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ガンナー異世界冒険記  作者: Mobyus
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第84話

 収穫祭当日。町の中央の広場には巨大な鍋が設置され、水がぐつぐつと煮立っている。

 朝から住民たちが広場へとやって来て、思い思いの食材を投入していく。警備兵と騎士たちが入れる食材を軽く確認して、その場で洗ってから鍋に入れていく。

 ある者は大量の芋、ある者はミルク、ある者はチーズ、ある者はニンジン、ある者は肉、ともかく食材ならば全部ぶち込んでいくスタイルだった。

 昼頃には、ぐつぐつと煮立たっている鍋に大量の食材が投入されて完成する。


 まずは町長とガーランド伯爵が鍋の中の雑多な煮込みを食べる。


「美味い...様々な食材が入っているおかげで、味に深みがある。大量に入れられた芋が溶けてスープにとろみが出ていて濃厚だ」

「えぇ、そうですな!今年はとてもおいしい」


 伯爵と町長が食べ始めると、住民たちにも煮込みが配られる。

 毎年の恒例行事のため、特に混乱もなく収穫祭は進行していく。


「さて、お腹が膨れたところで...」


 町長が合図すると、何人かの踊り子が広場へと入って来る。クラム周辺でよく踊られているダンスを披露し始める。町の若い娘やギリギリの若妻が伝統的な衣装を着て踊る姿は収穫祭の風物詩だ。

 町の若い男たちはそれを見てほれぼれとしている。一部の妻帯者たちが肘でどつかれたりしているのも見慣れた光景だった。




 やがて日が沈む頃には、町の教会の前へと町の住民たちや伯爵が集まる。

 教会は水神教の物で、豊作の感謝と、翌年の豊作を祈るためにやって来ていた。


 因みに、連合王国は宗教の自由を認めている。そもそも主流である水神教が他宗教に対して非常に寛容であるという非常に珍しい宗教であるため、国教を定める必要がなかった。

 他にも聖火教や星光教などのがあるが、こちらも水神教には不干渉を貫いているため宗教による差別などは起こっていない。


「水の女神よ、水神の母よ、我らの豊作を守っていただき...」


 司祭が教会の入り口で祈りを捧げている。住民たちも同じように手を合わせて膝をつき祈りを捧げている。

 ローレンはぶっちゃけて言えば無宗教なのだが、さすがは前世日本人というだけあって、その場に合わせて都合のいい解釈をして、他の住民たちと同じように祈りを捧げる。

 日本人のほとんどは、クリスマスというキリスト教の祝い事をしたのち、大晦日には神社に行き、お寺に行き、と3つの異なる宗教に介入している不思議な人々であった。


「また来る年も、どうか祈りを聞き届け、豊作を...」


 司祭はその後数分間祈り続け、収穫祭最後のイベントは終わった。



 町長宅へと戻ったガーランド伯爵一行は、夕食のためにすぐに町長宅を出て近くの飲食店へと入って行った。


「ローレン...もしかしてだが、町長の奥方は...」

「...」


 ガーランド伯爵は既に勘づいていたらしく、ローレンは何も答えずに、にこりと笑って見せた。

 ローレンはなにも聞いていなかったようにさらりと店へと入って行く。


「ここって、ローレンとルフィナさんがデートしてた店だよね」


 ライナーが突然ローレンに話しかける。ローレンはビクッとしてすぐに振り返る。


「でぇ、デ、デートじゃないから!ただ案内しただけ」

「ふっ、ライナー、私にも言うようになったじゃないか」

「え?あ、いや、ルフィナさん?!聞いてたんですか!?アハ、アハハハッハハ...す、すみませんした!」


 ライナーはルフィナが聞いているとは思いもしてなかったようで、慌てて謝罪しているが、ルフィナの顔は満面の笑みであった。ちなみに目は全く笑っていない。


 なにはともあれ、入った店は先日ローレンとルフィナがパフェを食べた店だった。

 町長たちとガーランド伯爵、その騎士、ローレンと合わせて10名ほどがその店へと入って行く。


「いらっしゃいませ。お越しいただきありがとうございます」


 店の店長だと思われる男性が入ってきた一行に深々と頭を下げる。


「本日は当店貸し切りとなっておりますので、ごゆっくりお楽しみくださいましぇ」


 店長は壮大に噛んでいるが、言いなおすこともなく押し通した。にっこり満面の笑みだが、目には焦りの色が窺える。

 店長はそのまま大きなテーブルへと一行を案内する。ローレンは以前に何度か来ていたため、店の中のテーブルなどの配置が変わっていることに気が付いた。わざわざテーブルをどけて大きなものを持ってきた様子だ。


「本日は選りすぐりの素材を御用意しました。普段よりメニューは少ないですが、格別のお料理を提供いたします」


 テーブルについた全員に、店長と従業員がメニューを配る。以前のメニューとは違い品数が少ないのもそうだが、以前はなかったメニューがあった。


「ふむ、そうだな、では私は牛肉のステーキ、ポトフ、焼きチーズを貰おう。食後には何かおススメの甘いものと紅茶を」

「かしこまりました」


 まずは店長がガーランド伯爵の注文を取り、従業員たちが1人1人の注文を取って行く。


「じゃあ、テリーヌとガチョウの肝のソテーを。食後にはミルフィーユと紅茶を」


 ローレンも遠慮なく注文をする。護衛の依頼のついでに町長の奢りで美味しいものが食べられるのだから、なんと運がいいのだろう。

 ちなみに、料理にある程度詳し方ならわかるかと思うが、このお店はフランス料理に近いものを出すお店だ。パフェも語源をフランス語で完璧を意味する『パルフェ』から来ていると言われている。

 ガチョウの肝は皆さんご存知のフォアグラである。これも一部地域では紀元前から、欧州では5世紀ごろから食べられていたという記述もあるようだ。

 そして、なぜこのような高級な料理がクラムでも食べられるのかというと、酪農と関係がある。

 まずは甘いお菓子などには乳製品が欠かせないということがある。クリームを作るのにも、焼き菓子に使うバターを作るのにも、チーズなどにも乳製品が必須なのだ。それらが安く手に入るクラムでは、それらを使ったお菓子もそれなりに食べることができるのだ。(砂糖はそこそこのお値段だが)

 そして、精肉も手に入りやすいことも一つの要因であった。


「では、少々お待ちください」


 店長は一礼すると、厨房の方へと早足で向って行った。ローレンはどんな美味しい料理が出てくるのか、期待を膨らませた。


「さて、収穫祭も終わったわけだが、まだ大事なことが残っているな」


 ガーランド伯爵は全員に聞こえるように声を上げた。ローレンはまだ何かあったかな?と表情にも見て取れるほど不思議そうな顔をする。


「新しく発見されたダンジョンがあるそうだな?」


 町の重役たちがほんの少しだけ、ピクっと反応を示す。

 ローレンは彼らがなぜ反応したのかがよくわからなかったが、領主がダンジョンに興味を示すことは珍しくもないだろうし、少しだけ納得した表情になる。


「ローレン、ダンジョンについて知っていることは?」

(え?俺?なんでいきなり...?)

「え、えっと、私はそのダンジョンの調査に協力したしましたので、それなりに知っていますが。何から話せばいいでしょうか...」

「ふむ、では...」


 ガーランド伯爵はテーブルに座っている町の重役たちの顔を見渡しながら、自らの顎を擦って見せる。


「ダンジョンで産出された鉱石について話してくれるか?」

「えぇっと、グリシア鉱石のことですか?」

「そうだ。ローレンは特殊金属の売買には領主の許可が必要で、僅かにだが税が掛かることは知っているか?」

「え?あぁ、税については知りませんでした」

「ふむ、その税なのだが...合わないのだ、商人たちが購入した総量とクラムから示された税の額がね」


 特殊金属、つまりミスリルやグリシアなどの金属類には税金が掛けられている。これは金などにも掛けられており、商人などが売却した際に発生する。

 ガーランド伯爵はクラムの町が商人に売却したグリシア鋼の総量をなんらかの方法で調査し、クラムから報告された税額に差異が生じているのを発見したのだろう。つまりは誰かが何らかの形で脱税したということだろう。


「どういうことだろうか?」



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