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やくもあやかし物語・2  作者: 武者走走九郎or大橋むつお
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001『やくもふたたび』

やくもあやかし物語・2


001『やくもふたたび』 





 ラスボスをやっつけて、達成感と虚脱感がいっぺんにやってきた。



 三か月かかったゲームも、これでお終い。


 エンドロールが淡々と流れ、最後にスペシャルサンクス……Yakumo Koizumi……と出てくる。


 あ……プレイヤーの名前、リアルにしてたんだ。


 ま、いいやオフラインでやってたし……コンプリートムービーが2クール目になりかけ、オプションボタンを押してゲーム終了をクリック。


 ホームに戻ると、ちかごろご無沙汰の『メディア』が気になってネタフリックスにしてみる。


 おすすめの映画……あ、これ見れるようになったんだ!


 流行り病のせいで映画館で見れなかった作品が見られるようになってる!


 近ごろのわたし、少しは人と喋れるようになった。そのぶん、あやかしたちとはご無沙汰になった……っていうか、あやかしの姿も聖霊の声も聞こえなくなった。


 寂しかったんだけど、いつの間にか学校の人たちとも、まあ、普通に話せるようになった。


 映画とかアニメの話をしている子たちが居て、いつの間にか、その話の輪の中に入れるようになったんだ。


 でね、流行りのコンテンツをネタフリで観るんだ。


 ちょっと無理してスタンダードプラン。


 中学生のお小遣いで月々1490円はお安くない。


 でも、まあ、自分への投資だしね。三月目からはお小遣いとは別に貰えるようになったし。


 まあ、まだ中学生だし甘えてもいいよね。




 それで、そのまま、日付を跨いで観てしまった!




 一日のうちにゲームと映画のエンドロールを観てしまうなんて、我ながらタフになったもんだ。


 二つの感動を胸に、そろそろ寝ようとコントローラーを持って、気が付いた。




 え……わたし、英語のままで映画を観ていた。





 画面の『選択』には英語と日本語があって、英語のところにアンダーバーが付いてる。


 あ、見終わって無意識に『選択』を英語に切り替えてしまったんだ。


 わたしの英語能力は[this is a pen]のレベルだからね(^_^;)。


 英語だと、ラストの台詞はどういうんだろ……英語でラストのところを映してみる。




 え……え……英語なんだけど、意味が分かる。分かってる!




 I’m feeling a little peckish――ちょっとお腹が空いた――と和訳しなくても理解できてる( ゜Д゜)!




 嬉しい1/3 びっくり1/3 気持ち悪い1/3 


 で、さっさと寝た。




 寝坊することも無く、いつものように起きて学校に行く。


 いつもの坂道を下って折り返しの曲がり角。


 曲がったところに三人の外人さん。スマホを見ながら困った様子。


 近ごろは、こんなところまで外人観光客の人たちが足を伸ばしてくる。


 地元民にはなんでもないところでも、外人観光客の人たちには新鮮なんだね。


 でも、どうやら地図音痴で、アプリの地図とリアルの地形を重ね合わせられないみたい。


「だいじょうぶですか?」


「あ……ええと、このつづら折りの坂道なんだけど……」


「あ、それなら、方角が逆です。こっちの道を……」


 そのつづら折りの道は、わたしにも思い出の道なんで情熱的に説明できた。


 


 ちょっといい気分になって回れ右……教頭先生が立っている。




 教頭先生は、時どきこの道を通って学校に通勤しているので、たまに見かけるんだけど、顔を合わせるのは初めて。


「小泉さん、きれいなクィーンズイングリッシュでしたね……」


「え……あ……?」


 そうだ、思い出したら外人さんとは英語で喋ってた。


「その英語は……」


 聞き咎めてるんじゃない、教頭先生の中にある情報と照らし合わせている、そんな感じ。


 教頭先生は、まだあやかしが見えていたころ二三の事件で関りがあった。


 能力がなくなってからは、普通の生徒と教頭先生の関係。直接口をきくのもその時以来。


「よかったら、放課後、職員室にきてください」


「は、はい」




 そして、放課後、職員室に行くと「この学校を受けてみないかい」と、ある学校を紹介された。


 三年生の秋になっても受験先が決まらないわたしは――この学校、面白いかもしれない――と思ってしまった。


 


 その学校はね、ヤマセンブルグ王立民俗学学校っていうんだ。




 しばらくぶりに、わたしの中に火が灯った気がした。


 


  

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