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場面23 庭先全裸大会(限定1名)

 二人が教会の居住エリアと思われる部屋に入ると、そこにはベッドがあり、少年が寝ていた。


「おねえちゃん?」


 少年は起き上がろうとしたが、アンナがそれを止めた。


「大丈夫ですよ。この人たちは新しい開拓民です。挨拶しに来てくれたのですよ。」


「はじめまして。マウロっていいます。」


 高い熱が出ているのだろう。視点が定まらない少年を見て芽衣子は胸が締め付けられた。


「はじめまして。あたしは芽衣子で、こっちは誠司よ。」


 首筋に野兎病特有の病斑を見つけた芽衣子は微笑んで自己紹介をしながら顔を近づけて病斑を確認し、誠司に耳打ちした。


「誠司。買い物リストにスポーツドリンク追加ね。」


「オッケー。ついでに患部の写真とか撮っておいた方が良くないか?ネットの写真と比較したりとかさ。」


 誠司の提案に芽衣子も納得した。


「そうね。アンナちゃん。弟さんの写真、撮っていい?昨日説明した通り何も害は無いし、治療に必要かもしれないから。」


 いくら少年の為になるとはいえ、勝手に撮るのも気が引けた芽衣子は許可を求めた。


「ええ、もちろん構いません。それでこの子が良くなるなら、いくらでもお願いします。」


 アンナは深々と頭を下げてお願いした。許可が下りたので芽衣子は近くにあった椅子をベッドサイドに引き寄せて座った。


「オッケー。マウロ君、ちょっと腕借りるわね。」


 芽衣子はそう言ってマウロの左手をとり、スマホのタイマーアプリを起動すると脈拍を測り始めたので、誠司とアンナは黙って見守った。


「おし、腕ありがとう。それじゃそのまま楽にしてていいからね。」


 脈を測り終えた芽衣子は椅子から立ち上がると、カシャカシャと音を鳴らせて撮影を始めた。


 最初は戸惑っていたマウロだったが、姉のアンナを見ると優しく微笑んだので、危険は無いと分かったのか肩のチカラが抜けていき、やがて寝息を立て始めていた。


 物のついでと思った芽衣子は動画の撮影を開始したが、マウロの寝顔が誰かに似ている気がして、その動きを停止した。


「ん?おい、メイ姉?どうした?」


 異変を感じた誠司はマウロを起こさないように小声で芽衣子に耳打ちした。


「ううん。何でもない。撮影も終わったし、行こうかしら。アンナさんもちょっといい?」


 アンナは頷くと誠司と芽衣子の後に続いて部屋を出た。





 礼拝堂に戻ってくると、芽衣子が話し始めた。


「やっぱり思った通りだわ。勿論あたしは医者じゃないから絶対に確実とは断言出来ないけど、確率で言えば9割ね。」


「そんなにか。でもその病気って俺は聞いた事ないけど、治療薬とか特効薬とか有るのか?」


「有るわよ。さっきも言ったけど風土病だからね。日本じゃそこまでメジャーじゃないだけ。あたしはハンティングに連れてってもらった時に見たから知ってたけど。」


 芽衣子はエッヘンと言いそうだったが、続くアンナの言葉に一気に小さくなってしまった。


「薬をお持ちなのですか?!」


「あ、いやあたしらが持ってる訳じゃないんだけど…。」


「では作るのですか?材料をご存知で?」


「うーん、それもちょっと。ただ、手に入れるから!」


「手に入れる?商人の方からですか?しかし次に行商人が来るのはまだ先です…。」


 希望が見えたと思ったアンナだったが、どんどんと暗い表情になっていった。


「大丈夫。俺らが何とかするから。難しいかもしれないけど、今は信じて待っていて欲しい。な、メイ姉!」


 アンナの暗い表情を見た誠司は殆ど無意識にクチにしていた。


「そうよ!絶対に何とかするから!あ!これあげるから!弟さんの世話をする前に体に振りかけなさい!ここを押したら煙みたいなのが出るから!それを浴びる事!少しはあなたの感染も予防できるハズだから!」


 芽衣子も誠司に乗っかり、虫よけスプレーを渡した。


「あ!それと、狩りはお休みして!食料なら後で誠司に届けさせるから!」


 芽衣子の提案に、アンナは乗ってもいいのか確認するべく誠司の顔を見た。


「ま、まぁ、バイクですぐだし。それくらいなら。」


 誠司の顔をじっと見たアンナは、やがて頷いた。


「はい、決まり!それとさっきの提案も考えておいてね?」


「わかりました。神父様と相談しておきます。」


 誠司には何の話か分からなかったが、芽衣子に背中を押されて教会を出た。








 しかし誠司は帰路でおかしい事に気付いた。


「なぁメイ姉。最初は虫よけスプレーで『100%防げる』って言ってたのに、アレを渡した時は『少しは予防出来る』って言ったよな?矛盾してないか?」


 自転車を漕ぐのが面倒になり、原付を運転する誠司の腕を掴んで動力を得ていた芽衣子は答えた。


「ああ、あれ?だって最初のは嘘だもん。」


 芽衣子の言葉に驚いて誠司は急ブレーキをかけた。芽衣子の自転車は慣性の法則で少し先に進んでから止まった。


「はぁ?!じゃあ俺らが感染する可能性って?」


「うん、ゼロじゃないわね。帰ったらすぐにシャワー浴びなきゃ。冷水でもね。」


 なんでもない事のように芽衣子は答えた。


「マジかよ!うっそだろ?!メイ姉を信じた俺がバカだった!!」


「何を細かい事を言ってるの!ケツの穴の小さいヤツね!!」


 逃げるように自転車を漕ぎだす姉と、それを原付で追う誠司だった。




 帰宅後、風呂場は芽衣子に占領された。


 しかし早く体を洗った方が良いと言われた誠司は庭先で一人全裸大会となった。

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