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異能専科の猫妖精(ケット・シー)  作者: 風見真中
贖罪編
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贖罪編35 孤立無援の作戦会議


 誤解を与えてしまったネコメとトシになんとか事情を説明し、八雲が落ち着くまで買い出しに出て貰った。買い置きのコーラは飲んでしまったからな。

 二人が戻って来る頃には八雲も落ち着き、俺から離れてテーブルの横に座る。

「なるほど……とりあえず話は分かりました」

 テーブルを挟んでネコメとトシ、俺と八雲が向かい合い、泣きじゃくる八雲を抱き締めていた事情をかいつまんで説明する。尋問を受けている気分だぜ。

「でも、理由はどうあれ寮の部屋で女の子にあんなことをするなんて、どうかと思います。ここは仮にも学校の敷地内ですよ?」

「サーセン……」

 俺は正座を強要され、潔癖で生真面目なネコメさんに詰問されている。

「ね、ネコメちゃん、あれはあたしから……」

「だとすれば八雲ちゃんも、男の人に、だ、抱き着くなんて……」

 頰を赤らめて言いづらそうにしているネコメを、隣に座るトシが「まあまあ」となだめる。

「羨ましいならネコメちゃんもハグっちゃえば?」

「な、何を言ってるんですか⁉ 私は別に羨ましくなんてないですし、そもそも、男の人に……そんなこと……」

「いや、大地じゃなくて東雲ちゃんにって話なんだけど……」

「っ⁉」

 きゅう、と縮こまり、黙ってしまうネコメ。話が進まねえなこれ。

「なあ、その辺の話は一旦置いといてさ、今後の話をしようぜ?」

 このままでは二進も三進も行かない。

 八雲が戻ってきて状況は進展したが、未だ根本的な解決には至っていないんだ。

「今後って、二人がお付き合いするってことですか⁉」

「頼むネコメ、事件の話をさせてくれ」

 どういう思考してんだこの生真面目娘。

 緩んだ空気を引き締めるため、俺はトシが買い出しして来てくれた売店のビニール袋から飲み物を一本貰う。コーラはさっき飲んだから、ボトル缶のブラックコーヒーでいいかな。

「八雲は? コーラと……オレンジはネコメのか?」

「テキトーに買ってきたから、好きなもん取ってくれよ。つーか俺に確認しねえのな」

 トシはぼやきながらコーラを選び、ネコメは案の定オレンジジュースを手に取った。

「じゃあ、あたしもコーヒーで」

「ほらよ」

 袋に入っていた同じ銘柄のコーヒーから事実上のカフェラテみたいなやつを選んで渡してやる。甘党の八雲にはこれでいいだろう。

「ありがと、大地くん」

 にへら、と緩んだ顔で八雲はカフェラテを受け取る。

「……やっぱり私もコーヒーにします」

 ガサっと袋にオレンジジュースを戻し、残っていた微糖のコーヒーを取り直すネコメ。ネコメがコーヒーなんて珍しいな。

 ネコメはどこか不機嫌そうにボトルを捻り、口に含む。

「……苦い」

 何してんだよネコメ。

 なんか知らんが空回りしてるっぽいネコメを尻目に、俺もコーヒーを一口飲んでふう、と息を吐く。

「話を進めるけど、そもそも二人は何で部屋に来たんだ?」

 ついさっきまで生徒会室にいたはずの二人が、息を切らせながら急いでやってきた。

 しかも心配してとか言っていたし、何の用があったのだろう?

「会長に言われたんです。大地君が危ないから、今すぐ寮の部屋に行ってくれって」

「危ない? 俺が?」

 一体何が危ないと言うのだ?

 まあ確かに、八雲に薬を盛られた段階では危ないところだったと言えなくもないが。

 だとしても、テレパシーがある訳でもないのに、なぜ諏訪先輩に俺のピンチが分かったんだ?

「そもそも俺に用なら電話すりゃいいじゃん」

「お前のケータイ、電池切れてたんだよ」

「はあ?」

 トシに言われてポケットからケータイを出して確認するが、確かに電源が落ちている。

「……?」

 確かこの間も、気付かない内に電池切れを起こしていた。

 電話もゲームも最近はほとんどやっていないのに、どう考えても不自然な電力の消費だ。

 俺は首を捻りながら充電コードにケータイを繋ぎ、すぐに電源がつくのを確認する。気にはなるが、とりあえず今はそんなことどうでもいい。

「すまん、話を戻してくれ」

「はい。そのあと会長は、大地君が自力で危険を回避していたら、『私には何も報告するな』とも言っていました」

「それは、どういう意味だ? 報告するなって……」

 例えば今の状況、八雲の疑いが晴れた状態を諏訪先輩に報告すれば、事態は好転するか?

「……疑惑の段階ならともかく、今の八雲ちゃんは指名手配されている状況です。居所が分かれば、恐らく……」

「拘束される。少なくとも、自由に動けることはないか……」

 なるほど、だから諏訪先輩は『報告するな』なんて言ったって訳だ。

 諏訪先輩もマシュマロも、今はおおっぴらに八雲の味方は出来ない。八雲が指名手配されてしまっている以上、居場所が分かれば捕まえない訳にはいかないのだろう。

 だったら最初から報告を受けないで、八雲については事件が解決するまで知らぬ存ぜぬを通すしかない。

(でも、あり得るのか? あの計算高い諏訪先輩が、本当に情報を遮断するなんて……)

 諸々の事情を込みで策を練りそうな諏訪先輩なら、八雲の事情や情報は可能な限り手に入れたがるはずなんだが、自分からそれを断つとは思えない。

「……まあ、そこは考えてもラチがあかないな。諏訪先輩やマシュマロの手が借りられないなら、俺たちは俺たちだけで動くしかないってことだ」

 結局はそこに行き着くしかない。

 八雲は、諏訪先輩たち中部支部も、藤宮サイドにも無い切り札。

 俺たちが取り返した八雲というカードを扱うには、俺たちは支部とは違った独自の動きで藤宮に挑まなければならない。

 支部の霊官に頼らないってことは、下手をすればトシやネコメとも別行動しなければならないかもしれない。

 その場合は、俺と八雲の二人だけになる。

 どう考えても無茶だが、それでも八雲を拘束されるよりはマシだ。

「……動くつもりですか?」

 険しい顔で問うネコメに、俺は「勿論だ」と頷く。

「本気ですか⁉ この四人で動くなら、今戦えるのは八雲ちゃんだけなんですよ⁉」

「それは……」

 それは、確かにそうだ。

 トシは戦えない異能だし、俺はリルの不調の原因が分からず異能が使えない。オマケにネコメは、昨夜の戦いで負傷したアキレス腱が完治していない。

 鬼、フードの女、藤宮をいっぺんに相手にするには、八雲一人ではどう考えても不可能だ。

「それに、鬼は昨日の個体を含めて、あと最大で四体までいると考えられています」

「四体? なんだそのえらく具体的な数字……」

 四体、先月の事件で藤宮が使役していた鬼も、確か合計で四体だった。

 昨晩マシュマロが倒した鬼を含めると、全部で九体。

 何かしらの確証がなければ、ここまで具体的な数字は出ないだろう。

「……大地、よく聞いてくれ」

 首を捻る俺に、トシが神妙な面持ちで切り出した。

「ん?」

「実は、鬼っつうのは……」



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