プロローグ
プロローグ
〈タンジーの砂時計 〜バトルアクション乙女ゲーム!!〜〉…
それはなんの変哲もない…乙女ゲームだった…
美男に囲まれて、美女がチヤホヤされる、そんなゲーム。
だけどちゃんとしたバトル要素が結構楽しくて…
オレは男ながらこの乙女ゲームにハマっていた。
夢を叶えられなかった現実に苛まれ…仕事以外にする事のなかったオレに…
幼少期のゲーム日和を…思い出させてくれたんだ
────ああ、オレの走馬灯はオマエか…タン砂………
……相変わらず牛タン風砂肝が食べたくなる略称だぜ……
そうしてオレは人生の幕を閉じた。決していい人生ではなかったが
死ぬ前に〈タン砂〉のラスボスを倒し、メインストーリーを完遂できて良かった
もう心残りはない…来世は社畜で過労死なんかするアホにはなりませんように。
Good-Bye☆MFL
（訳：さようなら オレのクソみたいな人生）
────────…
「ん…んん…ッ」
なんだこれ…キャバクラの乳のデッケェ姉ちゃんに抱かれた時のような…
いい匂いと…ふわっふわの感触…巨乳地獄にでも落ちたかな…
そう思いながらオレは重い瞼を持ち上げる
「………？」
かすれて見える、絢爛豪華な部屋
それはまるで…ベルサイユ宮殿の中身のよう…
「…！？！？」
オレは飛び起きた
そこらの高級ホテルでもあり得ないような豪華な部屋
……なぜだか、見覚えがある。まさかネズミーランドのホテルか？
おそるおそる、ベッドから出ると…自分の体ではないような感覚がして
ゾクッと背筋が凍った。そしてフラフラと歩きながら鏡の前に立つ…
そこには、ボサボサで毛先の揃わない赤黒い髪
ヴァンパイアのようなキリッとした紅の瞳…顔には大きく古い切り傷
「…こいつは……ッ…」
鏡に写った男には、見覚えがあった
《マイセス・スカヴィオ》…！？
マイセス……それは、オレが生前やっていた乙女ゲー〈タン砂〉の登場人物だ
生意気系男爵…普段の生意気っぷりと主人公にだけ見せる甘えん坊な一面のギャップが、
プレイヤーの母性を奮い立たせる…はじめは誰もが、攻略相手の一人だと思うに違いない
だがメインストーリーを進めていくうちに主人公との関係の雲行きが怪しくなっていった
…マイセスは、主人公の恋路を邪魔する“悪役”だったのだ！
普通はこのタイプのキャラって女の子だよな？
……？え…オレ、タン砂の世界に来ちまったってのか？
なにかしらの悪役に転生？するって……オレがいた世界での“量産型設定”じゃねえか…！
量産型…苦手なんだよなぁ…タン砂は乙女ゲーは乙女ゲーでも斬新ジャンルだったから遊べたけど
一体なんの冗談だ…
夢と思うには色々と感触がリアリティすぎるから…現実なんだろう…
我ながら状況の飲み込みが早いな、うんうん！！夢のような修羅場には何度も出くわしたものだ
悪役なのは解せないが、辛すぎた社畜生の末に金持ちに転生できたのは非常に喜ばしい
こうなれば荒波を立てずに過ごすとするか…！！
オレは、生前ハマっていたゲームの悪役男爵に転生した
けど魂はオレなわけだし…悪役を装わなくったっていいはず
ゲームのストーリーのように、主人公の恋路を邪魔して
最期は倒されて死ぬなんてゴメンだ。
平和に…平和に過ごそう
そう…思っていたはずなのに
────コンコンッ
────To Be Continued…
