神様の秘書希望
「神様〜、仕事してもらっていいですかあ?」
書類の束を持って、探していた神様に突きつける。
「今まさに仕事してますよ〜」
へらりと笑う神様に、俺は紙でバシバシ叩いた。
「書類仕事が嫌で、現場に出ているだけでしょ?あなたの本来の仕事はこっちです」
「それなら君の本来の仕事は、輪廻転生先を選ぶことです。決まりましたか?」
「…いや、まだ」
「じゃあ、お互い様です」
にっこり笑う神様に、いやそれはまた話が別だろと思いながら、俺はため息をついた。
なんでも前世で徳を積んだから輪廻転生先が選べるのでどうぞと、ここに連れてこられたのがひと月くらい前。
でも死んだ時点で、前世も何も覚えてないし、特に行きたい先もないし、保留ということでここでのんびりさせてもらっている。
性分なのか、元社畜なのか、神様の仕事のずぼらっぷりが気になって、仕事のアシスタントをしている始末。
こういう誰かのサポート的なのは向いているらしいので、転生先もそんなところがいいなあとぼんやり思い始めたくらいには、進歩したかなと。
「だいたい、輪廻転生先なんて選んでいいんですか?秩序とかないの?」
「ありますよ、ほとんどの人は選べません。私たちが勝手に決めます」
「俺も、それがよかった…」
「そういうタイプは選ばされますね」
「優しくないシステム…。そもそももう一回生きるとかピンとこないし」
神様が散らかした書類を分けながら、ここに来てから覗いてみた色んな世界を思い出してもやはりピンとこない。
「どこでもいいんじゃないの?どうせ生きなきゃなんでしょ?」
「人間になるとは限りませんよ」
「ああ、その辺の石ころとかなら楽そうだよねえ」
「消極的ですね〜」
「現実的でしょ」
「ドロドロの暗黒世界よりは、魔法が使える世界の方がいいな〜とかもないんですか?」
「ん〜。ここで神様の手伝いしてる方が性に合ってる」
「そりゃあね、助かってますけど!でも、だめです。選んでください」
「じゃあ、保留で」
「またそれですか〜!?」
「はい、神様。これ、次の決済書」
「書類仕事やだ〜〜〜!!!」
ここでゆらゆら過ごすことが案外気に入ってきたので、神様に追い出されるまで、ここに居座ろうと思っている。
特にどこに行きたいとか、誰になりたいとか、ないし。
ずっとここに置いといてくれたりしないかなあ。
まあ、とりあえず、使える人間は手放しにくいと思われるために、俺も働こうと思う。
「はい、神様、働いてくださ〜い」
了
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