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異能専科の猫妖精(ケット・シー)  作者: 風見真中
行楽編
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行楽編番外 四日目

「昨夜、襲われたのは、やくもん、でした」

 四日目の朝。マシュマロの言葉を聞き、八雲は深い溜め息を吐きながら、自分の前に置いたカードを表にする。そのカードは、

「やくもんは、少女、でした」

「っ⁉︎」

 最悪だ。

 八雲はやはり村人にとって重要な役職持ち、それも村人の切り札になるはずの少女だった。

 そんな八雲からなんの情報も得られないまま、むざむざと退場させてしまった。

 発言できない八雲は、俺たちに手を合わせて謝罪を示す。八雲が悪いわけじゃないのに。

「……見られたってことね」

「恐らく、そうでしょうね」

「…………」

 見られた。つまり、八雲の覗き見が人狼にバレた。

 昨日の俺たちの会話から村人陣営の焦りを感じ取り、八雲は人狼たちを見過ぎたってことか。

「魔女はこうなることを危惧して、薬を使わなかったのかしら?」

「そりゃ魔女にしか分かんねえだろうよ。それよか、もう昨日の案で決めようぜ。誰が怪しいかをよ」

 動向を思案する諏訪先輩と、急いで場を回そうとする鎌倉。俺の印象では、鎌倉の方が怪しく見える。

 同じように鎌倉を怪しんだのか、里立が珍しく口を開く。

「光生君、何か焦ってない? 早く決めたい理由でも……」

「やめろよ。相談なんて所詮水掛け論だって分かったろ。誰に投票するか多数決で決めるのが、一番平等だ」

 多数決が平等とは思えないが、水掛け論になるのは確かだ。

「俺はやっぱり大神が信用できねえ。それに、諏訪先輩烏丸先輩もだ。三人とも喋り過ぎだぜ」

「三人もいるじゃねえか……」

「今は別にいいだろ、三人でも。とりあえず俺はこの中の二人が人狼だと思ってんだよ」

 思った以上にガバガバの多数決にするつもりだな、鎌倉のやつ。

 全員が思い思いに、とりあえず怪しんだ相手の名前を片っ端から挙げる。一人につき何人までと決めることもしなければ、『疑われたから疑う』という泥沼な流れにもなりかねない。

 結託して数だけを武器に戦う村人が、全く結託できないでいる。

 三日目と四日目でこの流れを作ったのは鎌倉だし、諏訪先輩が最初に怪しんでいる者を口にした。しかし、二人は結託しているようには思えない。どちらかと言えば、鎌倉が上手いこと諏訪先輩の発言の隅を突いている印象だ。

「俺は、喋ってない三人。それと、鎌倉が怪しい」

「お前四人も挙げてんじゃねえか」

「仕方ねえだろ。まだ全然分かんねえんだから」

 正直、鎌倉はかなり疑わしい。さっきはバカと同じ陣営で焦ったが、考えてみればもともとコイツはヤンキー。人の裏をかいたり謀ったりするのは慣れたものだろう。

「私は、やはり喋ってない三人だな。それと、失礼ながらお嬢様も」

「私?」

「敵の可能性がある以上、お嬢様は早いうちにご退場いただきたいというのが本音です」

「言ってくれるわね」

 烏丸先輩の言い分にも一理ある。万が一諏訪先輩が敵なら、その狡猾さで残りの村人など全滅させられそうだ。なにしろ人を謀ることにかけては人間離れしてるからな。普段から人狼みたいな人だし。

「大地、アンタ今失礼なこと考えたでしょ?」

「いいえ、全然」

 この洞察力でなんで人狼を見抜けないのだろう。やっぱりこの人が人狼なのかな、なんて思ってしまう。

 その後も各々が怪しむ相手を挙げるが、やはり喋っていない三人に票が集中する。

「ちょっと待ってよ! 喋ってないだけで人狼扱いされちゃたまんないよ!」

「そうだよ! お兄ちゃん、ほんとに私たちを疑ってるの?」

「…………ああ。疑ってる」

 このまま長引いても厄介だ。

 俺もそろそろこの疑り合いに疲れてきたところだし、率先して退場するのも悪くない。

 残されたメンバーのために、その前に人狼一人は落としておきたいところだがな。

 お互いがギスギスしだしたところで時間切れだ。怪しまれているのは喋っていない三人だが、次点は俺。

「投票に、移ります。せーの」

 得票数最多は、鎌倉、里立、石崎、小月、諏訪先輩に指さされて五票を獲得した俺。

「お、お嬢様、なぜ……?」

 烏丸先輩は意外そうに目を剥いている。俺としては、諏訪先輩に俺の意図が伝わっていたことの方が驚いたな。流石の洞察力だ。

「では、ワンちゃん、カード、公開」

「はいよ」

 ヘイトを集めて票を獲得するのは俺の狙いの一つ。

 ニヤリ、と笑いながらカードを表にする。俺の予想が正しければ、この一手はかなり効くはずだ。

「……狩人⁉︎」

 俺のカードは、狩人。

 狩人は退場するとき、一人を道連れにできる。

 俺が道連れにするのは、

「鎌倉、お前を道連れにする」

「っ⁉︎」

「えぇっ⁉︎」

 顔を顰める鎌倉。そして、里立。

 どうやら、当たりだったようだ。

 そして、進行役のマシュマロが高らかに宣言する。

「これで、人狼が、全滅、したので、村人の、勝ちです」

「はあ⁉︎」

 その場の半数くらいは何が起きたのか分からず驚愕の声を上げた。

 落ち着いていたのは人狼の三人と諏訪先輩、少女の八雲。そして、キューピッドの目黒だけだった。

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