旧友編 プロローグ
今回より第二章、旧友編に入ります。
第一章より文字数を大幅に減らし、更新頻度を上げる予定でいます。
このスポーツには大きな欠陥がある。そんなことは始めた頃から分かっていた。
チーム同士でボールを奪い合い、相手チームのゴールにボールを入れる。ただそれだけの単純なゲームなのに、何を思ったのかこのゲームの製作者は、そこに『高さ』の要素を入れてしまった。
約三メートルの位置に設置されたカゴを目掛け、ボールをシュートする。
バスケットボールという、高さがモノを言うスポーツ。
ああ、このスポーツは欠陥がある。
高さという圧倒的な要素、身長という天賦の才がなければ成り立たない欠陥スポーツ。
世界的に見て平均身長が高くない日本人では、世界で活躍するのが難しい。そんなことは分かっている。
そのスポーツに、圧倒的に魅せられた。
気付けば虜になっていた。
(コイツ……早っ‼)
鋭い目でこちらを睨む少し年上の少年は、相手チームの誰よりも早い。
しかし、それでも俺にはその動きが手に取るように分かった。
(右……いや!)
少年の意識が向かって左側に向いた瞬間、後方から別の少年が迫っていることに気付いた。
(左‼)
右後方から迫る少年、それと目の前の少年を同時に躱し、抜ける。
目の前にはさらに二人の少年がいるが、俺はコートの端にいるであろう先輩に向け、大きくボールを放る。
「斎藤さん!」
ボールを受け取った斎藤さんにコート中の意識が向く中、俺は目の前の二人を抜けてゴール下に辿り着く。
「トシッ‼」
ゴール下に辿り着いた俺に、チームメイトの斎藤さんからパスが回る。
ボールを受け取った瞬間、両膝を深く折ってバネを溜める。
そして、跳躍。
高く、高く、ゴールを目掛け、跳ぶ。
感謝する。恵まれたこの体格に。
感謝する。自分に才能があったことに。
高く跳び、両手で持ったボールを、リングに叩きつける。
ダンクシュート。
スコアボードの数字が逆転を示した瞬間、コートに試合終了を告げるブザーが鳴り響いた。
バスケットボール地区選決勝。俺の所属する県立東高校は、創立以来初の県大会出場を決めた。




