高架下のミーティング
笹村涼、高校三年生。
「ったく、金沢のやつ。」
「次やったら退学って、何回目だよ。」
タバコを咥えながら、廊下を歩く。誰もが自分たちを避けていく。神奈川県立浅華高校。県内でも有数の底辺高校。彼らにとっては、縄張りのようなものか。妙なプライドがあるらしい。
「おい、笹村。」
「んだよ。」
「、、、チッ。何ぼーっとしてんだよ。“高架下”!」
「やべぇ」
「遅れるぞ」
「おう」
今日は、大切な「ミーティング」(ワルい奴らが集まる会合をこう呼ぶことにする)。暴走族「浅華バタフライ」。先代のシンジさんが、リョウたちの代の総長とか、そういう役職を任命する日だ。ちなみに総長は、赤い特攻服を着ることができる、というのがこの「族」の伝統だ。
「笹村」
「なんだよ。」
「・・・(へぇっ)」
「あん?」
「いや、俺、朝からキンチョーしててな。飯も食ってねぇ。」
「ダセェんだよ(ゲンコツ)。」
「リョウさん、総長の座は俺様がいただきますってな。」
「バカ(ゲンコツ)。」
「うーーーーーっす!!」
高架下にいた全員が、頭を90度に曲げる。そこには、今年の春浅高を卒業した、シンジさんをはじめとする先輩方の姿。大人になってる。とんでもなく怖い。リョウとタクミも慌てて頭を下げる。
「じゃあーー、今日は六代の総長ー、言うからー。みんなよく聞くようにー。」
「うーっす!」
五代目の先輩達。懐かしい顔ぶれが並ぶ。返事の声が小さくてぶん殴られたり、勝手に他校のワルにケンカふっかけて顔面キック喰らったり、ろくでもない思い出が浮かんでくる。
「六代ー。総長ー。リョウ。」
「副総長ー。タクミ。」
「前に出てきてー。」
「浅華強くすんのはお前たちだかんな。頑張れよ。」
「あい!!!」
そうして先輩たちは行ってしまった。卒業しても最近はこの辺をウロウロしているらしい。リョウもタクミも、まだ先輩に街で出会ったことはないが。
「総長、お疲れ様ですっ!」
「バカ(本日三度目のゲンコツ)。」
タクミの笑顔は眩しい。
「いくか。」
新しくできた道路の急カーブを曲がる。リョウのバイク、カワサキの400cc。いつも通り、ガンガンふかしながら下っていく。リョウは先頭。その次にタクミ。やっぱり族はこうでねぇと。俺は浅高のアタマだ。ケンカには自信がある。男だって女だって、ぶっ飛ばしてやる。まずは、峡西のヤツらからだな。
そして、ポケットからセブンのタバコを取り出した。




