君へおはよう
今日もいつもの時間の電車に乗る。
5号車の後ろのドア。彼は隣の駅から乗ってくる。
同じクラスの男の子。私は彼のことが気になる。
今日こそ彼に「おはよう」と言うんだ。
窓の外を覗くふりをして横目で彼を見る。
彼はいつも本を読んでいる。
学校では活発な彼の一面を知っているのは多分私だけだと思う。いや違うかも。
今日こそ彼に「おはよう」と言うんだ。
学校の最寄り駅に到着する。
多くの人が電車から降りる。
彼を見失わないように絶妙な距離を取って歩く。
改札口は4つしかなく毎日詰まっている。
もっと改札が少なければ彼に会えるかもしれない。
彼はもう改札を通過しただろうか。
彼の姿は人混みに紛れてもう見えない。
今日も彼にたまたま会うことは出来なかった。
今日こそ彼に「おはよう」と言おうとしたのに。
学校までは徒歩10分。みんな友達と歩いている。
私は1人で単語帳を眺めながら歩く。
明日がある。明日がある。そう自分に言い聞かせる。
今日も彼に「おはよう」を言えなかった。