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クリムウォックにまつわること

作者: テン・テル

挿絵(By みてみん)


「ンモ〜、風呂上がりのビールは最高だモ〜」


ウシのコビトであるクリムウォックはいつものように、風呂上がりのビールを楽しんでいた。


湯船に入る前に身体を洗う。とても丁寧に丹念に隅々まで。昔の名残りかもしれない。納得できるまで身体が洗えたら湯船に浸かる。浸かる時間はキッチリ5時間。よくダシが出た頃合いに、クリムウォックはお風呂から上がる。


脱衣所で腰にタオルを巻く。左手を腰に、右手にビールを。


グイグイっ、と黄色い液体を一気に喉に通らせる。”のどごし”とはこの飲み物のためにある言葉だ。


「ンモ〜、今日も色んなことがあったけど、こうやって風呂上がりにビールを飲めばオールオッケーなんだモ〜」


脱衣所から部屋に移動してお気に入りのソファに腰掛ける。ソファはネット通販で買ったちょっと良いやつだ。


プシュ


早くも二本目に突入。プルタブを開けるときの快音は期待を裏切らない。


「さて、お気に入りの曲でもかけるモ〜」


クリムウォックはレコード派だ。スマホで音楽を聞いていたら、ヴィンテージマニアのダンディモンキーに笑われた。お前には”古き良き”という感性がないのか、と。


それからレコードにしている。


レコードから繋がったスピーカーの電源も忘れずに。


これもネット通販で買ったちょっと良い物だ。クリムウォックは買い物のために外出しない。”ものぐさ”という言葉がピッタリだ。


スピーカーから音が流れる。


♪ドナドナドーナードーナー、売られていーくーよー


流行りにすぐ飛びつくウール・ガイとは対称的に、クリムウォックはこの一枚をひたすら聞いている。


「世の中にどれほど曲があっても、心から共感できる曲に出会えれば、それだけで良いんだモ〜」


クリムウォックがいつどうやってトコビト星にやってきたかは誰も知らない。


クリムウォックも語りたがらない。


セツナ・バニ子が占いにハマっていた頃、彼女はクリムウォックを勝手に診断してこう言っていた。


「クリムくんは多分、ご両親と引き離されて売られちゃったのよ。そこで美味しい牛肉にするためにビール漬けにされたんだわ。出荷されるところだったのに何かの手違いでこの星にやってきたのよ、うん絶対そうに決まってる。」


セツナ・バニ子は思い込んだら盲目だ。その話をさも真実のように、会う人会う人に話しまわった。

挙げ句、トコビト星ではその話が真実になってしまった。


この星のコビトたちから見ると、クリムウォックはアルコール依存症だ。


それが故に肉が美味しくなる。誰が食べるわけでもないが。


クリムウォックはそんな噂などつゆ知らず、今日も極上の環境で大好きなビールを楽しむのだ。

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