第96話
パスタを作った翌日の早朝、ローレンは今日も冒険者ギルドの中にいた。
「おはようジーン」
「おはようございます、ふぅぁ~ねむい」
「昨日も今日も早出なんだね...」
「そうなんですよ~人使い荒いんですよ~このギルド~」
「ところで、昨日のオークの件はどうなってる?」
ローレンは先日受けた依頼で高頻度でオークと遭遇していた。通常は1匹でいることが多いオークに短い期間で連続で遭遇することは滅多にはない。
つまり、住処がある、もしくは上位種などが引き連れている可能性を示唆しているのだ。
「はい、上司に相談したところ、今日の昼前に冒険者を数名集めての探索を行うとのことです。Fランク以上の方のみを集めるそうですので、参加しますか?」
「あぁ、どこで遭遇したのか詳しく知っているから俺がいたほうがいいかもしれないな。昼前に出発するのか?」
「はい、朝の2回目の鐘が鳴ったら出発するので、それまでにギルドの方へお願いします」
「わかった、もしかしたら大量のオークに遭遇する可能性もあるだろうから、しっかりと準備をしてくるよ」
ローレンはギルドを出て自宅へ向かった。
今回はそれなりの人数を集めての探索を行うと聞いたため、ライフルとショットガンの両方を持っていくことにしたのだ。もちろん機動力の面では不便なのだが、味方が多ければ前衛を任せることができるため機動力よりも火力を重視するわけだ。
ライフルとショットガンを両の肩に掛け、ライフル弾薬用のポーチとショットガン弾薬用のポーチを腰に、さらに鞄にはそれぞれの弾薬、魔法薬、包帯などを詰める。
以前ダッソーに貰ったダガーも近接用に持っていく。腰裏のベルトに鞘を固定し、いつでも抜けるようにセットする。
こうして、今までにないほど重装備になったローレンはもう1度ギルドへと向かった。
ギルドには数人のベテラン冒険者たちが待機しており、ジャックとリンジーの姿もあった。
「ジャックさん、リンジーさん、久しぶり」
「おう、ローレンか。久しぶりだな」
「...久しぶり」
「2人ともオークの件で?」
「「ああ」」
「じゃあよろしく」
「お前も行くのか...おそらくだが、オークの巣があるのは確定だ。先日ローレン以外の他のパーティーも連続でオークに遭遇していたらしい」
「そうだったんですか」
「ローレンの実力なら大丈夫だとは思うが気を抜くなよ、命の危険を感じたらすぐに逃げるんだぞ、勇敢と蛮勇は別物だからな」
「わかった」
ギルドに集まっている冒険者は総勢で7人。ローレン、ジャック、リンジーの他に、4人が待機している。
その中に収穫期の護衛を共にした剣士風の男がいた。ローレンに対して嫌なものを見るような顔をしている。
ジャックとリンジーの話を聞くところによると、剣士風の男はFランクだそうだ。威張っている割には小物だったらしい。見た目はそこそこ強そうなのだが...
ローレンはギルドの中で待機していると、鐘が鳴った。
「オークの探索を受ける冒険者たちは集まってくれ」
リカルドがギルドの奥から出てくると、大声で冒険者たちを呼び集めた。
「7人か...まあこれくらいだろうな...では、南の森に向かってくれ。報酬は成果次第だが、オークの討伐部位は通常価格の3倍で買い取る。巣があるのかはわからないが、とにかく数を減らすのが目的だ。当たり前だが、死人には報酬は出せない。全員が帰還することを願う」
冒険者たちはギルドカードを提示し、ランクを確認し依頼を受けたことを確認する。
それが終わると、冒険者たち7人は南の森へと向かい始めた。
「ローレン、オークと遭遇したのはどこらへんかわかるか?」
「森の中腹当たりだった、最初は薬草の群生地、そこから戻る途中に2匹と」
「そうか...森の中にオークが散開している可能性もあるな」
「そこの坊主がオークと戦ったって?よく無事に戻れたな」
「あ、あぁ。1人だったら危なかったかもしれない」
「へっ、だろうよ。俺だって1人でオークなんか相手するなんて無謀なことはしねーよ」
ジャックとリンジーと話しているローレンに突っかかるように割り入ってきた荒っぽい冒険者が、ローレンを舐めたような目つきで値踏みする。背中に持っている2つの棒を見て、棒使いか?などと思っている男は放っておいて、ローレン達は話を続ける。
「森の中を直進して進んで行くか、森の外側から徐々に探索していくか」
「森はそこそこ広い。少々無理しても直進して巣を見つけるのを優先するほうがいいと思う」
「確かにそうだが、囲まれるリスクも増えるんじゃないか?」
「オークが隠れてコソコソ包囲してくるような性格じゃないだろうし、ローレンの話からすると、オーク達はそこまで固まって動いている様子もない。とっとと巣を見つけるのが先決じゃないか?」
「オークの数が多ければ1度引いて立て直すこともできるしな」
「じゃあ森の奥まで一気に進むってことでいいな?お前らもそれでいいか?」
話に参加していない他の冒険者たちにも確認を取る。彼らは頭を使うのが苦手なタイプの冒険者らしく、ランクの高いジャックとリンジーが言うならそれでいいと考えることを放棄していた。
7人の冒険者たちはオークの巣くう森へと入って行った。




