第97話
7人の冒険者たちが落ち葉を踏み、シャリ、シャク、シャク、と音を立てながら森の中を進んで行く。
「オークだ、左の方向、向こうの木の陰にちらっと見えたぞ」
冒険者の1人が声を出して報告する。
ローレンもその声を聞いて報告通りの方向を見るが姿は見えない。立ち止まり数秒間索敵していると、木の陰からオークが出てくるのが見えた。
「ここからは2つに別れて行動しよう、7人いると戦闘に支障が出る」
リンジーが提案する。
「わかった、じゃあ俺たちとそっちでいいよな?」
冒険者の男はそっちと言い、ジャック、リンジー、ローレンを指した。
「俺はそれでいいけど、どう思う?」
「4人もいれば大丈夫だろ、その分かれ方でいいと思うぞ」
「構わん」
「じゃあ、そういうことで。俺たちは先に行ってるぜ」
冒険者の男達はオークの討伐報酬をより多く得るために、先を急いで行ってしまった。
「こっちも移動を開始しよう。ローレンは後方に、俺とリンジーが前衛だ」
「「了解」」
3人は森の中を奥へと進み始める。もう1つのグループと被らないようにやや右へと迂回しつつ索敵を始める。
「右前方、オークだ。ジャック」
「わかってるよ」
リンジーはオークを見つけると走り出し正面から槍を突き出す。
対してジャックは側面へと回り込む。
リンジーに気が付いたオークは持っている棍棒で槍を防ごうとするが、たいした技術も持ち合わせていないオークが木の切れ端のような棍棒で、ベテラン冒険者の槍を防ぐことは不可能だった。
リンジーの突き出した槍は、オークの棍棒を避けて下腹部へと突き刺ささる。
オークは腹の痛みを我慢し、自分の腹に槍を突き立てているリンジーへと棍棒を振るう。
が、側面へと回り込んでいたジャックが、走る勢いをそのままにオークの腕へと斬り掛かり、人間の3倍ほどの太さの腕を斬り落とす。
棍棒と共に落ちた腕を見たオークは、大きな炸裂音を聞くとともに意識を永遠に喪失した。
「ふぅ。共同討伐1で」
「わざわざ数えるのか、ジャック。がめつい奴だな」
「わーったよ、討伐報酬も山分けでいいよ」
ジャックはオークの右耳を剥ぎ取り、マッチを擦って死体に火を着けながらローレンに話しかける。
「ところで、ローレン。武器を変えたのか?」
「あぁ、うん。今まで散弾を撃つショットガンだったんだけど、今日は長射程・高精度のライフルも持ってきてるんだ」
「2つ持っていて重くないのか?」
「それなりに重いけど、前衛の2人がいれば大丈夫。もし近くまで敵が来たらショットガンで戦うから」
「そうか。まあ後衛の火力は高ければ高いほどいいもんだしな」
死体が灰に還っていくのを確認した3人は森を進み始める。
秋の森の中には、キノコや木の実などが豊富で、ローレンは採取したい気持ちに駆られる。無論、依頼を受けている最中に採取し始めるようなことはしなかったが。
「まただ。次は2匹、前方」
「ローレンが狙撃してくれるか?」
「わかった」
ローレンはライフルを構えて屈み、狙いを付ける。その間にジャックとリンジーは森の中へと散開する。
――――パァンッ―――
森の中をつんざく銃声を皮切りに戦闘が開始される。
ローレンが放った銃弾は1匹のオークの肩に命中。
銃声に気が付いたオークと撃たれたオークは突然の出来事に驚きつつ、辺りを見回す。数秒後にローレンを見つけると怒りの表情を向けて、ローレンへと走りだす。
ローレンは次弾を装填し、走り寄ってくる手負いのオークへと撃ち込む。銃弾はオークの胸の中央に命中し、腹を揺らしながら走っていたオークは勢いよく倒れこむ。
もう1匹のオークはローレンまで20メートルほどまで近付くが、ローレンのことで頭がいっぱいのオークは左右から急速接近してくるジャックとリンジーに気が付かなかった。
リンジーの槍はオークの横腹を突き、逆側の腹までを穿つ。そのことにオークが気が付いた瞬間、逆側面からジャックの剣が振り下ろされ、頭を叩き潰される。
「これで3匹目だな。この短い期間内での遭遇となると、巣があるのは確実だろうな」
リンジーがオークの身体から槍を引き抜きながら考えを口にする。
「問題は、巣の規模だな」
「あぁ」
「そっちのオークが生きてるよ」
ローレンは2人の方へと合流しながら、警告する。ローレンが撃ったオークは全身がボロボロで腕や足が曲がってはいけない方向へと曲がっており、胸から大量の血液を流しているが、生命活動は停止していないようだった。
「あれだけ盛大に転んだくせに生きてるのか」
ジャックはオークの生命力に驚きつつも、オークへと剣を突き立てる。
「ブモォフ」
と鳴き声を上げて、オークは絶命した。
3人は2匹のオークの死体から右耳を剥ぎ取り、死体を集めて火を着けた。
「やっぱり、モンスターがすぐに灰に還るってのは不思議だな...」
「あー?そうか?俺たちからしたら当たり前のことだから、考えたこともなかったな」
「あぁ、俺も昔は不思議に思っていたが、今はそういうもんなんだな、くらいにしか思っていない」
「あはは」
ローレンは2人の言葉を聞いて苦笑し、灰へと還っていくオークを見ていた。




