第92話
ローレン、セシリア、ダンの3人はオーク討伐の依頼を受け、クラムの町から南へ行った場所にある森へと向かった。セシリアはローレンと2人で討伐の依頼を受けるつもりだったのだが、1人増えたところでそこまで報酬が大きく減ることはないだろうと気にしないことにしたようだ。
「ところで、オークって詳しくは知らないんだけど...」
「あぁ、まあダンは今日が初めてだからな」
「オーク。亜人型のランクFモンスター。体長2メートル前後である程度の知性を持ってる、肉食で極めて凶暴。時には村や町を襲うこともある厄介な奴よ」
「セシリアさん詳しいんですね...」
「セシリアでいいわよ。ところで、ダンは斧を使うの?」
ダンが持っている斧は片手斧で、短いリーチながらも高い殺傷能力を有している。そのうえ、剣や槍よりも近接戦闘にすぐれ取り回しがいいため、洞窟内などでの戦闘も比較的容易にできる。短所もあるが、モンスターに対する戦闘では長所を生かせるため、冒険者の中でも一定の人気を持っている武器だ。
「ああ、剣や槍よりも簡単で破壊力が大きいからね」
「片手斧なら盾も使えばいいんじゃないか?」
「あー、そうだね、お金が貯まったら買ってみるよ」
3人は話しながらも、オークが出現したという森の中へと入って行く。
森の中はうっそうとしており、人間の生活範囲から外れている場所のようだ。それでも近くには小さな村もいくつかあるため、ギルドにオークの討伐依頼が出されたというわけだ。
しばらく森の中を探索していると、薬草が群生している場所に出る。そこには2種類ほどの薬草が生えていた。
3人はついでに薬草も採取しようかと思い近付いていくが、何かの気配を感じ木陰に隠れる。
気配というよりはわずかに聞こえていた足音だったのだが、それに気が付いたのはローレンとセシリアだけ。森の中を普段は歩かないダンは気が付かなかったが、2人が真剣な顔つきで警戒しているのを見て気を引き締める。
やがて、足音が近付きオークの姿が見える。体長は2.3メートルほどで平均値だ。
「狙撃する。もしも外したら援護してくれ」
「わかったわ」
「狙撃...?」
ローレンは小声で2人に伝えると、倒木の陰から身を乗り出し、ライフルを構える。
オークは薬草をむしり取って食べているようで、まったくこちらには気が付いていない様子だ。
(オークって肉食のくせに薬草も食うのかよ。実は雑食だった?)
距離は30メートルほどで、大きなオークの頭に狙いを付け、息をすぅと吸い、スッと吐き、そのまま止めて引き金を引く。
森の中に銃声が響き、森の中の鳥たちが一斉に羽ばたく。
薬草をむしり取るためにかがんでいたオークはその態勢のまま頭から倒れる。その姿は酷く滑稽だった。
ローレンはオークの生死を確認するため、ライフルから空薬莢を排出しながら立ち上がる。
「やったわね、ていうか武器が変わってるわね...?」
「あぁ、より遠くの敵を撃つために作ったんだ」
「へぇ~」
ローレンとセシリアは倒れているオークの側へと近付き、その死体を蹴飛ばしてみる。頭を右側から弾丸に貫かれているオークはピクリとも動くことはなく、確実に死んでいるのを確認する。
「流石にオークでも脳みそをぶち抜かれたら即死するか」
「えぇ...普通はオークの頭に矢を貫通させるのは難しいから、剣とか斧で頭を潰すんだけどね...」
「もしくは魔法で焼き切るか?」
「そうね、ローレンが外していたら魔法で攻撃してたね」
「あ、あのさぁ...これで終わり?」
「あぁ、ダン。今回の依頼の内容はオークの討伐だからな」
「な、何もしてなかった...」
「うーん、まあ1発で決められなかったらダンにも戦ってもらったんだけどね...」
「ローレンと一緒に依頼を受ければ何もしないでも依頼を達成できるよ!」
「うん、セシリアは欲望を丸出しにするのはやめようね」
何はともあれ、ローレンはオークの討伐部位である右耳を切り取り、死体を焼く。
オークの死体はその脂肪たっぷりな身体のおかげか、勢いよく燃えあがり、驚きの速度で灰へと還った。
「前から気になってたんだけど、モンスターって燃えて灰になる速さがおかしいよな?」
「そうね。一部では魔力が空気中に還元されるからだとかなんとか言われているけど、まだ解明されていないの」
(魔力を還元している?そういえば、冒険者をまだ1年も続けてないのに筋力とか体力とかの付き方がおかしいんだよな。その理由が還元された魔力?有り得ない話ではないかもな)
「それより、早く町に戻りましょ?今から戻れば昼頃にはクラムまで戻れるでしょ?」
「あぁ、そうだな。ダンもいいか?薬草の採取はそこまで稼げないし」
「う、うん。わかった」
ローレンは薬草の群生地を物欲しそうに見ているダンに言い、森の外へと向かって歩き始めた。




