ、水鈴は映画観賞を通じて、友人がまったくの別人だと感じたのか? 

 それは友人の脳が、視聴している映画を「思い出の」映画として処理できなかったことに起因すると筆者は考えます。


 先ほど≪INC(インク)≫の紹介で記述した「脳内の神経細胞についてもテコ入れをするような作用」ですが、これはどのクローンにも使える普遍的な作用でなくてはならないため、水鈴の友人の脳内という限定的な環境を瞬時に再現できるわけではありません。


 友人の新しい(クローンの)からだの脳へ、友人の人格に相当するデータを入れた際、それが問題なく機能するように「神経細胞による回路の基盤」をあらかじめ作っておくようなイメージでしょうか? 


 実際、出来上がった基盤に人格相当のデータが入るとそれらしく動きはするのですが、最適化されていないばかりか、とりわけ事象と記憶を紐づけして思い出すような作業をしようとすると「神経細胞のつながり(思い出までの道)がない」といった事態が起こり、パニックや意気消沈といった異常を引き起こすこともありえます。


 これを水鈴は違和感だと受け取ったのではないか?


 要するに、『フレッシュ』の世界においても、産まれたばかりのクローンはもとの人物と同じサイズまで成長していながら「同じ夢をみる」ことはできない存在に過ぎないという結論に落ち着きます。


 クローンは現実でもファンタジーでも産まれたが最後、誰からも「○○(もとの人物)と違う」と嫌われて、自分の力で何者かにならなくてはいけない。


 そういうことなのでしょうかね。かわいそう。

 だから、初めから≪スキン≫(=クローン)を道具・資源としてしか認めない『フレッシュ』の世界観は、クローン技術のたどり着く地獄でありながら究極的な活用法かもしれません。

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