表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ガンナー異世界冒険記  作者: Mobyus
8/379

第7話

 ローレン、レナ、ジャック、リンジー、シャリアート、の5人はクラムから伸びる街道を急ぎ足で進んでいた。

 謎のゴブリンの死体の回収。死体の回収だけであれば楽なのだが、夜の町の外は昼間に比べて1.5倍は危険だ、場所によっては数倍にも危険度は跳ね上がる。


「ローレン、レナ、俺とジャックが前衛として動くから援護は任せる、シャリアートは鞭を使った遊撃、足止めを徹底してくれ」


 4人は黙ってうなずき、言われた通りに隊列を組む。

 リンジーは槍を使うタイプの戦士ファイターだ、使っている槍は何らかのモンスターの骨を使って作られたもののようだ。

 ジャックは2つの剣を両手に持って戦うタイプの戦士だ、2つの剣は大きさが異なっている、左右に持った時のバランスを考えられて作られた一品ものだ。

 シャリアートは鞭を使う戦士という珍しいタイプだ。鞭は達人が使うと一瞬ではあるが音速を超える、その瞬間に鞭に打たれれば皮膚が裂け、弾け飛んでしまうだろう。

 レナは弓を主に使う弓術士アーチャーの中でも様々な技能を持ち合わせるレンジャーだ、使っている弓は木と鉄、骨などを使って作られている。

 ローレンはこの世界唯一のガンナーだ。持っている武器は現世では一般的なタイプのショットガンだ。


 冒険者のパーティーとしてはかなり理想的な編成と言える。辺境地域で活動する冒険者やダンジョンに挑む冒険者たちは4~6人のパーティーを組むのが定石だ。だが、比較的平和なクラムではパーティーを組むものが少なく、組んでいるとしても2~3人のパーティーだ。これはクエストの危険度が低い代わりに報酬が安いという理由がある。


 5人は隊列を崩すことなく進む、だがすぐに5人は異変に気が付く。夜のモンスターは活性化され凶暴であるはずなのに、全くと言っていいほどモンスターからの襲撃がないのだ。


「おかしいな。さっきからモンスターの気配がしない」

「普通なら既に数回は襲撃を受けててもいいはずだが...?」


 リンジーとジャックが警戒を強めている。だが、何も起きることなく目的地へと到着する。


「リンジーさん、ここです。ここの街道脇に謎のゴブリンの死体があるはずです」

「わかった、............ん?」


 リンジーとジャックが辺りを探してみるが、謎のゴブリンの死体は見つからない。


「ローレン、本当にここか?間違いないのか?」

「えぇ、ここで間違いないはずよ、私もここで謎のゴブリン死体を見たもの」


 レナが代わりに答える。ローレンは困惑した表情で辺りを見回している。


(確かに4匹のゴブリンを焼いた形跡はある...ん?いや、まさかな)

「アンデット化した...?」


 考えをまとめながら小声で呟くローレン、その呟きをリンジーとジャックは聞き逃さなかった。


「ローレン、今アンデット化したって言ったか?死体がアンデット化するには最低でも3日はかかるぞ」

「いや、ジャック待ってくれ。その死体は謎のゴブリンだったんだ...」

「!?まさか、アンデット化するまでの時間が短いタイプのモンスターだったのか!?」


 アンデット化するモンスターは、その亡骸に魔力を帯びることで活動を開始する。死んでいるのだが、魔力を糧として仮の生命活動を行うようになるのがアンデット化の正体だ。そう分かったのはつい最近の研究で、この解明には50年以上の歳月がかかったのだとか。

 そして亡骸に魔力を帯びるまでの時間は、通常は3日以上かかるのだが、特定のモンスターはその時間が極端に短かったりもするのだ。また、すでにアンデット化しているモンスターはその肉体を完全に破壊しない限り、短いスパンでよみがえることもわかっている。


「元々アンデットだった、もしくはアンデット化し易いモンスターだった。ということですね」


 今までほとんど黙ったままだったシャリアートが話をまとめる。

 そしてリンジーが対策を練る。


「これは...どうするか...一度ギルドまで戻って報告するべきか、それともその謎のゴブリンを捜索するかだが...」

「夜の街道付近を捜索するのは少し危険なんじゃない?さっきからモンスターが出てこないのも不気味だわ」


 リンジーの案に意見を述べるレナ。彼女の言うことはもっともで、夜にモンスターが襲ってこないという、ある意味での異常事態が起きていることも懸念事項だ。


「よし、一度ギルドに戻ってこの件を報告する。何か嫌な予感がするしな」

「リンジー、今は考えている暇はない。戻ると決めたからには急いだほうがいい。」


 そして彼ら5人は急いで街道を戻っていく。帰り道もモンスターからの襲撃はなかった。

 ギルドに戻ってきた5人は急いで報告に向かう。


「リンジー!遅かったな...?ゴブリンはどうした?」


 出迎えたのはリカルドだった。リカルドは5人のうち誰もゴブリンの死体を持っていないことに気が付くと訝し気な表情を浮かべる。


「死体はおそらくアンデット化したようで、現場にはいなかった。捜索は危険な可能性が高く、報告のために戻ってきた」

「アンデット化?まさか、まだ半日しかたって...」

「それに、一度もモンスターからの襲撃を受けなかった。これは明らかに異常事態だ」

「なんだって?夜のモンスターたちが襲ってこない?確かに妙だ」


 ギルドの受付付近で話している2人の話を聞きつつ、ローレンはギルド内を見渡す。

 冒険者たちは不思議そうな顔をして、リンジーとリカルドの話に聞き耳を立てている。すでに夜になり、冒険者たちはギルドや町の酒場などで酒を飲んでいてもおかしくない時間帯なのだが、彼らは謎のゴブリンの正体が気になったらしく、ギルドの酒場で酒を飲まずに待っていたのだ。


「この件は町長にも連絡しておく必要があるな。町の警備兵たちにも警戒してもらう必要があるな」

「あぁ、何か妙だ。警戒したほうがいいだろう」


 2人が話しているとギルドに警備兵が飛び込んでくる。その音にギルドにいる冒険者全員が気が付き、いっきに視線を集める。そして警備兵が叫ぶ。


「モンスターだ!モンスターの大群がクラムを襲撃している!!!」


 警備兵は荒い息を押し込めながらギルドにいる者全員に必ず聞こえるであろう音量で叫んだ。

 その内容があまりにも突飛なものだったため、数秒間、すべての人間の動きが止まる。


「な、なんだと?!戦えるものは全員戦闘準備をしてくれ!!今回襲撃してきたモンスターの討伐証明部位は3倍で買い取る!!素材類も2倍だ!なんとしても町の中に入れるな!!」


 リカルドは瞬時に叫ぶ。報酬が3倍。冒険者たちはそれを聞いてさっそくとばかりに準備を始める。

 誰も彼もが黙って自分の武器を取り出しては確認している。


「おい!相手の規模は?襲撃してきている場所は?!」

「...!町の南側です!正確な数は不明!現在警備兵が足止めしています!!」


 警備兵はリカルドの見事な統率を見て驚いていたため、我に返るのに若干遅れながらも大声で答える、この場の全員に聞こえるように。


「全員聞こえたな!?町の南側だ!」


 そう声を発したリカルドはいつもの優しそうな顔ではなく、威厳のある冒険者のような顔をしていた。

 そして冒険者たちはそれぞれの武器を持ってギルドから出ていく。


「お前ら5人もモンスターの迎撃に向かってくれ、俺は町長に報告しに行く」


 そう言ってリカルドもギルドから走って出て行った。


「これは、やっぱり何かあるな。町に襲撃をかけてくるなんてな」

「そんなことは今はどうでもいいわ!!私たちも迎撃に出るわよ!!」


 5人も他の冒険者に混ざってギルドから出ていく。だがローレンは携帯している弾薬の数がそこまで多くないことに気が付く。


「リンジーさん、僕はいったん家に帰って弾を調達してきます!」

「わかった、なるべく急いでくれ。レナ、矢は足りているか?」

「私は大丈夫よ、でも敵の量によるわね、足りなくても警備兵の蓄えている矢をもらえばいいし」

「じゃあ先に向かってください、すぐに追いつきます!」


 そう言って一行から離れ、自宅へと戻る。幸いにも家は町の中央付近で、南側へ向かう途中にあった。

 ローレンは家の玄関を開け、急いで自室に戻り弾薬を補充する。腰の弾帯に30発、バックパックに60発。これで今持っている弾薬すべてだった。弾帯に取っておいた空薬莢を全て出してから弾帯に弾を入れる必要があったために少しだけ時間を要したが。


「ロー、どうした?帰っていたのか?」


 レナートがローレンの部屋にやってくる。ドアを開けっぱなしだったのでガタガタと音がしていたらしい。

 ローレンは緊急事態なのを説明する。


「父さん!モンスターの襲撃だ!町の南側にモンスターの大群が来ているらしいんだ!」

「なに?!モンスターの襲撃?いったい...」

「リカルドさんが町長に報告に行ったから、父さんも町長のところへ行ったほうがいいかもしれない」


 そう言ってローレンは部屋を飛び出して家を出て行った。


「おい!ローレン!くそ、モンスターの襲撃だと...」






 ローレンが町の南側へ到着すると、そこはすでに戦場と化していた。

 町の南側には農地が広がっていて、かなり開けている。その畑の上はすでに踏み荒らされ、モンスターの死体でいっぱいだった。死体はほとんどがゴブリンで一部コボルトやローウルフが混じっている。


「こ、これは...」


 ローレンは一瞬だけ狼狽えるも、すぐに冒険者たちの援護に入る。

 ショットガンを使っている都合上、散弾を味方に当てないように慎重にならなければならない。

 ローレンは戦場となっている畑に駆け出して、ゴブリン3体を相手に苦戦している冒険者を援護する。

 その冒険者は剣をゴブリンに向けて振り下ろすが、他のゴブリンに邪魔されてなかなか攻撃を当てることができていない。ローレンは彼の右側から回り込んでいるゴブリンに向けて散弾を放つ。

 ドムッ、と鈍い発射音が、暗い夜の戦場に響く。

 撃たれたゴブリンは体を散弾によって引き裂かれながら吹き飛んでいく。それを見た冒険者は一瞬驚きを見せるが、すぐに我に戻り1体のゴブリンの頭部向けて剣を突き出す。そのゴブリンを援護するために回り込んでいたゴブリンをローレンが倒したため、援護をもらうことができなかったゴブリンはとっさにこん棒を盾にするが、あっけなくこん棒は砕かれ、頭部に剣を突き立てられ絶命する。

 そして3対1という優位的だった戦況を一瞬のうちにひっくり返された最後の1体は逃げ出す、だが剣を持った冒険者に瞬く間に追いつかれ首を刎ねられ動きを止める。


「ローレンだったか、助かった。感謝する」

「いえ、お気になさらず...次が来ます!」


 暗闇の中から現れたのは見覚えのあるモンスターだった。


「デッドボア?!」



町への襲撃を仕掛けるモンスターたちの目的とは?

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ