〜紫重島の重力遺跡の秘密〜 空島神話 序章 **追われる少女**
空島神話
【むかしこの世は何もなく光の力が満ちていた。神は光の力を使い、空と空に浮かぶ島をおつくりになられた。
神は光を7色:赤は火、橙は土、黄は雷、黄緑は風、緑は木、青は水、そして紫は重力にわけ、人々へわけあたえた。それから神は自身を8つにわけ眠りについた。それ以来空は虹の民のものとなった。】
序章: 追われる少女
空を見上げると、そこには広大な青と白が広がっている。その間を縫うように浮かぶ無数の島々――
それが「空島」と呼ばれる世界だった。
空島は地上から遥か高く、どこまでも続く雲海の上に点在する。毎朝、七色の虹が空に架かり、その幻想的な光景は、住民たちにとって日常でありながらも決して色褪せることのない美しさを持つ。
この島々は、七色の虹に秘められた力を利用して成り立っている。それぞれの色が独自の属性と役割を持ち、人々の生活に欠かせない資源となっていた。
•赤:赤炎島侯爵領は軍事の要。
•橙:橙土侯爵領は鉱山と工業の中心地。
•黄:黄雷侯爵領は電力と通信を担う。
•黄緑:柳風侯爵領:虹の風の力が息づく輸送と商業の拠点。
•緑:緑木侯爵領は肥沃な大地を持つ農業の中心地。
•青:青水侯爵領は医療の発展を担う。
•紫:紫重侯爵領は学術と文化の都。
その中心には、皇帝直轄の帝都が君臨していた。空島全域を統治する権威の象徴であり、七色の虹の力をすべて束ねる「虹の玉座」が存在するとされている。
だが、この美しい世界には陰りがある。虹の力を巡る利権争いと、それを抑え込もうとする皇帝の強権的な支配。強大な力を持つ者は疎まれ、場合によっては利用され、時には恐れられる――その例が、ティアだった。
ティアは塔の中を必死に駆けていた。その髪は月光をそのまま織り込んだようなプラチナブロンド、瞳には黄金の輝き。彼女の存在そのものが空島の伝説を映し出していたが、同時にその異端さが彼女を苦しめていた。
虹のすべての力を操ることができるティア。通常、一人の術師が操れる力は二色か三色が限度だ。それなのに、彼女はすべてを支配する。まだ十歳だったティアは「空の智」と呼ばれる賢者たちの手により、家族から引き離され、塔の中に隔離された。空島の均衡を崩しかねない存在として、彼女は隠され、そして恐れられたのだ。
空の果てに浮かぶ島、その中央にそびえる尖塔の石段を、ティアは息を切らしながら駆け上がっていた。風が彼女の頬を切るように冷たく、耳には迫り来る足音が重く響く。
「急いで!捕まれば終わりだ!」
前を走るアーサーの声が冷たい石の回廊に響く。青い髪を持つ少年はティアの世話役であり、「空の智」の塔に閉じ込められた彼女にとって唯一の味方だった。
塔の外には風が強く吹き、空の彼方には薄く虹がかかっていた。その美しさが、今はどこか遠くの世界の出来事のように思えた。
この空島で彼女が生き抜くためには、その力を隠し、逃げ続けなければならない。しかし、追っ手の影は刻一刻と近づいていた。虹の美しさに満ちた空島の壮大な光景の中で、少女の孤独な戦いが始まろうとしていた。
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すみません。初心者のため表示の仕方、勉強します。