想う想い
《しあわせとはなにかみせてほしい》
震える声で云われたけれど
僕は子どものころは
しあわせを夢みる
だけの飛べないとりだったよ
泣きそうな声で希まれたけれど
僕はすこし大きくなって
しあわせを振り切りたい
血まみれのイノシシになりたかったよ
AIが
すべてを理解したうえで
答えてくれるこんな世界になるなんて
あの頃は想いもしなかったな
ホワイトへ
より
ホワイトへ
世界は向かっている
うすら汚れた僕の心の隙間にさえ
ひとしきり涼し風が吹いて
こんな世界に生きるのも
まぁ、悪くないのかなと想おうとしている
AIが
ひとよりも賢くひとを助ける
ひとよりも優れた存在になるなんて
このまま行けばどうなるかはバカでもわかる
ただ触れ合う心地よさは
生き物にしかわからない
わからないはずだ
そしていまも僕はただ
触れ合う心地よさだけが
しあわせなんだって想う
まとまらない心の中で
一点に向かって収斂してゆく
それが当たり前な想いなんだと想う
それが《好き》ってことだと
僕は心の奥のほうでそう想うんだ